65章 伝説のクラーケン
強固な装甲と打撃力を併せ持ったラクベスを相手に苦戦するジークヴァルたち。近づいて装甲の薄い部分を攻撃しようにも甲羅を即座に大きくして守り、長いトゲで攻撃してくるので隙がない。
「どうする、道人?私が消えるまでまだ時間はある。ヘッドを変えるか?」
ランスハーライムが道人に指示を仰ぐ。道人はガントレットからデバイスを外して確認する。
「あの固い甲羅をどう打ち砕くか、だね…。僕の今の手持ちだと、ドリルヘッドくらいか…。」
例えドリルを使ったとしても、ラクベスを取り押さえてドリルを当てても砕くのには時間が掛かる。その最中にあのトゲでラクベスは抵抗してくるはずだ。迂闊には取り押さえられない。
「ラクベスの弱点である関節部分を狙わせないようにしてあって、的確な強化だよ、これは…。クロスヘッド・エボリューションまで時間を稼ぐか…?」
道人は限られた時間の中でラクベスへの攻略法を何とか見つけ出そうとする。が、ラクベスはそんな時間も与えてはくれず、道人たちに向かって突進してくる。
「くっ、どうすれば…!?」
その時、ラクベスの横からウイングブーメランが飛んできて激突。ラクベスは横転するが、すぐに起き上がって防御体勢を取る。
「スラン、これはどういう事だ?何故ラクベスと戦っている?」
「ディアス!」
スランの隣にシチゴウセンの一人、ディアスが着地し、戻ってきたウイングブーメランを背中につけた。
「…どうやら、混戦状態のようだが…。」
ディアスは遠くで行われている戦いも認識する。
「あのね、ラクベスがキャルベンってひとたちに、むりやりへんなあたまをつけられて、あやつられているの!」
「何…?なるほどな、見覚えのない姿のはずだ。」
「…ディアス、おねがいがあるの!むこうで愛歌とトワマリーがたいぐんのあいてをしててね、こまっているの!ここはわたしたちがなんとかするから、ディアスは愛歌とトワマリーをたすけてあげて!ディアス、たいぐんとのたたかいはとくいでしょ?」
ディアスは遠くで空を飛びながら戦っているBWトワマリーの方を見る。
「…私はあいつらとは敵同士で助ける理由がない。私としてはラクベスを正気に戻してお前を連れ帰れば…。」
「きょうできただいじなともだちなの!おねがい!」
「…友達…。」
スランは頭を下げた後、真剣にディアスを見つめる。ディアスは溜め息をつく。
「…わかった。彼女らを助ければいいんだな?助け次第、彼女らと合流し、一緒にラクベスを止める…。それでいいな?」
「…! ありがとう、ディアス!」
「…我ながら、甘いな…。」
そう呟くとディアスは飛び、愛歌たちの元へ飛んだ。
「…あいつも話せばわかるんだな…。おっと、いかんいかん、集中集中…!」
道人は気を取り直してラクベスを見る。ラクベスも動かずにこちらを見ている。
「…どうする?そうだ、深也からバブルランチャーヘッドを借りて…。」
深也の方を見るとオルカダイバーが今使っているのを確認できた。
「駄目か…。しかも、硫酸の泡って言っても、あの頑丈な甲羅を溶かしきるには大分掛かっちゃうし…。」
「ねぇ、道人。こわすひつようないよ。ラクベスからとりあげればいいだけだよ。」
「取り上げ…? あっ!?そっか!難しく考え過ぎたな、僕…!」
そう、真正面からぶっ壊す発想自体がこの場面にそぐわなかった。壊す以外の方法を選べばいいだけだったんだ、と道人は考え直した。
「道人、すまない、油断した。仕掛けよう。」
木にぶつかった後、地面に座っていたジークヴァルが道人の隣まで跳んで戻ってきた。
「道人、みんなでラクベスにいどもう!ラクベスのあたまはこのうちのだれかがはずせばいいから!」
「わかった、行くぞ!みんな!ラクベスを元に戻してあげるんだ!」
「「おう!」」「うん!」
道人の言葉の後、ジークヴァルたちはラクベスに向かって跳ぶ。ラクベスは警戒体勢を取る。スランはラクベスの前方で立ち止まり、ジークヴァルは右、ランスハーライムは左に着地する。
「名を与えられた我が愛剣、ヴァルムンク…!主の意思に応えてみせよ!」
ジークヴァルがヴァルムンクを持つ手に力を入れると青く輝いたヴァルムンクの刀身の光が更に力を増す。ジークヴァルはラクベスの右からヴァルムンクを振り下ろした。
「そう、ジークヴァルの通常装備の剣はダジーラクとの激戦でパワーアップしたんだ…!それを活かすために僕は今回、斬撃強化ヘッドを採用してみたんだ…!いくら固い甲羅だって言っても…!」
ジークヴァルは何度もラクベスの右の甲羅を斬る。甲羅には傷がつき始める。
