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ディサイド・デュラハン  作者: 星川レオ
第1部 始まりのディサイド
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52章 出撃

 時刻は十一時。司令との約束の時間になったので道人たちは司令室に入る。


「来たか、道人君たち。」


 自動ドアが開いたのに気づき、司令は振り返って道人たちを見る。スクリーンには博士の姿も映っていた。


「説明に入る前に…君たちに問いたい。今回の戦いは激戦が予想される…。命の保証はできない…。もし、バドスン・アータスとの戦いを避け、家族と一緒に御頭街(おがしらまち)から逃げたい者がいるのなら、遠慮せずに我々に言って欲しい。今からでも遅くない。我々が全力で街の外まで案内しよう。」


 道人たちは司令の言葉を聞いても誰も怖気付かなかった。


「今更何言ってんだよ、司令?俺は妹をもうここに連れて来たんだぜ?今更後に引けるかよ。」

「俺も爺ちゃんがちゃんと逃げてくれたかもわからんし、仮に俺が家に戻っても爺ちゃんは言う事聞いてくれるかわからんし…。だったら、俺はカサエルと一緒にこの街を守る方を選ぶ!奴らにこの街は指一本触れさせん!」

「あたしだって、バドスン・アータスのせいでみんなとの繋がりがなくなってしまうのは嫌だもん!だったら、あたしはトワマリーと一緒に戦う!あたしの大好きなこの街を傷つけさせはしない!」

「…私は戦う力がなくて、今まで逃げてきた…。でも、今は違う…!フォンフェルがいて、道人たちがいて、独りぼっちじゃない…!私は今度こそ、バドスン・アータスから大事な場所を守ってみせる!」

「司令、大丈夫です!もうみんな、覚悟は決まりましたから!僕も今持てる全ての力を使ってバドスン・アータスにジークヴァルとハーライムと一緒に立ち向かいます!」


 道人たちはそれぞれの決心を司令に伝える。司令は目を瞑って少し考えた後、目を開けて道人たちを見つめた。


「ありがとう、みんな…!君たちの気持ちは確かに私の胸に伝わった…!君たち若者に全てを託す事になって申し訳ないと思う…!すまない、我々に力を貸してくれ…!」


 司令は右手で敬礼をし、道人たちも敬礼で返した。


「…では!これより作戦会議に入る!まずは現状説明からだ!虎城君!」

「はい!」


 虎城はキーボードを素早く叩き、道人たちの前にスクリーンを表示する。


「現在、観測衛星の情報によると戦島(いくさじま)と思われる物体は地球上空を停滞中。動きは見られません。」

戦島(いくさじま)の大きさは大体東京ドーム一個分と測定している。あの戦島(いくさじま)が大気圏突入の後、何をしてくるのかはわからない…。潤奈君に聞いてみたが、今まであのような物を連中は使って来なかったという…。仮にあれが御頭街(おがしらまち)のどこへ着地しようと一般市民の避難はほぼ完了している。ただ、一部この御頭街(おがしらまち)から出たくないという人達がいると報告を受けている。現在スタッフが説得を試みているところだ。」

「爺ちゃん、守ってみせるけど…今だけは頑固を捨てて逃げてくれよ…。」


 下を向いて心配そうにする大樹の右肩に道人は手を置いた。


「次に戦力についての話だ。御頭街(おがしらまち)の外に御頭(おがしら)防衛隊の戦車が待機している。最悪、バドスン・アータスの戦島に攻撃を仕掛ける事になっている。あくまで最悪の事態にだ。ディサイド・デュラハンが交戦中には攻撃はしないようにと指示してある。次にこれをみんなに渡しておこう。」


