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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり2
316/369

N7.マリム来訪

「えっ。お祖父さんズが来るの?」


「あらっ?お祖父さんずって何かしら?お祖父様達がいらっしゃるのよ。」


あっ。そうでした。頭の中で、お祖父様達をお祖父さんズと呼んでいたので、口から出てしまった。

公式な場で会う時って、二人はいつも一緒に居るからね。

お母さんに嗜められてしまった。


でも、何でこのタイミングでマリムに来るかな。

紙幣は、造幣局の人達が絶賛増産中だ。特に問題が有るという話は聞いていない。


元はと言えば、私が口走ったことに起因しているんだけど、先月は大変だった。

ようやくそれらから開放されたばかりだ。


「えーと。お祖父様達は、何をしに来られるのですか?」


無線で連絡を受けたのは私達の両親だ。私やアイルは来訪の目的を聞いていない。


「それは、ニケやアイルに会いに来るのよ。」


そんな事は無いだろ……と思うのだが……有るのか?

いや、二人とも王国の重要なポストに就いてるんだから、そんな理由でマリムまで来ないだろ?


大型船や鉄道が出来たからと言って、王都を離れてマリムを訪問したら、1週間は不在になる。

あの要職で、1週間も不在になって良いものなのだろうか……?

何か重要な用事が有る筈だよ。


「お母さん。それは幾ら何でも違うんじゃないの?」


「あら、ウチのお父さんはアイル達に会いに来るって言ってたわよ。」


義母おかあ様がお母さんの代りに応えてくれた。


「そう。ウチのお父さんは、ニケに会いに来るって言ってたわ。」


今は食事を終えたところだから、私とアイルの両親が側に居る。


「義父はニケに会いにくると行っていたな。」


お父さんまでそんな事を言っている。

お祖父さんズは、本当に私達に会いに来るだけなのか?


「約束していた人を連れてくる様な事も言っていたかな?」


義父おとう様が思い出した様に話す。

それが用事じゃないんだろうか……。


「誰を連れてくるんですか?」


「さあ。父上もアイルとニケに会いに来ると言っていただけで、ついでに人を連れていくと言っていただけだな。」


こりゃダメだ。人を連れてくるんだったら何か用事があると思うんだけど。また何か頼まれたりするんじゃないだろうか?

結局メンドウなので、お願いされた事は、一気に手っ取り早く済ませてしまうんだけど、味を占められていたりするか……?


連絡が来たのは今朝だったらしい。これから船に乗ってマリムに行く。孫に会いに行く。そんな感じだったんだそうだ。

孫に会いに行くだけだから、何もしなくて良いとも言われたそうだ。


ただ、何もしない訳にも行かない。

二人とも王国の重鎮中の重鎮だからな。

グルムおじさんが食事時に居なかったのは、晩餐会の準備の為らしい。


しかし、そんなんで良いのだろうか……。

人を連れて来るんだったら、事前に準備してたんだろ?

なぜ突然の連絡になるんだ?

こっちはようやく暇になったけど、宰相閣下は忙しいのかな?

