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ディサイド・デュラハン  作者: 星川レオ
第2部 DULLAHAN WAR
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68章 奇跡のマーメイドたち

「ちっ、手に負えねぇな…!」


 暴走したキャルベンクラーケンにもはや意思はなく、ただ暴れる怪物と化した。多数の触手が砂浜を何度も叩き、吸盤から無数のレーザーが放たれる。深也はクラーケンから距離を取るためにランドレイクと共に駆ける。


「クラーケン…!あんしんして!このたたかいが、あなたにとって、さいごのたたかいにしてみせるから!」


 キャルベンクラーケンは血涙を流し、咆哮する。リズムマーメイドスランは下降し、海音の近くに寄る。


「みおん!いまのわたしなら、ラクベスがどこにいるか、さがすことができるの!」

「そうなのですか、スラン?」

「でも、みつけることはできても、もんだいはどうやって、たいないからきゅうしゅつするか…。」

「…! 大丈夫!あたしとトワマリーなら、ラクベスを助けられるよ!」


 愛歌が策を思いつき、道人たちは一斉に愛歌を見る。トワマリーも愛歌が考えている事を察し、頷いた。


「ほんとう?」

「うん、任せて!自信あるから!」

「タイミングが来たラ、あたしたちに指示をお願イ!」


 愛歌はデバイスを操作し始める。


「ジークヴァル、僕たちもスランの援護をするよ!クラーケンの気を逸らすんだ!」

「任せろ!」

「スラン、ディサイドヘッドの時間切れが迫っています…!急ぎましょう!」


 リズムマーメイドスランはみんなの頼もしさに勇気づけられ、力強く頷いた。


「みんな、ありがとう…!たよりにしてるから!じゃあ、いってくる!」


 リズムマーメイドスランはキャルベンクラーケン目掛けて飛んでいく。


「ジークヴァル、ヘッドチェンジだ!まだ僕たちにはドラグーンハーライムも、クロスヘッド・エボリューションも残ってる…!余裕を持って行こう!」

「あぁ、判断は道人に任せる!」


 道人はデバイスを操作し、カードを実体化させた。


「ヘッドチェンジ!ヴァルクブレードヘッド!」

『ディサイドヘッド、承認。この承認に問いかけは必要ありません。』


 ジークヴァルはジークヴァルクブレードに姿を変え、左手にヴァルムンクも持って二刀流でクラーケンの元へと駆けた。


「ランドレイク、俺らも行くぞ!ヘッドチェンジ!アクアバズーカ!」


 深也は実体化したカードをデバイスに読み込ませた。


『あなたは全てが水の泡になっても立ち上がれますか?』

「何度でもなぁっ!」

『承認。』


 ランドレイクはアクアバズーカランドレイクになり、水上をホバー移動してジークヴァルクブレードとリズムマーメイドスランのサポートに入った。


「ラクベス、どこにいるか、こたえてね…!」


 リズムマーメイドスランにレーザーの雨と暴れ狂う触手が襲い掛かるが、海音がデバイスで四つのリボンを出現させ、リズムマーメイドスランを援護防御する。海音の助けもあって、攻撃を避け続ける事ができ、何とかクラーケンの身体に近寄れた。


「はぁーっ!!」


 リズムマーメイドスランはクラーケンの全身を高速で飛び回りながら、カラフルな音符を連続掃射する。当て終えた後、急速離脱し、距離を取ってクラーケンの全身を見て、ヒレの耳を振るわせる。


「…あそこだ。わたしにはきこえた!」


 クラーケンの背中の一部から別の生き物が発する異なる音を感知する。


「まーきんぐ、するから!」


 リズムマーメイドスランが右手の指を鳴らすと背中の一部に当てた音符が発光する。


「愛歌、トワマリー、おねがい!」

「あいさ、任されよぉっ!」


 愛歌は既にカードを実体化させていて、デバイスに読み込ませる。


「ヘッドチェンジ!クローズゲート!」

『あなたは固く閉ざされた扉の中に何があったとしても開く事はできますか?』

「当っ然!」

『承認。』


 トワマリーはC(クローズ)G(ゲート)トワマリーに変化し、クラーケンの周りに十五もの薔薇が巻かれた扉を出現させる。自分の目の前の扉を開けて通り、クラーケンの背中の近くの扉から出てくる。