 司令は机の上に置いてある片耳通話イヤホンを道人たちに渡した。


「何かあったら、オペレーターの二人が君たちに指示をする。」

「皆さん、私たちはジークヴァルたちが経験した過去の戦いのデータを解析してシチゴウセンたちの行動パターンをデータ化しました。デバイスに送っておきます。」

「苦労したんだから!必ず役立ててよぉっ?」


 大神は右手でガッツポーズをし、左腕を右腕に乗せて右目でウインクした。


「ありがとうございます、虎城さん!大神さん!」

「これがあれば鬼に金棒、百人力よ!」


 道人と愛歌がお礼を言うともうデバイスにデータが送られてきたので道人たちは確認した。


「道人君、わしからも君にプレゼントがある!見よ、これを!」


 博士は右手に重そうな金属でできたブーメランを画面越しに見せてきた。


「何ですか、そのブーメランは?」

「道人君のガントレットの力で投げても耐えられる特別金属性のブーメランじゃ!ジークヴァルの装甲に使われている物と同じ素材で作ってみた!急遽(きゅうきょ)作ったものじゃが、役に立つはずじゃ!」

「やったじゃん、道人!」

「博士…。ありがたく使わせてもらうよ!後で受け取るね!」

「もう一つ、みんなに渡したいものがある。これだ。」


 司令は机に置いてある箱を手に取り、開けて道人たちに見せた。中には赤い糸が入っている。


「木倉下進が水縹星(みはなだせい)海岸で盗んだ壺についていた十糸(といと)姫の糸だ。ようやく発見する事ができた。」

「あ、あの時の!?」

「な、何の事じゃ?」


 大樹は水縹星(みはなだせい)海岸での出来事を知らないため、道人は時間もないので簡潔に説明した。


「木倉下は壺の価値がわかっていて尚且つ、高値で買い取る質屋を見つけ出して売っていたようだ。誰かに買われる前に見つかって良かった。」

「じゃあ、これがあればあたしのルブランか大樹君のルートタスが実体化できるかも…!」


 愛歌と大樹は自分のスマホを取り出して自分のデュエル・デュラハンを見て胸を高まらせた。


「俺のオルカダイバーもな。」

「それって、深也のデュエル・デュラハン?」

「あぁ。もう水没の復元はとっくに完了済みだぜ。」


 深也は道人にスマホに映ったオルカダイバーを見せた。このデュエル・デュラハンが深也と共に準優勝を勝ち取った猛者か、と道人は目を輝かせる。


「だが、糸だけあっても実体化はできない…。デュラハン・ハートがないと宝の持ち腐れかもしれん。」

「じゃが、潤奈君から聞いたが、昨日ハーライムがパワーアップをしたと言う。デュラハン・ハートも突然現れる事もある。わしらはまだデュラハン・ハートにしても、十糸(といと)姫の糸についてはわからん事が多い…。持っていかんよりは持っていた方がいいじゃろう。」

「…またハーライムがパワーアップするかもしれないし、道人が持ってた方がいいのかな?」


 潤奈の提案にみんな異論はなかった。


「わかった、僕が持っておくよ。」


 道人は糸を箱に入れ直し、上着の内ポケットに入れた。その時、司令室にサイレンが鳴り響く。


「来たか…!」


 スクリーンに図が映り、戦島が地球に降りる矢印が何度も点滅する。


「はい、現在十一時二十五!戦島(いくさじま)に動きあり!大気圏突入に入ろうとしています!」

「落下予測地点は…ここ!デュラハン・パーク実験エリアの島の付近と思われます!」

「やはりデュラハン・パークに降り立つか…!第一戦闘配備!博士、ディサイド・デュラハンは!?」

「もう会社エリアの駐車場、輸送トラックに設置済み!何時でも出撃可能じゃぁっ!」

「道人君たち、急いで輸送トラックに行き、ディサイド・デュラハンを起動!戦島(いくさじま)が降り次第、直ちに出撃だ!…みんな、誰一人欠ける事なく、必ず帰ってくるんだぞ…!」


