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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり2
302/371

95.王宮からの連絡

晩餐会は、7とき(=午後6時)過ぎに始まった。一般的な晩餐会の開始時刻としては遅い。

仕方が無いよね。

今日来たばかりの絵画のお広めをすることになっちゃったんだからね。


王宮博物館からの絵画は公開する心算だった。でも、それは、絵画を返す前日とかを考えていたらしい。


ところが、噂を聞いた領都民だけでなく、近隣の領主達も詰め掛けて来たので、後日にするより、今日中に全て終わらせる事にしたみたいだ。


「その方が、アイルやニケにも都合が良いんじゃないか?」


義父おとう様がそんな事を言っていた。


まあ、確かに、そうかもしれないかな。


複写の作業をしている最中に絵を見たいと言われて来客の相手をするとかは勘弁して欲しかったりするな。

あっ、修復もしなきゃならないのか……。


晩餐会場には、部屋の壁沿いに料理が並び、中央に沢山のテーブルと席がある。

沢山の人達が会場に入ってきた。

顔見知りの人も多い。

領都の商店主や工房主、国務館の人達、神殿関係の人達も居た。


晩餐会が始まって、義父おとう様の挨拶が終わったところでウィリッテさんが私達の元にやってきた。


「それで、どうなったの?」


「ニケの見立てでは、ある程度は修復できるらしいですね。」


「それで、ニケさんは、引き受ける事にしたの?」


ん?何の話をしているんだ?これは。


「二人で、一体何の話をしているんです?」


アイルとウィリッテさんが、二人で驚いた顔をした。えっ?どゆこと?


それから、アイルが何かを思い出したのか、気まずそうな表情をした。


「ごめん。昼にあった無線機の連絡内容をニケには伝えてなかった……」


そう言われれば、そうね。アイルから、その話を聞いたのは、つい先刻、ボナリーア・ミレーラさんと言い合いになった時だったわ。


あまり、人の居るところで話が出来なさそうだったので、私とアイルとウィリッテさんの三人で、別室に移動した。そこで、アイルは、昼頃に受けた王宮から受けた無線連絡の内容を教えてくれた。


内容は、先刻聞いたのと変わらない。

ただ、修復の話は、私が無理だと言ったら別にそれでも良いという事になっていた。


連絡を受けたのは、アイルが化学研究所で私が依頼した作業の後、造幣局に戻った時だった。

新しく造幣局に設置した無線機でバールさんが、ウィリッテさんに報告をしていた。アイルが戻ってきたと聞いて、ウィリッテさんが王宮からの連絡を伝えた。

その頃、私は、化学研究所に籠っていた。

ウィリッテさんから連絡を受けたアイルは、帰るときには私と合流するから伝えると言っていたらしい。

ところが、今日は領主館に移動する人数が多くて、帰りの馬車はアイルと別々になった。

領主館に着いたら伝えようと思っていたのだけど、お祖母様達が居て、すっかり忘れてしまっていた。


うーん。修復の件は、何か騙された様な気がする……。


それに、最近、王宮の偉い人達は、私への人使いが荒いんじゃないか?


「何にしても、良かったわ。絵が修復出来るのは良い事だし、それに、これで、王宮博物館の絵がアトラス領に移送した大きな理由になる。」


「それって、例の件を隠蔽するためなんですか?」


「いえ、そうじゃないわ。そもそも王宮博物館の宝物を外に出すなんて、異例中の異例よ。

アトラス領は、ノルドル王国との戦争を勝利した。そして、王国を横断する鉄道も作った。王国への功績は他のどの貴族には無い事なの。

その分、他の貴族からは、注目を集めている。

そんな状況でも、王宮博物館の宝物を貸し出すとなったら、あれこれ言う貴族は出てくるかもしれない。

でも、ニケさんやアイルさんにしか出来ない作業の為となったら、誰も何も言えないわ。」


「でも、修復が無理だったら?」


「それでも良いのよ。特級魔法使いが見て修復困難という事が分ったってことになるだけ。

まあ、修復した方が、あちこちからあれこれ言われなくって済むんだけどね。」


なんだか、突然政治の話になったみたいだな……。

まあ、それは私以外の人達に考えてもらえば良いよ。

私は、修復することを考えることにしよう。


「あれ?でも、修復の作業をしていたら、模写のジャマになるわよね。」


アイルとウィリッテさんが呆れ顔をした。

えっ?私、何か変な事を言った?


「それは、一瞬で終わるだろ?」


「えっ?何で?」


「写真を撮れば良いじゃないか?」


あっ。そうだ。写真があったね。


普通に絵を前に模写するとばかり考えていた。確かに絵をそのまま模写する訳じゃないから、写真でも良いんだ。

逆に、その方が、模写する人も楽かもしれない。


「あれっ、だけど、例の件は、多色印刷するんじゃなかった?