「愛歌、今ヨ!私の眼前に扉の補充ヲ!」

「OK!」


 愛歌はデバイスに表示されたトワマリーの視界に映る発光する音符を確認。デバイスを操作し、クラーケンの体内に扉を出現させる。C(クローズ)G(ゲート)トワマリーが扉を開けるとラクベスが機械の壁に張り付いていた。


「見つけたワ!生身の部分に囚われてなくてよかっタ…。クラーケンに痛い思いをさせちゃうから、ネ!」


 C(クローズ)G(ゲート)トワマリーは五つのリングを飛ばし、ラクベスの手足を拘束していた金具を破壊した後、薔薇の鞭でラクベスを巻いて引っ張った。クラーケンの内部の防衛装置が起動し、無数のトゲつき触手が至る所から伸びてくる。


「わわッ!?大変!長居は無用ネ!」


 C(クローズ)G(ゲート)トワマリーはそのまま背後に扉を配置し、三つの扉を経由して愛歌たちの近くまで来た。


「やったぁっ!あたしとトワマリーの作戦、大成功!」

「よし、僕の出番だ!ガントレットの力ならぁぁぁ〜っ…!」


 道人はラクベスを座らせ、頭についた寄生ヘッドをガントレットで掴んで思いっ切り引っ張った。


「取、れ、ろぉぉぉぉぉーっ…!」

「寄生ヘッドさん?大人しく取れてもらえませんか?」


 海音が笑顔で巻き貝の槍を寄生ヘッドに向ける。寄生ヘッドは身の危険を感じて自分からラクベスから離れた。


「おっと、と…!よし…!」


 道人はふらついたが、何とか両足の装甲で踏ん張り、倒れずに済んだ。寄生ヘッドを近くの岩にぶつけ、機能停止させた。


「スラン、愛歌さんたちがやってくれました!ラクベスさんは無事救出できましたよ!」


 海音はデバイスでスランに通信し、朗報を伝える。


「ありがとう、みんな…!つぎだ!つぎにわたしがやるべきことは…!」


 リズムマーメイドスランはクラーケンから一旦離れ、クラーケンを遠くから見る。ラクベスが体内からいなくなったからか、二つの甲羅とラクベスに似た巨大な両手は灰色に変色していた。


