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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり2
326/368

W5.貴金属

「あっ。そうだったな。もともとはその話だったな。

ふむ。私が説明してしまっては、ゴリムノの仕事が無くなってしまうと思ったのだが。

実務は彼奴あやつにさせるのだから、まあ良いか。

今、造幣局で紙幣を大量に生産してもらっている最中だが、十分な量の紙幣が準備出来たら、現在流通している貨幣は紙幣に交換することになる。

そうすると、王宮には大量の貨幣が戻ってくることになるだろう? 」


「そうですね。どれほどの量か判りませんけど、凄い量でしょうね。」


「保管するにあたっては、貨幣のままという訳にはいかないので、鋳潰して貴金属の塊にするのだ。

ところが、確認してみたところ、同じ額面の金貨、銀貨、銅貨でも、鋳造した時期によって貴金属の純度が異なるものらしい。

純度が異なったものが塊になっているのでは管理するのが困難になる。

そこで、その貨幣に使われていた貴金属は、純金、純銀、純銅にしておきたいのだ。

純度の高い貴金属の塊として保管しておけば、紙幣と金の交換や、銀や銅を他の用途に使用する際に気にしなくて済む。

ここにあるコンビナートの工場でこれらの金属を精錬できると聞いているのだが可能だろうか?」


「そうですね。量に依りますけれど、少しずつだったら対応できるかもしれないですね。」


「そうか。それでは、工場を使わせてもらえないか?」


「えーと。私がコンビナートを管理している訳では無いので、私に頼まれても……。

それで、その精製する貨幣ってどのぐらいあって、どのぐらいの期間で精製するんですか?」


「アイルとニケのお陰で紙幣の印刷は順調なようだからな。3ヶ月後から貨幣と紙幣の交換を開始して、その後1年で交換を終了する予定だ。

貨幣の量は、ちょっと待ってくれ。」


そう言うと宰相のお爺様は、お付きの騎士さんに言い付けて部屋から何かを持ってきてもらう様に頼んでいた。


しかし、それは凄いね。本当に1年で交換なんて事が出来るのか?

銀行なんてものがあった前世でさえ、紙幣が変更になって1年以上経っても旧紙幣を見る事があったよ。

昭和の硬貨なんて普通に在ったな。極偶ごくたまにレアな硬貨を見つけたりして嬉しかった記憶がある。


「えーと。それも私達が紙幣作ってる訳じゃないので……。順調なのは、造幣局の人達のお陰ですよ。

それで、お義祖父様じいさま。1年で交換を終了するなんて出来るんですか?何時迄も昔の貨幣が流通したままになるんじゃないですか?」


それからお義祖父様じいさまは貨幣と紙幣の交換の手順を教えてくれた。


結構簡単な手順だった。


布告から1年間は貨幣と紙幣を額面どおりに交換するが、1年を過ぎたら貨幣は金属製品として扱い、その金属の価値で紙幣と交換する。

布告と同時に交換を開始して、それ以降は王国外との取引に旧貨幣を使用するのを禁止する。


ん?それだけ?

それで、どうして1年で交換が終わると考えているんだ?

あっ。これってババ抜きみたいなものか?

貨幣には混ぜ物の金属が含まれているから、1年を過ぎても旧貨幣を持っていたら価値が目減りしちゃうんだ。

ババ(旧貨幣)は手元に持ちたくないよね。

1年を待たずにババで取引をする人は居なくなっちゃうんだ。


「一つ目は分ったんですけど、二つ目は何故そんな事をするんですか?」


義祖父様じいさまの説明はこんな感じだった。

隣国のテーベ王国では武具の生産に大量の銅を使用している所為か銅の価格が上昇している。

現在国境では、金属製品の輸出は基本禁止している。それでも王国外に持ち出す場合には高額の関税を掛けているのだそうだ。

ただ、商人が大量の銅貨を持っている場合に取引に使うと言われれば取り上げる訳にも行かない。

そんな理由から大量の銅貨がテーベ王国に流出している。

それを止めたいのだそうだ。

王国外に持ち出せる通貨を紙幣に限ってしまえば、銅貨の持ち出しを止めることができる。


でも、布告と同時に使用禁止って、そんなに直ぐに伝わらないんじのゃないか?

鉄道を敷設したところには無線機があるけど、王都より西には無線機は無いよね。

事前に伝えて置くのか?


「布告したとしても直ぐには伝わらないんじゃないですか?」


「そこで、飛行船なのだよ。」


「へっ?」


何故、ここで飛行船が出てくるんだ?


