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キャツファイト•バラバラバグズ•ビーティング



◇◇sideシイタケ◇◇



 私の作戦としては、機動力が低いマツ姉ツキ姉にサンハートの護衛を、そして私とマイちゃんでボスとの分断を図るというものだ。


「先ずは距離を取らないとね。マイちゃん、これ使って!!」


 マイちゃんに側に寄越すのは魔導書。私は全速力で走り出した。


「絶対これ、使い方違うよね?」


「ツッコミは受け付けないよ。マイちゃん!!後方確認任せた!!」


「なるほど、OK任せて!!」


 私の意図を理解したマイちゃんは、私に背を向けらような形で魔導書を掴んだ。


「動き始めたよ!!」


「ギシャアアアア!!」


「ちゃんと、追ってきてる?」


「うんうん、ばっちしだよ。」


 魔導書ファンネル、やっぱり便利だね。




──という訳で、まあそれなりに距離を取ることができた。

 位置としては地獄谷の奥地、焼死体が少なめで開けた場所だ。

 あれを障害物にしたところで、小さな隙間に従魔を仕込まれたらウザいのでここを選んだ。


 ついでに、逃げながら行動パターンも把握した……かったんだけど飛びかかりぐらいしか使ってくれなかった。


 『地獄谷への侵略者』とかいう大仰な二つ名がついている割に地味だ。しょぼすぎる。おそらくは逃走している相手にはそれしかやらないAIでも組み込まれているのだろう。

 

 最序盤の乱入枠だけはある。逃げようと思えば逃げれる訳だけど、まあ()()()()()()()()()1つ。

 そしてもう1つ。


「……お互いに2度と会えないかもしれないんだ。ここで、仕留めさせてもらうよ。ごめんねマイちゃん、下がってて。」


「全く、シイタケ姉様は仕方ないな。」


 そう言葉を残して、マイちゃんは白い光に吸い込まれていった。


「ギシャアアアア!!」


「さあ、いっちょやろうか。」


 先制はバグズ•コープス。お得意の突進をしてくる。


 私は前方の地面に菌糸で作った縄の先端を接着。弧を描くように移動し横に回り込み、側面からマナショットを撃ち込むが、


「弾かれるか……、中々に嫌らしいね。」


 脚に当たった弾丸がまるで反射されるかのように、あらぬ方向に弾かれていく。


 対して、糸の塊のような胴体にはしっかりと穴を開けていたから、火力を出すなら正面に居座るのがベストなんだろう。


「そんなの、上手いやつの戦い方だよなぁ。」


 バグズ•コープスが続けて突進攻撃を仕掛けてくるが、私は常に側面に張り付いて弾をばら撒いた。


 別に私はアクションゲームは得意ではない。反射神経は悪いし、状況に合わせてコンボルートを変更するなんてもっての外だ。

 だから、私は観る。執拗なまだに安全な場所、タイミングを観る。相手の予備動作を覚える。パターンを覚える。


 まあ、コイツ突進しかしてこないから問題なく勝てるね。まだ、教会にいた不死者どもの方が強かったぞ?


「ギシャアアアア!!」


 そんなことを考えたのがいけなかったのだろうか?

 

 突如バグズ•コープスが咆哮をあげ、真上に飛び上がった。


 上空から鋭い物が8本飛来し、私を囲うように地面に突き刺さる。これはバグズ•コープスの脚だ。振動によって私の体が宙に投げ出される。

 脚は糸で繋がっていた。嫌な予感がする。糸の先へ視線をやると、バグズ•コープスが糸を手繰り寄せて使って急降下していた。


 更に何故か横っ腹が不自然に膨らんでいる。ビリリと横っ腹が裂け、飛ばしたものとはまた別の左右一組の脚が飛び出す。


 操魔術で肉体を操作。無理やり体を上に飛ばす。直後、私が居た場所をタガメのように太く力強い脚が交差した。


「あ゛あ゛!!」


 痛いッ!!右足が巻き込まれて脛の中程からすり潰されるように捥げた。空中でバランスを崩した私は、受け身も取れずに無様に落ちる。

 