「あなたのきかいぶぶんをとりのぞき、さいせいする!わたしとみおんのねがいが、こめられた、このへっどなら…やれる!やってみせる…!」


 リズムマーメイドスランは右手で指を鳴らすとさっきクラーケンの全身に当てた音符が発光する。


「めろでぃよ!これより、あらたないみをさずける!べつのいろとなりて、ひかれ!」


 リズムマーメイドスランが右手を前に出すとクラーケンの頭の近くがいくつか赤と黄色に光る。赤は機械部分、黄色はクラーケンの生命に関わる危険な機械部分を表す。


「よし…!もうじかんがない!クラーケン、だいじょうぶ!いたくないからね!ジークヴァル、トワマリー、ランドレイク、えんごおねがい!」

「おう!」「おうさ!」「任せテ!」


 リズムマーメイドスランは薙刀を出現させて右手に持ち、キャルベンクラーケン目掛けて飛ぶ。C(クローズ)G(ゲート)トワマリーも再びクラーケンの元へ向かう。


「おいおい、何だよ、さっきから…?何やってんだ、あいつら…?」


 グゲンダルは未だにディアスを倒せずに足止めを喰らっていた。


「ふふっ、うちのシチゴウセンもなかなかやるだろう?」

「いや、何でお前が得意げなんだよ!不理解!」


 グゲンダルはディアスが発射するビームコウモリの相手で精一杯だった。


「愛歌!トワマリー!またとびらをおねがい!」

「任せてよ!」


 ジークヴァルクブレードは触手を誘導し、アクアバズーカランドレイクがホバー移動でクラーケンを翻弄しているおかげで C(クローズ)G(ゲート)トワマリーは

難なくクラーケンの後頭部に近づけた。愛歌がデバイスを操作してクラーケンの後頭部に扉を出現させる。


「ありがとう!すぐ、もどるからね!」


 リズムマーメイドスランは扉からクラーケンの内部に入り、高速移動でクラーケンの体内を飛び回る。


「あった!まず、これ!」


 リズムマーメイドスランは赤く光った部分にたどり着き、薙刀で壊した後、癒しの音符を当てて次に向かう。


「つぎ!」


 次の場所に向かおうとすると防衛装置のトゲの触手がリズムマーメイドスランを襲う。


「こんなんじゃ、わたしのいきおいはとまらないんだから!」


 リズムマーメイドスランは巧みに動き回り、触手をこんがらせたり、薙刀で弾いて難なく次の場所ヘ移動する。


「つぎ!つぎ!つぎ!」


 リズムマーメイドスランはどんどん機械を破壊して進む。クラーケンの外見にも変化が起き、機械部分が剥がれ落ち、欠けた部分が癒しの音符で生身に再生されていく。


「な、な、何が起きてんだっ!?クラーケンが元に戻って?いく?だと…?不理解、不理解…!?」


 グゲンダルはディアスとの交戦の最中に理解不能状態に陥る。ディアスのビームコウモリをまともに喰らって地面に倒れた。


「…あ、そうだ!くっくっ、そうだ!良い事思いついた…!スラン(あいつ)、今クラーケンの体内にいるんだよなぁっ…!?だったらぁっ…!」


 グゲンダルは起き上がり、宙にモニターを表示する。


「自爆しろ、クラーケン!スラン(あいつ)もろともなぁっ!!」

「なっ…!?貴さ…!」


 ディアスの静止も間に合わず、クラーケンの自爆装置が起動。クラーケンの黄色く光っていた音符部分が発光し、光が広がる。


「これって、やばいんじゃっ…!?」

「ジークヴァル!みんな!その場から逃げろぉぉぉぉぉーっ!!」


 愛歌の言葉を聞いた後、道人は叫んだ。道人の叫びを聞いたジークヴァルたちはクラーケンから急速離脱する。深也も近くの茂みに飛び込んだ。


「ラクベスは私ガ…!」


 C(クローズ)G(ゲート)トワマリーは目の前に扉を配置し、ラクベスの近くに移動。ラクベスをムチで巻いて回収した後、新たな扉を配置して中に入って退避した。


「スラン!?スランはどうなるのですっ!?嫌ぁっ、スラァァァァァーン!!」


 海音が叫んだ後、クラーケンは無惨にも大爆発を起こし、土煙が舞った。道人が咄嗟に愛歌と海音を抱えて高速移動し、その場から離れた。爆光と爆煙が収まり、クラーケンの破片が雨のように降った。


「そんな…。せっかく、みんなでがんばったのに…。こんな事って…。スラン、クラーケン…。」


 海音が少し走ってさっきまでクラーケンがいた場所に向かおうとするが、途中で涙を流し、地面に膝をつく。道人と愛歌は海音を心配して近寄った。


「…スラン、そんな…。」


 ディアスは巨大なウイングを盾代わりにして爆風を防御していた。スランの安否を気にして周りを見る。


「…ハッ、ハハッ、ハッハッハッハッハッ…!やった、やってやったぜ…!ざまぁみろ…!なぁ〜にが、救ってみせるだ!中途半端な善意をかざしやがって!クラーケンどころか、自分すら救えないとか!ざまぁみろ、ミオン!ハッハッハァッ…!?」


 グゲンダルが笑っている最中にディアスが鎌をブーメランのように投げてぶつけ、グゲンダルを地面に倒した。


「…スランの想いを中途半端な善意と言ったか、貴様…!」

「ひっ…!?」


 ディアスの激怒の眼差しを見て、グゲンダルはすぐには立ち上がれなかった。


「…あっ、海音さん!見て!」


 道人たちが愛歌が指差す方向を見るとクローズゲートが一つ残っていて、その中からリボンがいくつも巻かれた球状の物体がゆっくりと地面に着陸した。リボンが開き、中からスランが出てくる。リズムマーメイドヘッドはもう解けていた。


