53章Side:潤奈 前編 ダンゾウ
フォンフェルはシユーザーとラクベスの猛攻を何とか捌きながら、バックステップを繰り返して移動していた。道人とジークヴァル、愛歌とトワマリーの闘いの邪魔にならないように遠ざかろうと潤奈は考えたからだ。潤奈もフォンフェルを追いかける。潤奈はデバイスでフォンフェルに連絡をした。
「…もう十分だよ、フォンフェル。ここから攻めよう!」
「御意!」
潤奈は走りながらカードを実体化させ、デバイスにカードを読み込む。
「ヘッドチェンジ!ダンゾウ!」
『あなたは例えどんなに高い壁にぶつかっても諦めずに飛び越える自信はありますか?』
「…あるよ!」
『承忍。』
フォンフェルにポニーテールの髪がついた紫の覆面が装着され、黄色いマフラーが首に巻かれる。紫の胸・肩・膝パーツが足され、右手に両端に刃がついた槍を持つ。
「ダンゾウフォンフェル、推参!」
「またおめかししちゃってぇーっ!真っ二つになりなぁーっ!」
「はい、では〈真っ二つ〉に…。」
シユーザーは両手に剣を持った状態でロケットパンチを繰り出す。ダンゾウフォンフェルは指を鳴らした後、切り裂かれ、上半身と下半身が〈真っ二つ〉になった。
「何っ!?やった!?あっけないな!?」
「えぇ、本当に。」
ダンゾウフォンフェルはシユーザーの両肩に足を乗せ、腕を組んで立っていた。
「馬鹿なっ!?いつの間に!?」
「私が立つには邪魔な頭です…ねっ!」
ダンゾウフォンフェルは両足でシユーザーの頭を挟み、横に一回転して首を外した。
「貴様、私の顔を…!?」
「シユーザー、イマタスケル!」
ラクベスがシユーザーを助けに向かって来る。ダンゾウフォンフェルはシユーザーの宙に浮いた頭を両手でキャッチする。
「もういりません!」
キャッチしたシユーザーの頭をボールのように蹴ってラクベスの身体に当てた。
「ギャアァーッ!?私の頭がぁっ!?」
「オォッ!?アブナイ、アブナイ…!」
ラクベスは自分にぶつかった後、宙に浮いたシユーザーの頭を両手でキャッチした。
「シユーザー、ダイジョウブ!オレ、チャントキャッチシタ!」
「おぉ!ノロマなお前にしてはよくやったと褒めてやろう、ラクベスよ!」
「おや、拾ってもらえたのにひどい言われよう。もう本人には返せませんがね!」
ダンゾウフォンフェルはシユーザーの上でジャンプした後、前方に一回転し、宙に逆さまになった状態で手裏剣を複数投げ、シユーザーの身体に刺さりまくる。
「ぎゃあっ!?私の身体がぁっ!?」
「ニ対一はしんどいのでね。早々に一人減ってもらいましょう!」
ダンゾウフォンフェルは着地した後、一本の槍を分離させ、二本の短い槍に変形させる。
「はあぁぁぁぁぁーっ!!」
両手に持った槍二本で高速連続突きをシユーザーの身体の顔にお見舞いする。
「あばばばばばば…っ!?」
「島から落ちろ!!」
連続突きで宙に浮いたシユーザーにすかさず飛び蹴りを喰らわし、シユーザーを吹っ飛ばした。
「サセナイ!」
ラクベスは走り、落下しそうになったシユーザーを受け止める。
「ダイジョウブカ、シユーザー?」
「ま、また助かりましたよ、ラクベス…。」
「ホラ、アタマ、カエス。」
「はて?それは本当に〈シユーザーの頭〉でしょうか?」
ダンゾウフォンフェルはいつの間にか柱の上に立っている。指を鳴らして自分が手に持っている〈シユーザーの頭〉をラクベスに見せる。
「ン?シユーザーノアタマ、ナンデオマエモッテル?ジャア、オレガモッテルノハ?」
「さっき投げたのは〈爆弾〉ですよ。投げる前にすり替えておいたのです。」
「ナ、ナンダト!?バクダン!?」
ダンゾウフォンフェルは指を鳴らした後、ラクベスは慌てて自分が手に持っている〈爆弾〉を見る。