 幸い、バグズ•コープスは攻撃に使った脚の収納、体に空いた穴脚の縫合、そして飛ばした脚との最接続でそれなりの隙を晒していた。操魔術で捥げた足を引き寄せ縫合。幸い骨までは潰されてない。

 すり潰された分は教会での決戦で拾った肉塊で穴埋めし、縫い合わせる。

 しかし私が回復している間にバグズ•コープスの姿が変化する。


「ギシャアアアアァァァ!!ガルルルルルル!!」


 今までと違う咆哮。8本の脚とは別に口付近に短い脚、触肢と呼称される器官に似たものが生える。

 更に、背中に生えていた虫の残骸が全て体内に引っ込んだ。代わりに体を覆うように刺々しい装甲を体から出し身に纏う。

 

 そんな重そうな外見とは裏腹に、バグズ•コープスはジグザグと跳ねて距離を詰めてくる。

 360度、あらゆる方向に軽快に跳ね回り移動するバグズ•コープスに翻弄される。


 私が必死に目で追っていると、一際大きなステップで目の前までに距離を詰めてきた。


「ッ!!」


 咄嗟に私は銃を突き出すが、それを読んでいたのか、ステップで私の視界から消える。

 私が後ろに振り返ると触肢による突きが胸まで迫っていた。

 避けれないと判断して後ろに跳ぼうとしたが、間に合わず錐揉み回転をしながらぶっ飛ぶ私の体。


 銃をそのまま乱射しつつ、操魔術で体を制御。私が体勢を整えて着地しバグズ•コープスの方を見る。


「っぱ、追撃してたのか。」


 鎧の隙間から伸びたムカデの体が地面に横たわっている。また、それの顔には大きな穴が。どうやら、私の暴れがうまくいったようだ。


 すぐさまそれを引っ込めたバグズ•コープス。よく見ると、鎧の隙間が広がり背が膨れ上がっていた。

 突如、鎧が弾け飛び破片が私に襲いかかる。

 私は菌糸体の壁、魔導書、マナショットでどうにか撃ち落とし防ぎ切る。

 

 よく見ると、破片にも糸が繋がっていてすぐにバグズ•コープスの下に戻るが、私は鎧が再生し切る前に体に弾を撃ち込む。


「さっきから聞いてる様子がない?」


 これはどういうことか、疑問が浮かぶが考える暇なんて許さないと言わんばかりにバグズ•コープスが猛攻を仕掛けてくる。


 突進、地面を転がって回避。足の縫合も終えてた立ち上がる。振り返るとドリフトをして再度こちらに突進。横に飛んで回避。

 今度は背中から出した大鎌を地面に刺し、水からの体を振り回す。魔道書を踏み台に跳躍して避ける。バランスを崩しそうだったから操魔術も多少使ったけど、こちらの方がコスパ良し。


 鎌が地面から外れバグズ•コープスが勢いよく転がりダウンした。5、6発マナショットを撃ち込む。

 

 立ち上がったバグズ•コープスは鎌を収納しながら接近。私の目の前に来たところで鎧がハッチのように開く。飛び出したのはハチの尻、私の顔に向けてパイルバンカーのように針が射出される。