「…スラン!スランなのですねっ!?良かった、スラン…!」


 海音はデバイスを手に持ち、スランに通信する。


「…ごめんね、みおん。しんぱいかけちゃったね。」

「スラン、いいんです…。良かった…。」


 海音は左手を胸に当てて安堵した。


「…みおん、まだあきらめてないよね?クラーケンのこと。」

「えっ…?」


 スランの発言を聞き、海音たちは驚いた。スランは海上に浮かぶクラーケンのもう化石と化した残骸を一つ手に取る。


「みおん、わたしたちはあきらめない!わたしとあなたなら…まだ、きせきはおこせる!でばいすをみて!これはかけ、だよ!」

「デバイスを…?」


 海音がデバイスを確認すると『ミラクルテイマー』というヘッドが表示されている。


「これは…?」

「わたしとみおんのゆうじょうに、りそうに…いきどまりはない!わたしたちはつまずかない!さぁ、しめそう!みおん!わたしたちは、おそいかかるげんじつに、まけたりなんかしないんだから…!」

「…わかりました、スラン…!」


 海音は立ち上がり、両目から流した涙を拭き取ってデバイスを見る。


「私たちはまだ、諦めない…!諦めちゃ駄目なんです…!がむしゃらに襲ってくる現実なんて、何のそのです…!」


 海音はデバイスからカードを実体化し、デバイスに読み込ませた。


「ヘッドチェンジ!ミラクルテイマー!」

『…あなたが今から起こそうとしている事は奇跡ではなく、禁忌の可能性があります。それでも構いませんね…?』

「覚悟の上です…!」

『あなたたちに選択される運命は…。』


 スランに白いとんがり帽子のような頭がつき、白いローブを身に纏う。右手に杖を持ち、僧侶のような姿になる。


「いくよ、おきて…いや、おこすよ、きせき…!」


 クラーケンの破片を宙に浮かせ、光の球体に包む。ミラクルテイマースランは左手から文字を発し、光の球体に当てる。


「お願い、うまくいって…!」


 愛歌が目を瞑り、両手を絡めて願う。道人も無意識に愛歌の肩に手を置いて抱き寄せる。


「…くっ…!?」


 ミラクルテイマースランがふらつき、左手から出す文字が乱れ、倒れそうになる。

海音が倒れそうになったスランを抱えて、立ち上がらせる。


「…あっ、みおん…。」

(つまず)いたら駄目ですよ、スラン…。」

「…ごめん、じぶんでいっといてね。」


 海音はミラクルテイマースランの左手を両手で支える。


「みおん?」

「私も手伝います。」


 海音は光の球体をスランと一緒に見る。


「…クラーケン、私はあなたに伝えたい事があります…。謝りたい事はもちろんですし…。良かったら、一緒に遊びたいんです…!」


 スランが左手から出す文字に変化が起き、今の海音の発言の一つ一つが実体化して球体に当たっていく。


「私は毎日、得意のハーモニカを披露しまして…。音を奏でると(しゃち)さん、イルカさん、タコさん、イカさん、(くじら)さん、たくさんのお魚さんが喜んでくれるんです…!」