「隣国との取引の際に使用する通貨を規制する方法を悩ましく思っていたのだ。

国境を接している領地は、王都からは西方にかなり離れた場所だ。

王都で他の国との取引に貨幣を通貨として使用するのを停止すると布告しても、実際にそれが伝わる時期にどうしてもズレが生まれる。

今が儲け時だと考える商人が出てきても奇しくない。

正式な布告が領地に伝わっていなければ、それを咎める事も出来ない。

そして、その領地に、布告を伝えるのと同時期に交換用の紙幣が届いてないとならない。

紙幣が無いのであれば銅貨を持ち出すと言い出しかねないのだ。

紙幣は事前に運び込むことも出来るかもしれないが、そうすると、どうしても布告の内容が漏れる可能性がある。

そうなると、大量の銅貨を隣国に持ち込む商人が多数出てくるだろう。

それをどうしようかと考えていたのだ。

しかし、あの小型の飛行船なら、西方の領地に1日ほどの時間で移動できる。

仮に商人が、今であれば咎められる事無く、隣国に銅貨を持ち込めると考えたとしても飛行船が正式な布告を各領地に伝達するよりも早く荷を移動させる事は出来ないだろう?」


「そうすると、あの小型の飛行船で、布告文書と紙幣を各領地に運び込むのですか?」


「そうだ。王都での布告と同時に各領地で対応してもらうためだな。

多分、布告の前日あたりから、国境を閉鎖する事にするだろう。そして、貨幣を紙幣に交換した商人だけを、順次国境から外に出す様にする。

国境の閉鎖については考えていたのだが、何日も閉鎖する訳には行かないので実行できると思ってなかった。

飛行船が使えれば、1日、2日の閉鎖だけで済むだろうと思う。

しかし、凄いものを作ってくれたな。

鉄道と併走してみてもらったのだが、鉄道の倍以上の速度で移動していたな。」


ああ、それで、お義祖父様じいさま夫婦は鉄道の方向へ飛行船を移動させてみたのか。

小型飛行船に乗る時には、こんな事を考えていたのか。


「宰相閣下、これで宜しいでしょうか?」


義祖父様じいさまが何かを言い付けていた騎士さんが戻ってきた。手にはノートを持っている。


「ああ、これだ。ありがとう。

何処に書いておいたかな。」


そう言いながらノートを捲っている。これは、国家機密ノートか?

何が書いてあるかは気になるけど……好奇心は猫も殺すっていうから聞かぬが花だな。


「あった。金貨がd3サンドキロ(≒5ton)、銀貨がd2クアトサンドキロ(≒4百ton)、銅貨がd5ミロキロ(≒14千トン)になるらしいな。

そもそもの流通量がかなり怪しいらしいのだが、それでも随分な量になる。これを精製してもらえるものだろうか?」


金や銀はともかく、銅は凄い量だな。


「どのぐらいの時間を掛けて良いかに依りますけど。」


「その後で、精製した貴金属の使い方として色々考えている事もあるので、あまり長い時間を掛けてという訳にはいかないのだ。1年ぐらいで処理できないだろうか?」


「それは、大量で一時的な作業ってことですよね?」


「そうだな。紙幣との交換に伴うことなので、大量だが交換が終了するまでの一時的な作業だな。」


うーん。通常の生産があるから、大量に捌こうと思ったら工場の増築が必要になるのか。作業する人も集めなきゃならない。でも、それって、一時的ならムダだよな……。


「それって、魔法でやっちゃっても良いんですよね?」


「方法は問わないので、魔法で純度を上げてもらっても良い。ただ、それは大変じゃないか?」


「いえ、一時的な作業のために、工場を増設したり、そこで働く人を一時的に雇用する為の準備をすることを考えたら、魔法で一編に済ませてしまった方が楽ですよ。

あれ?でも一編で済まないのかな?」


「そうだな。交換の期間は半年ほどを考えているのだが、その間大量の貨幣が集まってくることになる。やはり、一編に作業した方が良いという事か?」


「随分な量なのは確かですけど、それでも、大型船を何隻も建造するのに比べたら大した量ではないかな?

魔法を使えば直ぐに精製できますよ。

それを王都からマリムに運んでくるんですか?

それとも、私が王都に行って作業した方が良いんでしょうか?」


「そうか。それならまずは、保管する場所を決めよう。

貨幣を集めて保管しておいて、大半が溜ったところでニケの魔法で純度の高い金属の塊を作ってもらうのが良さそうだ。

それで、ここからはアウドに頼むことになるのだが、ノアール川に砦が在っただろう?それは今どうなっているのだ?」


「どうと言われても。今は使ってませんから放置ですね。

あのあたりは魔物が大量に発生していて危険ですので、騎士の駐留も停止していました。

舅殿から依頼されている金の鉱山の開設のために、川の上流にある砦は、整備を始めたところです。今はまだ雪深い状態なので、本格的に多数の人員が詰められるようにするのは、もう少し経ってからです。」


「あの場所には砦が3つあるのだよな?」


「そうです。川の下流の海に近い場所に一つ、それより少し上流で、先の侵攻戦で主戦場となった場所に一つ。上流の金の鉱脈に近い場所に一つです。」


「主戦場になった砦は一番大きいのではなかったか?

そこを何かに使う予定は無いという事で良いのか?」


「ええ、そもそも人が居ないところですからね。その砦に貨幣や貴金属を保管するですか?」


「王都の側に保管場所を作るとかなり厳重な警備をしなければならないだろう?

あの場所であれば、よほどの準備を整えなければ辿り着くこともできまい。

魔物が大量に発生しているのであれば、魔物対策だけしておけば、人が近寄ることもできまい。」


「あの砦なら塀も高く、周りに堀もありますから魔物も入り込んでは来ないでしょうから、保管場所として利用するのに問題は無いでしょう。

それに、コークスを供給できれば、暖房や照明の道具が有りますから、冬の間も人を駐留させて置くことができますね。

ただ、どうやって、その貨幣をその砦に運び込みますか?

周辺は魔物だらけですよ。」


「それも、飛行船が使えるのではないか?」


「あっ。そうですね。その手がありますか。

それなら魔物が周りに居ても人や物を送り込めますね。

すると、上流の砦に人員を送るのにも飛行船を使えば良いのか……。」


なんだか、飛行船を前提に色々が決まっていくな。

もう、何隻も飛行船を作ることが決まったみたいだ。

チタン足りるかな?

投稿を始めて、1年になりました。

これも、お読みいただいている方々のお陰です。

継続してお読みいただいている方もいらっしゃる様で有り難い事です。

今後ともお付き合いいただければ嬉しく思います。

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