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ディサイド・デュラハン  作者: 星川レオ
第2部 DULLAHAN WAR
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61章 それは意外な再会

「みんな、そろそろ水縹星(みはなだせい)海岸に着くわよ。」

「わかりました。」「OK!」「あいよ。」


 大神の言葉に従って道人と愛歌、深也は姿勢を正し、下に置いていたリュックを足の上に乗せる。今、道人たちは朝早くに大神の車で水縹星(みはなだせい)海岸へと向かっている。ジークヴァル、トワマリー、ランドレイクを積んだトラックも一緒だ。昨日の段階でデュラハン・パーク側から海音に連絡を取る事ができ、神殿に向かう事を了承してもらえたのだ。


「さすがに今回は海水浴してる余裕はないね…。海音さんの事が心配だし…。」

「そうねぇっ、今回やっとあなたたちの引率役になれたけど…仕方ないわね、それは…。」


 愛歌と大神は少し残念そうだった。今回は大神が引率役となり、博士と虎城は何時襲ってくるかわからない三大敵勢力からの防衛役としてデュラハン・パークに残った。大神の部隊分けシミュレーションの結果、水縹星(みはなだせい)海岸へ向かうのは道人&ジークヴァル、愛歌&トワマリー、深也&ランドレイクとなった。


「大丈夫かな、デュラハン・パークのみんな…。」

「安心しなさい、愛歌ちゃん!私の部隊分けシミュレーションに抜かりはないわ!攻撃力特化のこちらに対してあちらは守りのスペシャリスト!防御力の高い大樹君&カサエル!機動力に秀でて戦闘力の高い潤奈ちゃん&フォンフェル!そして、フォンフェルが発作を起こしても回復役として動けるグルーナさん&ルレンデス!まさに鉄壁の守り!完璧だわ!」

「テンションたけぇな…。」

「自信満々だね…。」


 深也と道人は大神のハイテンションを見てコメントした。テンションは高くてもちゃんと車の操縦を疎かにはしていなかった。


「しかし、こんな事なら、一週間前ここに来た時に海音の連絡先を聞いとくべきだったな。定時連絡できねぇからやや不便だ。」

「前回は騒々しくてそんな暇なかったし、仕方ないよ。」

「今日交換すればいいじゃん?」

「だな。」


 そうこう会話している内に車とトラックは水縹星(みはなだせい)海岸の商店街付近に着いた。


「よし、こっから海音さんの神殿に直で行ってもいいんだよね?」

「はい、海音さんの身が心配ですし、早めに行きましょう。」

「OK、道人君。えっと、場所は…。」


 大神は車のナビゲーションを見て神殿の場所を確認した後、また車を発車させる。


「あ、そうだ。愛歌、両親に事情説明はしたの?」

「うん、昨日ね。お母さんにはもうデュラハン・パークの事とかは全部話した。」

「どうだった?」

「道人君も一緒なら大丈夫だろうって許しは得たよ。いやぁっ、責任重大ですな、道人さん!」

「はいはい、頑張らさせて頂きますよ。」

「それと道人のお母さんも気にしてて、近々道人本人から話しがあると思います、って返事しといたよ。」

「そっか、帰ったら母さんに色々説明しないといけないな…。父さんの事も、助け出した宇宙飛行士仲間の事も…。やらなきゃいけない事がいっぱいだ…。」

「うん、そうだね…。」


 道人と愛歌は車の中から海を眺めた。


「なぁ、道人。ジークヴァルとハーライムの合体の話なんだが…。」


 深也が突然合体に関して聞いてきた。昨日から合体に興味津々だな、この男と道人は思う。


「あれって、何か条件とかあんのか?」

「あ、うん。昨日ジークヴァルと改めて確認したんだけど、すぐに使える訳じゃないんだ。ジークヴァルが既に三回ヘッドチェンジを使い終わっている事と、ハーライムがドラグーン化が可能な状態じゃないと使えないんだ。」

