第9話お互いの思惑
「えー、君たちに集まってもらったのは君たちに伝えたいことがあるからだ、君たちが訓練を始めて約一ヶ月間、君らは予想以上のスピードで強くなっている」
「おそらく、君たちが召喚された勇者達だからだ。職業の勇者ではなく魔王を倒すもの達という意味の勇者だ。だが君たちはまだ魔物と戦ったことがない!」
「だから、今回は魔物の巣窟のダンジョンに行こうと思う。ただし、これからはダンジョンに向けて二ヶ月訓練をする」
「ダンジョンかー少し怖いな」
「ダンジョン来たー!!」
「楽しみだな、モンスター倒しまくってやる」
「みんな様々な、思いがあると思うがダンジョンでは君たちでも死ぬ可能性がある。油断をしないように今日からの訓練もしっかりするように」
「はい!!」
ダンジョンか、僕生きて帰れるかな
悩むのはやめよう、2ヶ月必死に特訓しよう。
「今日から皆さんにはダンジョンで死なない為に新しい訓練をしてもらいます。今日は、仲間同士で模擬戦をして、誰と当たっても臨機応変に戦えるようにしてください、ダンジョンは色んなタイプの魔物がいますからね」
模擬戦か、僕がどれくらい強くなったのか確かめてみるか……。
「模擬戦の相手は、クジで決めます。では引きますね。来夢くんと聖くん」
あ、スライム引き当てた子だ。相手が聖ってドンマイだな。
「お、いきなり俺からか。歩俺の戦いしっかり見ておけよ」
「あー、分かった分かった」
「では、始め」
「身体強化、縮地。オラァ!!」
ちょっと、聖さんー?口が悪くなって、、
僕が聖にツッコミを入れようとした一瞬のうちに、聖は身体強化魔法をかけて、スキルで一気に相手との距離を詰めて相手の腹に腰のひねりを使ったパンチを繰り出した。
「ドゴッ!」
スライム君は魔法を唱えようとしていて無防備だったのもあり、モロにくらった。
後衛職が耐えれるはずもなく、そのまま前に倒れてしまった。
「うぉーー!! スゲぇー!!」
うわぁ痛そう……。てか、聖強すぎて戦いになってない。
「どうだ、歩驚いたか! 俺のコンボは、なかなか、かわせないぞ」
「うん、すごいね、てか相手の子魔術師だから相性最悪だったろうね。すごく痛そうだったよ」
「ガチで殴ったからな。戦いに手加減は無しだからな」
「次は、迅くんと大輝くんです。準備してください」
「お、次はあの2人か見ものだな。勇者がどれほど強いのか見させてもらうか」
迅、アイツの本気見たことないからな。
どれくらい強いのか見てみないと
「先に行かせてもらうよ。迅君簡単に負けないでね。ファイアーバレット、ウィンドカッター!!」
「ふん、簡単にやられるかよ。アースウォール」
「ドゴォーーン!!!」
すごいな、2人とも近接がメインなのに魔法を使いこなしてる。
武器は大輝が剣で迅が斧2本持ちか、
「すごいね、僕の魔法を簡単に防ぐなんて」
「そうでもねぇよ、次はこっちから行くぞ。身体強化、神速」
「くっ、!? 速い!」
「ガキィン!!」
縮地とはちがう加速の仕方に、反応を遅らせてしまった大輝に迅が真上から二本の斧を振り下ろすが神がかった反応でそれを剣で受け流す。
「ちっ、倒せないか。倒せると思ったんだけどなスキルか?」
「あぁ!そうだよ僕のスキル直感で予想したのさ
でも、流石に焦ったよ。今のはすごかった」
「だから、お返しだよ。腕力強化、エクスカリバー!!」
「な!? ふざけんな!! 魔力強化、アースウォール、ファイアーウォール」
「ドォーーン!!」
「……? え? 何あの魔法。迅はどうなったんだ」
大輝がエクスカリバーと唱えた瞬間、大輝の持っていた剣がまばゆい輝きを放ち、剣を迅に向かって振りかざした瞬間爆発が起きた。
瞬間遅れて僕らの方までにも衝撃が伝わってきた。
「いてぇな、ふざけんなよ!! ぶっ殺す!」
僕が衝撃に驚きつつも、これを直接受けた迅の方を見ると大きな土の山の中から血だらけの迅が這い出てきた。
「大輝くん!! エクスカリバーは使ってはダメです。それは非常に強力な魔法で普通の人が受けたら無事では要られません」
「すみません、分かりました」
「悪かった迅、これほどとは思わなかったんだ」
「ちっ、ムカつくけどまぁいい、回復使える奴はいないか?」
「回復使える人はみんな迅くんに回復魔法を使ってください!!」
「はい! ヒール」
「分かりました」
「ヒール」
僕も、使えるけど行きたくないな。よし、まぁ他の人で大丈夫でしょ。
「ジェシカさん、ダメです!! ケガが大きすぎて治りません」
「危険ですねこのままだと、この城に回復魔法を使える人がいますから、探しに行きます!