「タ、タシカニバクダンダ!?アブナイ!オマエニ、カエス!オマエガ、バクハツシロ!」
ラクベスは両手に持った〈爆弾〉をダンゾウフォンフェルに投げる。
「ラ、ラクベス!?何で私の頭をあいつに返した!?」
「アレ、バクダン!アヤウク、ダマサレルトコロダッタ!」
「お前、何言って…?」
「私もいりません!返します、〈爆弾〉を!」
ダンゾウフォンフェルはまた〈爆弾〉を投げ返した。
「モウ!イラナイ、バクダン!」
ラクベスはシユーザーを地面に置いて立ち上がり、右手で〈爆弾〉を掴んだ後、すぐに海に向かってぶん投げた。
「ちょっとぉぉぉぉぉーっ!?何してくれちゃってんのよ、ラクベスちゃん!?」
「アイツ、バクダン、ナゲカエシテキタ!アブナカッタ…!」
「おや?まだ危機は去っていませんよ?さっきシユーザーに投げた手裏剣は〈酸性の手裏剣〉でして。早く取らないと溶けてしまいますよ?」
ダンゾウフォンフェルは持っていた〈シユーザーの頭〉を地面に捨てた後、指を鳴らした。
「な、何っ!?そんな馬鹿な!?」
シユーザーは自分の身体中から煙がたくさん出ている事に気づく。
「ぎ、ぎゃあぁ〜っ!?わ、私の身体がぁぁぁぁぁぁ〜っ!?」
「? ドウシタ、シユーザー?」
「惑わされてはなりません、お二方!」
マーシャルが二人の様子を見兼ねて飛んできた。
「わ、私の身体が溶け、とけ、toke…!?」
「落ち着いて下さい、シユーザー様!あなたの身体は何ともありません!」
「な、何だと…?」
シユーザーはマーシャルの言葉を信じ、落ち着いて見ると自分の身体に手裏剣が刺さってるだけだった。
「ほ、本当だ…。何ともない…。いや、手裏剣が身体に刺さってる時点で何ともない訳がないが、何ともない…。」
「ジャア、アイツガモッテタ、シユーザーノアタマハ…?」
「柱から削り取った石ですよ、石。」
「ナニ…?」
ラクベスも落ち着いて見るとさっきフォンフェルが捨てたシユーザーの頭はただの石だった。
「ホントダ…。ジャア、オレガサッキ、ウミニナゲタノハ…?」
「隙あり!」
ダンゾウフォンフェルはシユーザーたちに向かって手裏剣を乱れ打ちする。
「アブネェッ!フタリトモ!」
ラクベスはシユーザーとマーシャルを掴んで横に投げ、向かってくる手裏剣を一身に受けた。ラクベスの固い装甲には手裏剣は刺さらない。
「やってくれましたね、姉さん…!」
マーシャルは潤奈を睨む。潤奈もマーシャルを見つめた。ダンゾウフォンフェルはマーシャルが潤奈に殺気を向けているのに気づき、瞬時に潤奈の前に立つ。ラクベスもマーシャルとシユーザーの前に立つ。
「お二方は幻術に掛かっていたのですよ。」
「な…何っ!?幻術!?」
「えぇ、恐らく一定の対象に…。今起こっている現象に対して言葉を付け加える事で暗示をかけ、そう思い込ませる術のようです。フォンフェルの言葉には耳を貸してはいけません…!」
「さ、さすが私の愛すべきマーシャル!よくぞ見破ってくれた!礼を言うぞ!」
シユーザーはよろけながらも立ち上がる。
「ス、スマナイ、シユーザー…。オレ、オマエノアタマヲウミニ…。」
「なぁに、気にするな。あの頭はスペア十一号…。我が研究室に行けばたくさんある。後で弁償してくれればいい。」
「弁償は求めるんですね…。」
フォンフェルは思わずツッコミを入れた。シユーザーは新たな頭を出現させ、右手に持つ。マーシャルは飛んで近くの柱に座った。
「おのれ!よくもコケにしてくれたな、ジュンナ、フォンフェル!今日のために用意したこの頭を見せてつけてやろう!覚悟せよ!」
シユーザーは力強く右手に持った頭を装着する。赤いサングラスをかけた顔で背中に四本の巨大アームが増え、それぞれアームに剣二つ、槍、盾を持つ。両手には矢印光線銃を二つ持つ。
