155:ひとやすみ
「――ユーリばっかに活躍させて堪るかよォッ! オレ様たちもやってやるぜッ!」
「無論でござるッ!」
少女たちとの決戦の間にも、戦況は動いていた。
戦力逆転の切り札『アトラク・ナクア』を召喚半ばで排除されてしまった俺たち。
しかし、反攻に転じようとしていた女神側相手に、スキンヘッドやザンソードらが大奮闘。
さらには外壁の上に魔王側の魔法使いたちが陣取り、最初とは逆に敵を爆撃し始めたのだ。
それにより――、
「てっ、撤退だぁあああっ!」
「第二拠点に移れーっ!」
街から逃げ出す女神側プレイヤーたち。
這う這うの体といった有り様で、どこかに向かって駆けていく。
その背中が完全に視界から消えた瞬間、周囲の仲間たちが大歓声を上げた。
『最重要拠点っ、制圧だぁああーーーっ!』
こうしてみんなの活躍により、魔王軍は『始まりの街』を押さえることに成功したのだった。
◆ ◇ ◆
「さぁ我が魔王よっ、衣服を脱ぐのだッ! 今すぐにーっ!」
「ってこらグリムッ、自分で脱ぐから引っ張るなって!?」
――拠点制圧からしばらくして。
街の中に敵が残っていないことを確認した俺たちは、一旦休憩を取ることにした。
流石にずっと戦い続けるのは無理だからなぁ。特に俺の場合は、【巨獣召喚】を再びするために一時間挟まないといけなかったりするしな。
というわけでダラーっとしようと思ったのだが、こんな時だからこそ燃え上がっているプレイヤーたちもいた。
「今が活躍の時だぞっ、生産職部隊ファイヤーッ!」
『ウォオオオオオオオーーーーーッ!』
俺専属の金髪ちびっ子職人、グリムに合わせて腕を掲げる生産職たち。
彼らはそこら中のプレイヤーから衣服や武器を引き剥がすと、街の一角に突っ走っていった。
今やその場所には作業台や鍛冶設備がところ狭しと並んでおり、生産職プレイヤーたちの超特大仕事場エリアと化していた。
クラフトメイカーの必殺アーツ『常在戦陣工房』によるもので、作業設備一式をどこでも呼び出せるようになるらしい。それを複数人で発動すれば職人街の完成ってわけだな。
「おいっ、そこのサムライも脱げ! 今の内に装備の耐久値を回復させるぞっ! 脱げっ! 脱げーっ!」
「ひえッ、ロリっ子に脱がされるでござるッ!?」
ザンソードからも衣服をはぎ取るグリム。
なぜかザンソードの顔が嬉しそうでキモかったのでデコピンしてやったら、「浮気ではないでござるよッ!?」と抱きつかれた。お前アタマ大丈夫か?
「まぁ、こいつがおかしいのはいつものことだからともかく……」
俺はアホ侍(ふんどし一丁状態)を引っぺがし、グリムの小さな肩に手を置いた。
腰を曲げ、熱意に燃える翡翠の瞳と視線を合わせる。
「装備のことは任せたぜ、グリム。どうか俺たちを勝たせてくれよ」
「魔王殿……。うむっ、任されよ。そちらもしっかり休むのだぞ!」
グリムは強く頷くと、装備を抱えて駆けていった。
ああ、本当に頼もしい職人様だぜ。お前のことをギルドに誘えてよかったよ。
「うし、それじゃあ言われた通りに休むとするか」
俺は近くの噴水広場に向かうと、噴水の縁に腰かけてアイスにパクついた。
このアイスも、特殊生産職『フードメイカー』の者たちに配られたものだ。
店売りのものよりめちゃくちゃウマイぜ。これだけで一気に疲れが消し飛ぶってもんだ。
「みんな頑張ってくれてるなぁ……」
まさに一致団結といった雰囲気だ。
街壁の上には魔法使いや弓使いたちが待機して襲撃に備え、また足の速い隠密系プレイヤーたちには女神側の居場所を探ってもらっている。
これがチームワークかとしみじみ思った。ソロじゃない戦いもいいものだ。
「――よぉ嬢ちゃん。なーに黄昏てんだよぉ?」
と、そこで。がっしりとした腕が俺の肩に回された。
横を見ずとも誰だかわかる。思えば、こいつとの付き合いも長くなったもんだ。
「相変わらずだなぁ。ナンパするなら他を当たれよ、スキンヘッド」
「うるせーやい。オメェ以外はすぐ逃げちまうんだよ、ユーリ」
力を貸してくれた宿敵、スキンヘッドと笑い合う。
そういえば、グリムに装備を預けたことで、今の俺は初期装備の黒ドレスだ。
ちょうどこいつと出会った時と同じだな。
「今回は協力してくれてありがとうな。おかげで『始まりの街』をブン獲ることができたぜ」
「ヘッ、一番活躍してるヤツに言われても嫌味だっつの。……それに、気付いてるかユーリ?」
不意に表情を引き締めるスキンヘッド。粗野な雰囲気を引っ込めると、なんか普通にイケメンで困る。
「お前いい顔してるよなぁ……」
「いやそれこそオメェに言われたくねぇよッ、このキレイ顔無双の美少女モドキがっ!」
スキンヘッドは俺からアイスを奪い取ると、コーンの部分まで一気に口に突っ込んでしまった。
バリバリモシャモシャ食べながら、「顔面偏差値80野郎ざまぁみろッ!」と煽ってくる。なんだこの野郎、馬鹿にしてんのか褒めてるのかどっちなんだよ。
「って顔のことぁどうでもいいんだよ。それよりも……」
ゴクンッと俺のアイスを飲み込み、スキンヘッドは告げる。
「ペンドラゴンや刺客プレイヤーたちが、この街にはほとんどいなかった。
つまり『絶滅大戦』は――ここからが本番ってわけだ」
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