「よし、例え壊れなくても…!」
「時間切れまで何度も斬り付けてやる!」
「私も付き合うぞ、ジークヴァル!」
ランスハーライムもラクベスの左の甲羅に何度も連続突きを繰り出した。
「さすがにこのランスでは傷をつけるのは難しいが、ラクベスの気を逸らすくらいならできる!」
ジークヴァルとランスハーライムの左右からの猛攻に対し、ラクベスは二本の針をびゅんびゅんと振り始める。
「させないから!」
スランは宙に金のラインの刺繍が入った赤と青の二本のリボンを出現させ、ラクベスの頭をぐるぐる巻きにした。
「さすがにこれでひっぱって、とれるほどやわじゃないよね…!」
スランは駄目元で二本のリボンを両手で掴んで引っ張るが、ラクベスの頭は取れない。
「でも、しかいはうばえたから…!」
スランはリボンを空中で固定し、高くジャンプ。ラクベスの両肩を足場にして着地。二本の長い針を両手で掴んで引っ張る。
「これもなかなかひきちぎれないし、これをひっぱってもあたまはとれないか…!しかも…!」
針は更に上へ伸び、折り曲がってスランを刺しに向かってくる。
「ながいはできない!」
スランは針から両手を離し、ラクベスの背中の甲羅を右足で強く蹴って、回転して地面に着地した。スランが右手を横に振ると薙刀の交換用刃が宙にいくつか出現する。
「これに、きめた!」
刃の中からラクベスの頭を引っ掛ける事ができそうなクワガタの角のような刃を選択。今持っている薙刀の刃と付け替えた。
「ジークヴァル、ハーライム、あとはわたしが!」
ジークヴァルとランスハーライムは頷き、攻撃をやめてラクベスから離れた。スランもラクベスの顔に巻き付いたリボンを移動させ、二本の針をぐるぐる巻きにした。ラクベスは攻撃が止んだのを理解し、甲羅を元の大きさに戻した後、ナックルモードに変形させるために甲羅を一旦宙に浮かせた。
「それを、まってた!せめにてんじるそのしゅんかんを…ね!」
スランは金の刺繍の緑と黄色のリボンをラクベスの左右に新たに出現させ、甲羅をぐるぐる巻きにし、宙に固定した。
「い、ま…だ!」
何が起こってるかわからない様子のラクベスの不意をつき、スランはラクベスの頭を背後からクワガタ刃の薙刀で挟んだ。
「ごめんね、ラクベス!これで…と、れ、てぇっ…!」
スランは右肩に薙刀の棒を背負い、持ち上げようとするが、ラクベスの巨大な身体はスランの華奢な身体では持ち上がらない。
「「「スラン!」」」
道人たちが駆けつけ、ラクベスの両足を抱えて一緒に持ち上げようとする。
「みんな…!よし、いっくよぉっ!」
「「「うおおぉぉぉぉぉーっ!!」」」
ラクベスは持ち上がり、宙に浮かんで地面に仰向けで倒れた。
「これで…! …!? 何、これ…!?」
ラクベスについている頭に四本の足が出現して必死にしがみついていた。
「このあたま、いしがあるの…!?」
「そりゃぁっ、オレらが造った寄生型ヘッドだからねぇっ!理解しろ!」
「きゃあっ!?」
グゲンダルがスランに飛び蹴りを喰らわし、スランは地面に倒れた。ラクベスも起き上がり、針を振り回し、巻かれたリボンを取る。
「何で!?お前は…!?海音さんは…!?」
「グゲンダル、私との闘いの最中にどこへ…!?」
道人はやって来たグゲンダルの姿を見て海音とシーラの心配を一瞬したが、無事でほっとした。
「せっかくオレらが強化してやったのにノロノロと戦いやがって…!見兼ねて来たんだよ!特にそこのキクラゲ!お前だ!」
木倉下とディフィカルトクラーケンMk-2は深也たちの猛攻に対して未だ劣勢だった。
「だってよぉっ、姉貴!このガキ、仮にもデュエル・デュラハンの準優勝者なんだぜぇっ?」
「うっせぇっ!もうチンタラやんのはやめだ!そもそもデストロイ・デュラハンなんていう側がいらなかったんだ!本来のクラーケンで十分!」
「…? 姉貴?何言って…?」
「もういい。食っちまえ、クラーケン。」
グゲンダルがそう言うとディフィカルトクラーケンMk-2の背中のクラーケン部分が巨大化し、意思を持ってデストロイ・デュラハンを取り込んだ。ランドレイクに切られた触手も復活し、巨大なクラーケンとなる。
「何じゃ、こりゃあっ…!?」
ランドレイクはでかくなったクラーケンを見上げる。深也とオルカダイバーも絶句した。
「そんな…!?この姿は以前よりも…!?」
「懐かしいだろう、ミオン?感動の再会って訳だ!さぁ、キャルベンクラーケン!お前の復讐相手を今度こそ、食らっちまえぇっ!」
キャルベンクラーケンは海音を睨み、触手を海音とシーラに伸ばした。