「イガイトヤルニンジャ!オレモ、オマエヲ、ダトウスルタメニ、ヨウイシタ、アタマミセル!」
ラクベスも右手に新たな頭を出現させ、付け替える。頭に巨大な二本角をつけ、両腕に巨大なナックルガントレットが装備される。
『主、申し訳ない…。新たなヘッドを私は使いこなせなかったようだ…。』
ダンゾウフォンフェルが潤奈に念話を送ってきた。
『…ううん、フォンフェルはよくやってくれたよ。このヘッド、相手を惑わせるのは強力だけど、殺傷力は低いみたいで扱いが難しいね…。もっと勉強しないとだね。この経験を次に活かそう、フォンフェル。』
『はい、主…!』
潤奈とフォンフェルは今の戦いの反省をし、目の前の強化されたシユーザーとラクベスに警戒する。
「さぁっ、行きますよぉっ!そぉ〜らぁっ!」
シユーザーは巨大アームが持った盾を自分の前に移動して突進。アームが持った剣二つと槍でダンゾウフォンフェルを串刺しにしようとするが、高くジャンプして避ける。
「ジャンプ避け、お見通しぃ〜っ!」
シユーザーは矢印光線銃を二丁構えて撃つ。矢印の形をしたビームがフォンフェルに向かう。
「妙な光線を…!」
ダンゾウフォンフェルは槍を扇風機のように回転させてビームを弾く。
「防いじゃったかぁっ…!」
「ん…!?」
フォンフェルは矢印光線銃を槍で捌いたはずなのに身体に何かが通り過ぎたような謎の感覚を感じた。フォンフェルは地面に着地する。
「ウオォォォォォーッ!!オレノ、ビッグホーン!!」
ラクベスは上半身を前に倒してでかい二本の角でダンゾウフォンフェル目掛けて突進してくる。
「追加装甲で身体が重くなっています!容易く避け…!?」
その時だった。ダンゾウフォンフェルの体内から軋む音が鳴り響き、発作が起きた。
「ぐがっ…!?こんな、時に…!?」
「…!? フォンフェル!」
フォンフェルは咄嗟に身体を捻るが、ラクベスの体当たりをまともに喰らい、吹っ飛ぶ。
「しまっ…ぐぅっ…!?」
ダンゾウフォンフェルは槍を二本に分離して地面に刺し、減速して何とか柱に激突するようにし、海への落下は免れた。
「…フォンフェル…!」
潤奈は右手を胸に当ててほっとする。
「ほっとしてる場合じゃないでしょ、ジュンナァッ!」
「…あっ…!?」
シユーザーは盾を捨て、ビッグアームで潤奈を握り締める。
「主!!」
「おっと!大人しくしてろよ、ニンジャ?どうだった?私の開発した矢印光線銃!いやぁっ、うまく行って良かったよぉ〜っ…!こいつは物に当たった時、小規模だが超音波を発生させる。つまり、お前は矢印光線を槍で防いでしまったから体内の機械に超音波が当たってしまい、発作をこの私が!意図時に!起こしたって訳よ!くっかっかっ、私てぇ〜んさぁ〜い!」
「…あっ…!?」
潤奈を握るアームが強く握られる。
「主!!」
「あぁっ、ごめんごめん!自慢話してたらつい力んじゃった!さぁて、愛しのジュンナで人形遊びといこうかぁ〜っ…?」
シユーザーは巨大アームの剣二つと槍を潤奈に向ける。その時、フォンフェルの横を通り過ぎる物体があった。その物体はシユーザーの前に来た後、高くジャンプしてシユーザーの顔面に膝蹴りを喰らわせた。
「ぐぎゃっ!?」
「…きゃあっ!?」
シユーザーはよろける。謎の人影は潤奈を握っていた巨大アームを切断し、潤奈を解放した後、抱えて地面に着地する。
「大丈夫?」
「…え?君、は…。」
潤奈は自分を抱えているデュラハンに心当たりがあった。
「ぎぃ〜っ…!?私の新しい顔をぉっ…!?誰よっ!?」
「私よ!」
潤奈は声がする方を向く。光の板の階段近くに腕を組んで誰かが立っている。
「あんたねぇっ、私の大切な…外宇宙初のファンに何してくれちゃってんのよ!?」
そこに立っていたのは昨日姿を消したグルーナ・フリーベルだった。