「そうそう!みおんのはーもにか?はとってもきれいなねいろなの!」

「ふふっ、ありがとう、スラン…。クラーケン、あなたもきっと、その魚さんたちと仲良くなれる…。」


 光の球体が揺らめき始める。


「みおんはとってもやさしいんだ!さかなとあそんでいるみおんはそれはもう、きれいなんだから!」

「スランの踊りも綺麗でしたよ?あっ、私ご飯も自信がありまして!深也も絶賛の腕前です!」


 光の球体がどんどん形作られていく。


水縹星(みはなだせい)海岸もとってもいい街で、私の好物の海苔やワカメもあって…とにかく、とぉ〜にかくあなたに伝えたい事が山程あるんです!」

「…ぴ…。」

「だから、わたしと!スランと!みんなと友達になりましょう!一緒に遊びましょう、クラーケン!」

「ぴぃぃぃ〜っ…!」


 光の球体に包まれた化石は小さなタコのような見た目になった。


「…! 愛歌!見て、見て!やった…?」


 道人は目を瞑って拝んでいた愛歌の身体を軽く揺すった。


「本当?や…ったのか、な?」


 愛歌はちっちゃくなったクラーケンを見て喜んでいいのか戸惑う。クラーケンはスランの左手に飛び乗った。


「わわっ!?ク、クラーケンなのですか?」

「ぴぃ〜っ!」


 クラーケンはそうだよ、と返事をするように元気に飛び跳ねる。


「うまくいった…のかな?ちっちゃくなっちゃったけど…。」

「はい、本人が嬉しそうですし、いいんじゃないですか?ねぇ、クラーケン?」


 海音がクラーケンを撫でるとクラーケンも笑顔で喜んだ。


「…馬鹿な…!?ありえねぇ…。何で…?」


 逆鱗のディアスにボコられていたグゲンダルはボロボロになりながら、唖然として海音たちを見ていた。


「…グゲンダル…。」


 どこからか静かな怒りを秘めた声が響いてくる。


「ひっ…!?ソ、ソルワデス、姉様…!?」


 グゲンダルは急いで立ち上がり、姿勢を正した。

 

「…貴様、分身体たちも全滅させた上にクラーケンも勝手に自爆させて失う形になるとは…覚悟はできておろうな?」

「ソ、ソルワデスお姉様!ご勘弁をぉ〜っ…!?」

 

 グゲンダルは大焦りで高く飛び、この場を去った。


「何だ…?まぁ、いいか…。」


 スランの無事を確認できたディアスは怒りが収まり、ラクベスの所へ向かった。

 

「わぁ〜っ!クラーケン、可愛くなったね!」


 道人たちはディアスからグゲンダルが退却した事を聞き、みんなで集まっていた。愛歌がスランが持っているクラーケンの頭を撫でていた。


「あの、皆さん!この子も修理してもらえますか?」


 海音は機能停止した寄生ヘッドを回収してきた。


「お、おい、海音。大丈夫なのか?それ、持ってきて…。」

「この子、グゲンダルに置き捨てられてしまいましたし、可哀想です…。」


 深也は海音の悲しそうな顔を見て困り顔になった。


「…まぁ、博士に頼んだら直せるかもな。」

「本当ですか?」

「あぁ、俺が頼んでみるよ。だが、頑丈に閉じ込めておかないとな…。」

「スラン。」


 ディアスが目を覚ましたラクベスに肩を貸して話し掛けてきた。


「あ、ディアス、ラクベス…。」


 スランはクラーケンを海音に預け、少し走ってディアスとラクベスに近づいた後、立ち止まった。


「…ディアス、わたし、きめたんだ。みおんといっしょにりそうをもとめるって…。わたしはだれのいのちもかりとらない!このたたかいが、わたしのこたえだよ!」

「…わかった、ダジーラクにはそう伝えておこう。」

「スラン、ゲンキデナ…。」

「ラクベス…。」

「さらばだ…。自分の道を見つけた、誇り高き裏切り者よ…。」


 ディアスはラクベスを抱えて飛び去ろうとする。


「さよなら、ディアス、ラクベス…。」


 スランは後ろを向いて海音たちの元へ行こうとする。


「…スラン。」

「な、なに?ディアス…?」


 ディアスに呼び止められ、スランは振り向いた。ディアスは後ろを向いたまま話す。


「…お前の『好き』、確かに見させてもらった。私の見解は間違っていた事をお前は証明してみせた。…地球も悪くない…。」

「あっ…!」


 スランはゴウ=カイの前にディアスが言っていた事を思い出した。ディアスは飛び去っていく。


「…ディアス、ラクベス!わたしたち、てきどうしになっちゃったけど!ディアスも!ラクベスも!ぜったいに、しんじゃだめだよ!また、またいきてあおうね!きっと…!」


 スランは飛び去ったディアスとラクベスが見えなくなった後もしばらくその場を動かなかった。

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