 顔を逸らすが右耳が抉り飛ばされる。


 バグズ•コープスの身体は反動でか硬直していて絶好の攻撃チャンスだが、痛みでそれどころではない。後ろに引く。


 その後も私とバグズ•コープスの攻防は続いた。


 奴は後隙の短い触肢による突きや薙ぎ払い、突進攻撃を主軸に畳み掛け、時折り残骸を用いた大技を使ってくる。


 対して私は必死に逃げ回り、大技の後隙に1、2撃入れる形で攻めていった。


 薙ぎ払い、飛ぶ。突き、体を逸らす。引き戻す触肢に捕まり肉壁。ゼロ距離ブッパ、糸を顔に巻き防いでくる。

 バックステップからの突進、横に転がる。ドリフト再突撃、同上。ドリフトと見せかけて斜めステップからの鎌の横薙ぎ、上に飛ぶ。


 シビラを切らしたのか、バグズ•コープスが空中からの大技の体制に入った。


 対して私は待ち構える。


 上空からの突撃して、1、2、3.5。


「ハイッ!!」


 足の挟み込みをスライディングで潜り込んで回避、


「ギシャッ!?」


 下から胴体に右腕を突っ込む。下側に鎧がないのは転がった時に確認済みだ。やることは教会の時と同じ、中から菌糸体をぶち込み侵食する。

 負けじと細い足が生えてきて私の首に突き刺さり、頚椎を断ち切るが関係ない。

 

「ぶっ飛べや!!マナマシンガン!!!!」


 侵食され身動きが取れなくなったバグズ•コープスの体内に、大量の弾丸をプレゼントしてやる。


「ギヤアアアアアア!!!!!!」


 勝鬨、金切り声、爆砕音。


 バグズ•コープスの体が特撮のように大爆発する。


 勝利を告げる勝鬨が地獄谷に響き渡った。


 



──まあ、勝利の余韻に浸れるはずはないんだけどね。


 疲れた私はドロップ品を速攻で回収した後、地面に寝そべっていた。すると、


「シイタケちゃん……。」


「あっ、サンハート起き──」


 さっきの爆発音で目を覚ましたのサンハートがマツ姉ツキ姉を引き連れここまで来たんだけど、


「なんでそんなにボロボロになってるの!?」

 

 まあ、こうなると思った。まず、顔の右側がこめかみから耳にかけて抉り飛ばされている。首の両サイドには風穴が開いていて、右足もフランケンシュタインのように跡がきっちり残っている。


 普通にグロい。


「えと、回復魔法使えたりする?」


「できるけど、説教1時間ね。」


「はぁ!?」


 いや長いでしょ!!別に人を殺した訳でもあるまいし、とにかく長すぎる。


 何かキャンセルする方法は…………マツ姉ツキ姉どちらでもいい。伝われー。


「ッ!?」


「どうしたマツ姉?」


「いえ…………。」


 おねえちゃんがんばえー。


「……サンハートさん、説教するのは構いませんが──」


 お前、まさか裏切ったのか?


「──クエストの時間制限は大丈夫なのですか?」


「……あっ?」


 ナイスゥ、流石はマツ姉。やはり持つべきは家族だな。


「えっと、シイタケちゃん。今から探しても間に合わないと思うし説教しようか?」


 なんでそうなるの!?


「待って待って、大丈夫。幾らでも有るから!!」


「幾らでも?」


「おいおい、シイタケ。あんま見栄張るのはよした方がいいぜ?」


 それが見栄張りじゃないんだな。これが私のチートスキル。ド派手いきましょうか!!


子実体(フルーティングボディ)〔ユウレイダケ〕!!」


 私の声に合わせ背中から真っ白でヒョロヒョロと細長い、まるで幽霊みたいなキノコが大量に生えてきた。


「「「ええ………」」」


 サンハートは良いとして、なんでマツ姉ツキ姉も引くの!!同じことできるでしょ!!