今は人手が必要なので迅君以外私について来なさい!!」
「はい!!」
みんないったなぁ、嫌な奴だけど死ぬのは目覚め悪いしね、回復使ってみようかな。
僕のも、他の人とあんまり変わんないと思うけど。
「おい、なんでお前だけ残ったんだよ。あぁ、復讐のつもりか? ぐっ、痛た……俺はやられねぇぞ!」
「あぁ、復讐したいよ! 今すぐ殺したいくらいにね。でも僕は人が死にそうなのを見過ごせるほど終わってないよ」
それに、僕が強くなるという頑固な意思を持ったのは君たちにいじめられたくない。
負けたくない、変わりたいと思ったからだからね。
「お前に何ができるんだよ?」
「僕は回復魔法が使えるよ。ヒール!!」
「他の人のヒールでは治らなかったのに、少し治ったぞ。なぜ、お前が回復専門の日向より効果のある回復魔法が使える」
「少し黙ってね、ハイヒール。使える理由は少しでも強くなりたいのと君たちから受けた暴行の傷を隠すためだよ」
あとは、分からない。何故だか、僕の回復魔法は効力が高いんだ。
ひたすら回復魔法を使うだけで、こんな強力になるはずはない。
まぁ、これを教える必要はないからこれで納得してもらわないとね。
「そういうことか、完璧に治ったみたいだな。
悪かった、お前に暴行ばかりしてたのに救ってくれてありがとう」
「お前、嫌、歩がいなかったら俺は死んでたかもしれねぇ。本当にありがとう。お前にはもう暴力はしないし、他の奴にも言っとくわ」
なんだ、こいつ急に態度変えたぞ?命の恩人だから恩を感じてるとか?
「別にいいよ、流石に目の前で死ぬ人をほっとけないでしょ」
「迅くん、回復魔道士連れてきましたよ!! あれ? なぜ迅くんの傷が無くなってるんですか?」
「あぁ、それは歩が回復魔法で治してくれたからです」
「いや、あいつには無理だろ」
「ありえないだろ」
「日向ちゃんでも回復できなかったんだぞ?」
「うるせぇ!! お前ら俺がこいつに救ってもらった事実は変わらないんだよ。俺は心を入れ替えるもう他人を見下さない。そしてこれからは歩に何かするやつをゆるさないからな?」
「え、嫌守ってくれなくてもいいんだけど」
いや、裏がありそうで怖いんだけど。人ってこんなに変わるの?
「嫌、遠慮するな命の恩人なんだからあたり前だろ」
「歩くんが、回復魔法をつかったんですか? まぁ、何はともあれ迅くんが助かったのなら良かったですね」
「皆さん今日の訓練は中止でこれからは皆さん力の使い方を考えてください、これから1週間は自主訓練で力の使い方をおぼえてください」
「それでは、解散」
ハァ、疲れたな。
でも、迅が僕にもう危害を加えないみたいだし。良かったなぁ。
よし、ご飯食べて。風呂入って本でも読もうかな。
知識を夜にいれて、寝るのが最近の日課なんだよね。
「おい、歩一緒に飯食べねぇか?」
「え? 迅くん僕と食べるの?」
やっぱ、迅のことはまだまだ怪しく思ってるし。はっきり言って怖い。だけど、ここで迅を仲間にできるなら利益は……。
「あぁ、危害を加えないって約束する、それに何でそんな強い回復魔法を覚えたのか気になるしな」
迅は迅で僕といることで何か利益を得ることができるって考えてるみたいだな。
「うん、いいよ一緒にご飯食べようか」
「あぁ、ありがとうな」
そこは、お互い様か。
ここからだ、ここから変わってやる。