じゃ、なんで、マリムに来るんだ……。


何だか分らない。考えるだけムダだ。


「コンビナートの打ち合わせを今回はマリムでやると言っていたな。

二人とも夫婦で揃って来るらしい。アイルとニケに会いに来ると言っていたから、父上達が居る間は、メーテスには行かないで相手をしてやってくれ。」


うーん。それは良いけど……。

どうせ、メーテスの授業では、私もアイルもオブザーバーだからね。


そんな話があった翌日に准教授達に、お祖父さん達が来るので、しばらくメーテスに来られなくなると伝えた。

大丈夫です任せてくださいと言われた。


大丈夫なのは微塵も疑っていないんだけど、何だかアレコレが多すぎる。

私のまったり研究生活は何処に行ってしまったんだ……。


船とは無線で連絡が取れる。無線機で船長にお祖父様達に同行している人の数を聞いたところ、d200人近いらしい。

乗船定員の半分以上はお祖父様達王宮関係者で占められている。

この船便は大人気らしいんだけど、良くこれだけの予約が取れたね。


えっ?王国権限で、無理矢理取ったって……。

お祖父様達は、航海の間、無線機のところには出てこなかった。

何を考えているんだろう……。


このうち、d80人は騎士じゃない人が居るのだそうだ。

やっぱり誰か連れて来ているみたいだ。


グルムおじさんは、人数を聞いて慌てて馬車を準備した。領主館で常備している馬車はd10台しか無いからね。


運航予定通りに、お祖父様達が乗っている定期運航船の「アトラス5」がマリム港に着いた。


王都の湾岸の整備が終ったので、今はアトラス1から6までの6隻が就航している。


グルムおじさんは、準備した馬車を引き連れて、アトラス5の到着時刻に船着場まで迎えに行った。


やってきた人達は、先に国務館に寄ってから領主館に来る。先触れがあったので、私達は領主館の入口で待っていた。


「おお。アイル、ニケ。久し振りだな。」


アイルのお祖父様の第一声はこれだった。


あれ?昨年末に会っているよね。それほど久し振りという感じでも無いと思うんだけど……。

先月はメーテスの開校やらなにやらで忙しくて、会いはしなかったけれど、無線で話をした。


それに、同行して来ていると聞いていた人達の姿が無い。

僅かな騎士さん達が居るだけだ。


「お義父さん。お久しぶりです。ようこそマリムにお越しくださいました。

部屋を用意してありますので旅の疲れを癒してください。」


義父おとう様がお祖父様達に歓迎を伝える。


「いや。それは後で良い。船の旅は快適であった。港からここまで馬車に乗って来たので、疲れている事も無い。

それより、アイルやニケと少し話をしたいのだ。良いかな?」


やっぱり、何かあるんだよな。きっと。

ん。単に会って話をしたいってだけだったりするか?

いや、絶対に何かある。


そんな事を考えていたら、突然私の体が浮いた。


「おお。ニケ。また大きくなったんじゃないか?」


また、お祖父様に一瞬で距離を詰められて、気付いたら抱き上げられていた。

二月やそこらで大きくなったりしないよ。


私達は、居間に場所を変えた。


「これまで、アトラス領まで来る事が出来なかったのだが、噂だけは良く聞いていたのだ。

マリム大橋の事も度々噂で聞いていた。

見た者達が口を揃えて信じられないほどの大きさだと言っていた。随分と大袈裟な話をしているのだなと思っていた。しかし、実際に目で見ても信じられない。

あれほど大きなものだとは思ってもみなかった。

あれは、アイルとニケが作ったのだよな?」


「ええ。まあ。そうですが……。騎士さん達にも大分手伝っていただきました。」


「最初、アイルが支柱を立てた時に、支柱が全部斜めに傾いて、大変だったんですよ。」


私が橋を作ったときの失敗談を話し始めると、アイルが困った顔をしていた。


お祖父様とお祖母様達が船の旅がとても快適だった事、マリム大橋にいたく感動した事などを嬉しそうに話していた。

お祖母さん達も楽しそうに、船で有ったことを話している。

楽しそうで何よりだよ。


特に依頼めいたことは出てこない。

始めてのマリム旅行に感動した話だけだ。


マリムの街が綺麗だという話から電気や上下水道の話になった。


どうやら、ロッサ子爵は、マリムに倣って、ロッサの街に電灯や上下水道を建造している最中なのだそうだ。

船で移動している時にその話を聞いたアイルのお祖父様は、王都やゼオンでも上下水道を導入しようと思ったそうだ。

それで、マリムの街にある上下水道の設備を見学させて欲しいと頼まれた。


これは別に大した事では無い。既にロッサとゼオンのコンビナートに製紙工場のための排水処理施設を作ってある。仕組みを教えて、コンビナートにある水処理施設を真似て作ってもらえば良い。

私達が現地で工事をしなくても済みそうだ。

マリムでも、今は浄水場、下水処理場のメンテナンスは、工兵を引退した元騎士さんの工房で実施している。費用は掛るけれど、日増しに税収が伸びているアトラス領では何の問題も無い。それよりも工兵さん達を別な仕事に振り向けられるので、助かっているみたいだ。


王都やゼオンでも、そういった工房に依頼すれば、いろいろ技術指導してもらえるだろう。


電気については王都で利用出来るように計画していた。

今回、私のお祖父様が適性が有りそうな騎士さん達を選抜して連れてきているのだそうだ。

私のお祖父様は王国騎士団に研修をして欲しいとお父さんに頼んでいた。


上下水道は設備を作ればいくらでも川の水が使えるけど、電力は足りるのだろうか?