「なるほどな、時間制限は?」

「あるよ。何時もと同じく三分。」

「あれになると道人もまた、変身しちゃう訳?」


 愛歌も話題に入ってきた。


「いや、どうだろう…?僕の姿が変わったのは正直、僕自身もよくわかってないんだ…。合体の事もそうだよ。ねぇ、ジークヴァル。」


 道人はリュックのホルダーからデバイスを取り出し、画面に映るジークヴァルを見る。


「あぁ、私たちはまだクロスヘッド・エボリューションの能力を完全には引き出せていない…。あの合体にはまだ隠された能力がある気がする…。」

「結構大暴れしてたと思うけど、あれでまだ発揮できてない能力があるって言うの?すごいなぁ〜っ…!」


 愛歌は驚いた後、デバイスを手に取り、トワマリーを見る。


「トワマリー、今度一緒に合体ロボの映像見て研究しよっか!トワマリーも将来的にルブランと合体できるかもしれないし!」

「うん、しよしヨ!イメージトレーニングヨ、愛歌!」

「トレーニングになるのかな、それ…。」


 道人は左頬に軽く汗を掻いたので左手の人差し指で摩る。


「みんな、神殿に着くわよ!降りる準備をして!」


 大神がそう言うと神殿の前に車とトラックを止め、外に出た。


「…何だ、この音は…?」

「えっ?何?ジークヴァル。音…?」


 道人はリュックのホルダーにつけたデバイスを見る。


「聞こえないか?鉄と鉄が激しくぶつかり合う音が…。」


 道人たちはジークヴァルの言う事を聞き、静かにした。確かに神殿の中から聞こえてくる。


「…道人君、愛歌ちゃん、トラックに行ってインストールの準備を。深也君はランドレイクを連れてここへ。」

「わかりました!」「えぇ!」「おう!」


 道人たちがトラックへ走ろうとした瞬間、神殿内から爆発が起こった。


「なっ…!?」


 神殿内の煙の中からスランが跳んで出てきた。


「もう!わたしはみおんにあいにきたの!じゃましないで!」

「あれは、シチゴウセンのスラン!?」

「ん?あなたたち、なんでここに…?」


 スランが道人たちを見ると神殿内から勢いよく触手が伸びてくる。スランは薙刀の棒部分にわざと触手を巻かせた。


「もう!なんなの、あんた!しつこい!」

「ケケッ!外が賑やかだと思ったら、見知った顔のオンパレードじゃねぇか!最高の復讐日和よ!」


 煙の中からまた見知った顔が出てきた。


「あんたは…えっと、木倉下(きくらげ)タベル!」

(すすむ)だよ!」


 愛歌の名前間違いを正した男は木倉下進。以前、ディサイド化したランドレイクと闘い、何時の間にか逃げた男だ。


「そう、木倉下進!何が復讐よ!壺はちゃっかり売り払って、結局町内大会の賞金は持ち逃げできて大金を得たくせに!」

「うるせぇっ!また触手で捕まえてやろうか、嬢ちゃん?ケケッ!」

「ひぇっ…!?」


 愛歌は嫌な事を思い出し、道人の背中にぴったり引っ付いて木倉下を見る。ランドレイクがトラックの中から出てきて深也の近くに来た。


「何だ、いつぞやのクラーケン野郎かい。また触手を切られたいのかい?」

「うっせぇっ!この間の俺らと同じだと思うなよぉっ?姿を見せやがれ、ディフィカルトクラーケンMk-2!」


 木倉下が名を呼ぶとディフィカルトクラーケンMk-2が神殿の中から出てきた。


「ディフィカルトクラーケン…?以前と姿が…?」


 ディフィカルトクラーケンはクラーケンの部分が強化され、機械化されていた。触手も生物部分が切れないように頑丈になっている。スランも容易く触手を切れないようだった。


「驚いたか?以前、お前らにディフィカルトクラーケンの触手を切られた時、直せなくてよ。マーシャルの奴にも連絡できねぇし、困ってたのよ。そしたら、昨日、ちょっとした出会いがあってな!ディフィカルトクラーケンをパワーアップしてくれたのよ!感謝の極みってやつよ!ケケッ!」

「マーシャルは関係ない…?つまり…。」


 道人は傀魔怪堕(かいまかいだ)かキャルベンの仕業か?と考えた。


「お前らのパワーアップなんてどうでもいい!海音はどうしたっ!?どこにいる!?」


 深也は怒りの感情を剥き出しにして木倉下に聞く。


「そうだよ!わたしがきたときにはみおんはるすで、こいつがいえのなかにいたの!みおんはどこ!?」

「ねぇ、道人。あのシチゴウセン、海音さんの知り合いなのかな…?」

「うん、どういう関係なんだろう…?」


 道人と愛歌はスランと海音の関係が気になりつつも、すぐに木倉下の方を向き直して警戒する。


「さてね、俺もあの女を痛い目に遭わせようと思って来たが、神殿の中は既に荒らされていたぜ。」

「何…?てめぇっ、嘘じゃねぇだろうな?」

「さぁてねぇ〜っ?俺、犯罪者だしなぁ〜っ!嘘ついちゃってるかも?かも?ケケッ!」

「てめぇっ…!」


 深也はデバイスを右手に持ち、首にネックレスを出現させる。


「おぉっ、怖!?さて、どうするか…?一対四か…。 …うん、きちぃな!撤収、撤収!煙幕を吐け、ディフィカルトクラーケンMk-2!」


 ディフィカルトクラーケンMk-2は口から黒い煙幕を出し、辺りをあっという間に煙だらけにする。スランの薙刀に巻き付いていた触手も離れる。


「うわっ!?煙が…!?」


 道人は後ろにいた愛歌を抱きしめて守る。


「もう!けむり、じゃま!」


 スランは宙に多くの交換用刃を展開。自らが持つ薙刀と共に高速回転させ、煙幕を吹き飛ばした。煙は晴れたが、既に木倉下とディフィカルトクラーケンMk-2の姿はなかった。


「てめぇら、待ってな!協力者を連れてまた来るからよぉっ!そしたら、てめぇらを一網打尽にしてやるぜ!ケケッ!」


 もう姿は見えないが、木倉下の声だけが聞こえてきた。


「ちっ、逃がしたか…!あの野郎…!」

「みおん…。どこいっちゃったの…?」


 深也とスランはいなくなった海音の身を案じて海を見た。

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