 司令は顔を歪め、本当は送り出したくない気持ちを我慢して道人たちを送り出そうとしていた。


「わかりました!では、行って来ます!行こう、みんな!」

「えぇ!」「…うん!」「あぁ!」「おう!」


 道人たちは司令たちに背を向け、自動ドアを開けて走り出した。


「頼みましたよ、皆さん!」

「私たちも全力でサポートするからね!」


 虎城と大神の声援を背に受け、道人たちは駐車場まで走る。行く途中にある物は何も目に入らず、ただひたすら駐車場まで走ってたどり着いた。道人たちが着いたのを確認した整備班たちがトラックの扉を開ける。


「俺らの整備は完璧だ!」

「存分に暴れて来い!」

「頼んだぜ、勇気ある子供たち!」


 整備班たちの激励に感謝しながら、道人たちはトラックの中に入った。潤奈は立ち止まり、フォンフェルが側に現れる。


「…がんばろうね、フォンフェル。」

「えぇ、主たちは絶対に守ってみせる…!」

「船長ぉっ!待ってたぜ!さぁ、暴れましょうや!」

「頼りにしてるぜ、ランドレイク!」


 潤奈と深也はデバイスを操作し、自分の首にディサイドネックレスを出現させる。

道人、愛歌、大樹も自分の相棒のボディの前に立つ。


「行くよ、ジークヴァル!」

「あぁ!何時でも行けるぞ、道人!」

「頼むわよ、トワマリー!」

「必ず帰って来ようネ、愛歌!」

「俺らの勇気見せるぞ、カサエル!」

「やってやるさぁっ!」

「ジークヴァル!」「トワマリー!」「カサエル!」

「「「インストール!」」」


 三機のデュエル・デュラハンが一斉に起動。道人たち三人に一斉にディサイドネックレスが出現。道人には右手にガントレットが装着される。


戦島(いくさじま)、大気圏突破!そのまま下降!落下予測地点はデュラハン・パーク会社エリア付近の海の上です!


 道人たちの片耳通話イヤホンから虎城の必死な声が聞こえ出す。


「何…?戦島(いくさじま)の下部分が変形して…。」

「…!? もしや、先程のビーム砲か…!?みんな、衝撃が来るぞ!!伏せろぉぉぉぉぉーっ!!」


 司令の音割れをした声が道人たちの耳に鳴り響く。フォンフェルは潤奈をお姫様抱っこして柱の影に隠れ、ランドレイクは深也と一緒にしゃがみ、背中で深也を庇う。

道人たちはトラックの中で近くの物に掴まった。

 光の柱が海に大穴を開け、海水が混ざった暴風が駐車場を襲う。


「…収まった、か…?」


 辺りが静まり返って初めて声を出したのは司令だった。


「っ…! 戦島(いくさじま)、先程のビーム砲で開けた穴に着水!島の上に人影を()()()確認!」


 虎城の叫びの報告に道人たちは疑問に思った。


「…十二人…?どういう事…?」

「数が合わないじゃない!どうなってんの!?」


 潤奈と愛歌が真っ先に数が合わない事を口に出した。


「あっ!?内三人が飛び、御頭街(おがしらまち)に移動!

それと…えっ…?」


 虎城が報告中に言葉を止めた。


「どうしたんだ、虎城君!?」

「…ま、街中に首無し兵士を確認!計測中…出ました!その数は…()()

「何…だ、と…!?」


 通信越しに驚く司令と共に道人たちも驚きを隠せない。突然の大軍の出現の報を聞き、状況が飲み込めず、困惑していた。


「…行こうぜ、戦島(いくさじま)へ!とにかく、行ってみなきゃ何も始まらねぇだろ!?」


 深也が悩んでいる道人たちに提案を叫ぶ。確かにこのまま駐車場にいても埒が開かない、と道人はトラックから外に出た。


「よし、行くぞ、みんなぁっ!これ以上、バドスン・アータスの好きにさせてたまるもんかぁっ!」

「おう!行くぞ、道人ぉっ!」


 道人とジークヴァルの声を聞き、愛歌と大樹、トワマリーとカサエルもトラックから外に出て駆けた。深也とランドレイク、潤奈とフォンフェルも立ち上がり、走る。ダジーラクたちが待つ戦島(いくさじま)へ。

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