気になって、アイルに聞いてみたら、電力は、十分に有るらしい。

今は火力発電所の能力の極一部しか使っていない。


既にコンビナートの火力発電所は、鉄道の建設に併せて敷設した電力線に繋がっている。

もし一時的に電力が不足する場合は、アトラス領の発電設備とも繋がっているので融通できるそうだ。

突然とんでもない量の電力を消費した場合にはサーキットブレーカーが働いて電力ネットワーク自体は守られるようになっている。

電力が足りない兆しが見えたら、コンビナートの火力発電所を増強するか、アトラス山脈の奥地に水力発電所を建設すれば良いだけだ。

もう、何度も作ってるからねぇ。何も問題は無さそうだ。


街中の整備については、手間は掛るかもしれないけれど、工兵さん達が順次実施していけば良いだけの話だ。


そして、人払いをして今回製造を始めた紙幣の話になった。

国王陛下が今回の件で、私達を労って欲しいと仰っていたんだそうだ。


「労う意味で何かを二人に渡したいと思っていたのだが、中々思い付かなくてな。

陛下と相談して、二人の助けになる人員を連れてきたのだ。

皆、王宮の中でも優秀と言われている若手の文官だ。

二人の研究の補助などで使ってもらえれば良いのだが。」


あぁ。それが人を連れて行くと言っていたことなのか。

やっと分ったよ。


ふーん。どんな人達なんだろう。

王宮の優秀な文官さんだというのなら、即戦力かな。

手助けしてもらえるんだったら、助かるけど。


有り難く使わせてもらうと御礼を言っておいた。

宰相お祖父様は喜んでいた。


「それで、他にもあるのだが……。」


何か話し難そうにしている。

これが、厄介事か?

やっぱり有ったね。


「昨年約束していた鉱物探査を行なう者も連れて来た。

なかなか鉱石の調査に向いている人材が居なくてな。鉱山を持っている領主に人材の供出を懸合かけあった。

実はこの人員を集めるのに、色々と交渉が必要になったのだ。

魔法を使って、現在の鉱山の鉱物の量を知りたいとか、新しい鉱山のために金が欲しいとか。

まあ、様々な事を領主達から言われたのだ。」


へぇ。鉱山の鉱物の量を知る魔法なんてあったんだね。

ジオニギさんがそれを知ったら悔しがるかもしれないな。


「鉱山の鉱物の量を魔法で知ることなんて、出来るんですか?」


「いや、魔法で鉱物の量を知るなど出来ないな。そんな事が出来るのであれば疾うの昔から実施されておるわ。それこそ無理難題を降っかけてきただけだ。

まあ、そのぐらい貴重な人材ってことなのだ。」


「そんなに、鉱石の探索をする人って居ないものなんですか?」


「まあ、そうだな。普通の者が見ても、役に立つ石も役に立たない石も、色の着いた石にしか見えないだろう?

石を見分けられる者というのは、かなり特殊な知識が必要らしい。

そういった者を鉱山を持っている領主達は囲い込んでいる。

弟子でも構わないから、経験者を出して欲しいと頼む他は無かったのだよ。」


それで、無理難題を持ち掛けられた訳だ。


「結局、散々ゴネられた挙句、要望は概ね二つになったのだが……。

ちと頼まなければならない事があるのだ……。」


なんか、よっぽど言い難いことみたいだ。


「ひとつは、新しい鉱山を開発するための金が欲しいという事だったな。

これは、産業管理部門が計画している商業ギルドへ口利きをしてやる事でなんとかなった。」


そう言えば、ロッコさんがそんな事を話していたな。

いよいよ商業ギルドが銀行になるのかな?