 まあ、いいや。


「シイタケちゃん、それどうやってるの?」


「私のスキルでキノコ限定なんだけど回収したものは自家製産できるんだよね。相応にスタミナは消費しちゃうけど。因み元はボスのドロップ品ね。」

 

 ドロップ数は5個なんだけだったから助かった。……そういえば、『焼け焦げた茸の欠片』っていうアイテムが大量にドロップしたんだけどもしかして……。

 バグズ•コープスが色んなキノコを持っていたことに、マイちゃんの魂を賭けるぜ。


「んじゃ、納品……の前に回復お願い。こう見えて割と辛い。」


 特に首の穴が、そよ風が神経を刺激してクソ痛い。流石にここを不死者の肉や菌糸で埋めるのは生理的に無理だった。


「そ、そうだね。ちょっと我慢してね。」


「おおすごっ!?」


 私の周りから蔦が生えてきた体に纏わりついてきた。少し驚いたけどみるみる内に体が回復していって凄い、欠損部治ってるし応急処置で肉付けした部分も綺麗な肌に置き換わってる。凄い魔法だ。


 でもさ、


「サンハート、なんで目を瞑ってるの?」


「いや、蔦が纏わりつくのはアレじゃない?」


「???」


「なあ、マツ姉は分かるよな?サンハートの考えてること。」


「勿論ですわ。寧ろなんでシイタケちゃんはわからないのでしょうか?」


 マジでどゆこと?



◇◇◇◇◇



 村に戻ると、入り口で依頼主のクソデカスライムが出待ちしていた。思いっきり塞いでるけど大丈夫なの?


「冒険者よ、此度は無理な願いを叶えたこと誠に感謝する。これ報酬なり、受け取れ。」


 そう言って、クソデカスライムは体の中からジャラジャラと鳴る袋と明らかに世界観からズレたプラスチック製の保存容器を差し出してきた。


「えっと、ありがとうございます?それと、私もギルドに用が有るので一緒について行きたいのですが。」


 サンハートに渡す分を分けながら私は問いかける。


 移動中にサンハートから聞いたけど、ギルドに登録すれば提携している武器屋防具屋その他諸々の店で割引して貰えるらしい。

 それにトレーニングルームもあるらしい。勿論、サンドバッグも置いてある。

 

 これは行くしかないよね。


「なるほど、其方の騎士は如何にする。」


「私は午後から予定があるから結構です。」


「サンハートこれ。」


「ん、ありがとうねシイタケちゃん。」


「では、行くとするか冒険者よ。」


 そして、クソデカスライムは私を呑み込んだ。


 ……ちょっと待って!?


「んんんんんん!?」


わふな(あなた)ふぁにほなっへ(なにをやって)──」


沼地隠し(スライムゲート)


 水が弾けるような音と共に視界が歪む。

 まるで、キャンパスに絵の具をぶちまけたようなマーブル模様。それが形を持ち始め、


 私の体が投げ出された。同時に叫び声と陶器が割れたような音、何かが倒れた音、その所在を確認する前に私の体が床に叩きつれられる。


「いててっ。」


 腰を摩りながら起き上がり、周りを見る。真後ろにクソデカスライム。それを中心に倒れた座席、机、モンスター、皿の破片、良い匂いが漂う物が散乱している。


 待って?理解したくない。


「ふむ、少しズレたか。案ずるなこれはよくあることよ。」


「何事ですか?ってブレナン!!今日という今日こそは許しませんよ!!」


 そんな思いとは裏腹に、如何にもギルドの受付嬢感溢れるヤギの角が生えた女性が鬼の形相を浮かべて迫ってきた。


 このスライム、トラブルしか持ってこないじゃん。

◇◇地獄谷への侵略者:バグズ•コープス◇◇


Lv:10

種族:蟲骸統帥蟲(バグペット•マスター)


HP:1752/45

MP:155/45


•スキル:糸生成、操魔術、器用、複眼、生者感知、暗闇の住民、蟲骸鎧装、蟲骸の兵


 蟲型不死者の特殊進化個体。通常、蟲型不死者は進化を行うことができないがこの個体は自身が操る糸で蟲の残骸を取り込むことで、無理やり進化をした。

 ステータスはその物は変化していない。しかし、『スキル:蟲骸鎧装』の効果により纏った蟲の残骸の量や性質に応じて自信を強化することができる。


 普段は蟲の残骸を求めて様々な地域を放浪している。

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