写真だと、白黒よ。」


「まあ、そうだけど……それでどうにかしてもらうしか無いんじゃないかな。」


「そうね。王宮博物館でも、あまり長く貸し出したくは無いそうよ。修復が終ったら、即刻返還する事になるでしょうね。」


「でも、模写して、それを印刷して、出来具合を確認するのに、あの絵が有ったほうが良いわよ。」


「うーん。でも、『カラー写真』なんて、直ぐに作るのはムリだろ?」


「そうね。例の件をどうにかしなきゃならない上に、絵の修復まで仕事が増えているのよ。

そもそも、今の時期は、メーテスを軌道に乗せるための時期だったはずじゃない。

その上、『カラー写真』を作るなんて、流石に……イヤだわ。」


「多色印刷するって言っても、絵を再現するほど、色に関して忠実に再現する必要は無いんじゃないか?」


「まあ、そうだけど……やっぱり印象っていうのが大事だと思うのよね……。

あっ。バールさんが居るじゃない。」


「ああ、バールさんか。それなら良いんじゃないかな?」


「でしょ。バールさんなら、上手く色を再現してくれるわよ。

それに、修復の前後の記録を撮るってことにすれば、全然問題無いよね。」


「えーと、ニケさん?うちのバールがどうかしました?」


えっ?あぁ。そう言えば、貨幣管理部門の管理官もバールさんだった。


「今、話していたバールさんは、専属絵師のバール・コモドさんの事です。」


ふふふ。名前が同じだけど、似ても似つかない。片や巨漢の管理官と小柄な芸術家だからね。


それから、アトラス家とグラナラ家で雇っている専属絵師のバール・コモドさんについてウィリッテさんに説明した。

王都で絵を描いていたこと。写真に色付けしたものを領主館に持ち込んできて、その腕前を認めたことで専属絵師になった経緯も。


「写真に色付けですか。侯爵家と子爵家の専属絵師で、そんな事をしている人が居るんですね。」


「今回の絵は、色々な事のお礼というのはともかく、絵の修復の為ってことにもなるんでしょ?

それなら、修復の前後の記録が必要だと言えば、写真を撮る事は、全然問題にはなりませんよね?」


「そうね。そういう理由なら、誰も何も言わないでしょう。

それに、例の件も、表に出る事はなくなって都合が良いわね。」


「じゃあ、アイル。バールさんを探さなきゃ。

絵の事だから、絶対会場には来てると思うのよね。でも、絵を見たら早々に帰っちゃうかもしれないわ。」


それから、私達三人は、晩餐会の会場に戻った。


まず、バールさんを探さないと。


「アイルさん。ニケさん。大変感動しました。」


会場に戻ったら、早速、司教様に捕まってしまった……。


「王都の王宮博物館で、ガイア神の絵を見たのですが、やはり明るいところで見ると、違います。

あの色合い。神々しさ。

本当は、あれほどの美しい絵だったのですね。」


「司教様は、王宮博物館であのガイア神の絵画をご覧になったんですか?」


「ええ。時々、王宮博物館で公開していました。王都で勤めていた頃は、公開される度に観に行きました。

でも、今回見た絵は、全然違う絵の様に見えます。

色合いが全然違っているんです。その所為で、女神の神々しさが際立っているのですよ。」


色合いが違って見えるんだったら、光源の所為だろうな。

演色性の悪い光で見ていたんじゃないかな?


「司教様がご覧になった時の灯りは、何だったんですか?」


「灯りですか?さあ、蝋燭の光だったんじゃないかと思いますが……。薄暗かったのだけは確かですね。

絵が傷むからと、陽の光の当たらない暗い部屋の中に設置してありました。」


「それなら、その所為ですよ。蝋燭の光では、青や緑は黒っぽく見えるんじゃないかと思います。」


「そうなんですか?てっきり明るさの所為かと思ったのですが……。

なるほど。以前見たときには、空の色は、黒だと思っていました。そして、女神の瞳の色も黒だと。ところが、空は濃い青色だったのです。そして、瞳の色は青緑色です。

背景にある後輪は、鮮やかな黄色でした。当時、私は赤だと思っていたんです。

それは、蝋燭の光で見た所為なんですか?」


「多分、そうだと思います。」


「なるほど、色がきちんと見えていなかったって事なのですか。

それで、今回は、これほど神々しく見えるのですか。

そうそう、伝承では、ガイア神の髪の色は、金色で、瞳の色は、青緑色と言われています。

なるほど。

それでですか。

ニケさん達は、もう、女神様の絵はご覧になりましたか。

脇に従えているのは……。」


ダメだな…… これは。

終りそうにないよ。


あっ。バールさん発見。

司教様越しに、バールさんが見えた。


なんか、奥の方で、誰かと言い争ってるな。

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