「そして、もう一つなんだが、こればかりはアイルとニケの力を借りないとどうにもならない。

鉱石を運ぶための鉄道を通して欲しいと言われているのだ。」


「えっ。また鉄道ですか?」


聞き返してしまった。また鉄道を引くのか……。


「えーと、それは、鉱石の輸送の為の鉄道なんですか?」


アイルも質問をする。


「まあ、そのままの話であれば、そういう事になるな。要求してきた領地は、どこも人口が少ない。

村のような領都が有るだけの領地だ。

確かに、鉱石を運べる鉄道があれば便利だと思うかもしれないのだが、些か問題もあるのだ。」


宰相閣下のお付きの騎士さんが、ガラリア王国の地図を持ってきた。

この王国の地図、縮尺合っているのかな……。

なんか、2歳になったばかりの頃にウィリッテさんに見せてもらった地図と酷似している。違っているのは、ノルドル王国がガラリア王国になっている事ぐらいかな。


「それでだな。今、鉄道を通してくれと強行に要求しているのが、ここと、ここと……」


アイルのお祖父様は、6箇所指し示した。

1箇所は、アストとテルソンの丁度中間あたりの高地。あとはルパート王国との国境に近いあたりだ。

どの場所も川が近くにあって、物流に困りそうな場所という訳でも無いみたいだ。


しかし、見事に場所がバラバラだね。どうやって鉄道を継ぐんだ。


「この場所の鉱石の採掘量は多いのですか?」


アイルがお祖父様に聞いた。


「いや。そんな事も無いのだ。そもそも鉱山作業者は少ない。鉱山で作業をしているのは、大方、犯罪奴隷となった者達だろう。

この場所の領主達は、運搬方法さえあればもっと採掘が出来ると主張しているのだが、それは鉄道を通して欲しいが為の詭弁だな。」


「近くには、人口の多い町があったりはしますか?」


「いや。国境の近くの山の中だからな。ガラリア王国はそもそも人口の多い国では無い。併合したノルドル王国はさらに少ないな。そして山脈の先にあるルパート王国は砂漠の王国だ。僅かな水のある場所に定住している者も居るらしいが、大半の王国民は、緑を求めて移動していると聞く。町と呼べる様な場所は無いらしい。

だから、ルパート王国との国境に近い場所はとても人は少ない。

この西にある鉱山は、アストとテルソンの丁度中間なので、離れた場所には人口の多い町がある。

しかし……王都より西に鉄道は敷設したく無いのだ。」


「それは、何故ですか?」


「東部大戦で王都が隣国に占領された話は聞いたことがあるか?」


あれ、最近聞いた事があるな……何で聞いたんだっけ。あっ、紙幣の裏面の絵柄を決めようとした時に、王宮の話になって、聞いたんだ。


「紙幣の図柄を決めようとしたときに聞きました。」


アイルが首を捻っていたので、私が代りに応えた。


「隣国が侵攻してくるときに、鉄道を鹵獲されでもしたら、王都へ兵を移動させるのが容易になりかねない。

西に領地を持つ侯爵家で鉄道を通して欲しいという要望が有るのだ。だが、今の様に隣国の動きが怪しいことを理由に、抑えてもらっている。

そんな時に、大して採掘量の無い鉱山の為に鉄道を通すというのは無理な話なのだ。」


「この領主の人達が鉄道が欲しい本当の理由は何なのですか?」


「まあ、格差が不満なのだろう。

鉄道や大型船で、王国の南東は栄え始めている。一方で北や西は置いていかれていると感じているのではないかな。

それに、こういった場所に居る領主は、王都に出てくるのも一苦労なのだ。

川を下って海に出ても、東から西に向って流れている海流の所為で、王都に向うのには非常に時間が掛る。

実際の距離より遥かに多くの時間が掛かるのだ。

最初は鉱石探索の人材調達の相談をしていたのだが、今はそれだけでは済まなくなってしまった。

王国の北部や西部を今後どうするのかという話に変わりつつある。

ただ、良い方法が思い付かない。

その相談をしたいと思っていたのだ。」


また、難儀な話だね。


鉄道は隣国の侵攻を助けかねないから王都の西には敷設したくないのか。

要するに、敵が攻めてきて奪われても困らない交通機関が欲しいってことか?

そんな物あるかな?

高速で移動出来る船ってのも、そういう観点だと、ダメなんだろうな。


あれ?思い付いたかもしれない。

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