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ディサイド・デュラハン  作者: 星川レオ
第1部 始まりのディサイド
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49章Side:卒間 突然の遭遇

「…ふぅっ、これでひと段落…。」


 卒間は椅子に座って今日御頭(おがしら)デパートで起こったデストロイ・デュラハン事件の事後処理と情報・書類整理を行っていた。


「大神君、君もご苦労だったね。そろそろ帰宅しても構わないよ。後は私がやっておくから。」


 卒間は司令室にいる大神に話し掛けた。


「いえ、もう少しいますよ。その方が司令も楽でしょう?」

「そうか?確かにありがたいが、あまり根を詰めすぎるなよ?」


 時刻は十時半。最近はバドスン・アータスの襲撃が頻繁に起こっているせいで仕事は正直言って間に合ってなかった。


「あ、そうだ。虎城君から聞いたかい?明日は道人君たちがここの調理室で潤奈君のために故郷の味の再現を(こころ)みるとか。」

「えぇ、聞きましたよ。虎城さん、良いなぁっ、道人君たちと遊べて…。まぁ、せっかくの休日に事件に巻き込まれたのは災難でしたけど…。それでもファッションショーに出たり、道人君たちと一緒に晩御飯も食べたそうですよ?水縹星(みはなだせい)海岸の時も私留守番でしたし、私も道人君たちと遊びたいですよぉ〜っ!」

「ちょうどいいから明日、道人君たちの調理を手伝ったらどうだ?それに何も機会はこれっきりって訳じゃないんだ。また今度も道人君たちと遊べばいいさ。」

「そうですよね!よぉ〜し、明日に向かって頑張りますよぉ〜っ!」


 大神は張り切ってモニターと向き合い、キーボードを叩いた。卒間はまた書類整理に戻る…前に博士が研究室でどうしてるか気になったので博士の研究室に通信を繋いだ。モニターにホワイトボードに計算式を書いている博士が映る。


「博士、私だ。どうだ?ジークヴァルの修理点検の方は?」

「おぉ、司令か。点検の方は問題ない。今は未来のために色々研究中じゃ。やりたい事がたくさんあり過ぎての。フォンフェルみたいにわしが分身したいくらいじゃわい。」

「あんまり無理するんじゃないぞ?」

「そう年寄り扱いするんじゃないわい!まだまだこの通り、元気よ!」


 博士は両腕を大きく振って元気に見せた。


「ははっ、なるほど。元気で何よりだ。さて、その元気さで今は何の研究を?」

「今はデュラハン・ハートを使わずに動けるデュラハンを研究中じゃ。」


 博士がさらっとすごい事を言ったので卒間は詳しく聞く事にする。


「デュラハン・ハートを使わない…?すごいな、そんな事が可能なのか?」

「うむ。デュラハン・ハート以外に動力源にできそうな物を知り合いに教えてもらってな。うまくできるかどうか考えておる。他にもディサイド・デュラハンがヘッドパーツを使い切った後にも使える人工ヘッドパーツなどを考えておるな。」


 卒間は博士のこの短期間で様々な閃きを得てはすぐに開発に取り掛かる姿勢に尊敬の念を抱かざるを得ない。


「昨日現地で確認した潤奈君の宇宙船のデータも研究中でな。うまく行けばディサイド・デュラハンを搭載できる戦艦も作れるかもしれん。」

「それはすごいな。戦艦があればバドスン・アータスの宇宙要塞に襲撃作戦も可能になる訳か。」

「そういう事じゃ。」

「ただ、襲撃するには準備が必要になるから、完成してすぐという訳にはいかないだろうがな。あの子たちが誰一人犠牲にならない安全で完璧な作戦を考えねばならない。」

「あぁ、その通りじゃな。」


 博士は腕を組んで下を向き、考えていた。


「今日使用したディサイド・デュラハンの転送システムの方はどうだ?使った後、ショートしてしまったようだが…。」

「そちらはあれから更にブラッシングをしての。何、次からは送れるディサイド・デュラハンを増やす事も可能じゃ。」

「苦労掛けるな、博士。」

「何、わしら開発班があの子たちにしてやれる事と言ったら、こうやってわしの持ち得る全ての科学力で全力でサポートするだけじゃよ。」

「良い心掛けだ。話が長くなってしまったな。通信を終わろう。良き研究成果を、博士。」

「うむ!任せておけい!」


 博士が右手でサムズアップした後、通信が切れた。モニターが暗くなってすぐに卒間は椅子から立ち上がり、自動ドアの前まで歩いた。


「大神君、少し屋上で風に当たって来るよ。何かあったら連絡してくれ。」

「すぐ戻らないと書類整理終わりませんよぉっ、司令?」

「ははっ、そうならないようにすぐ戻るさ。」


 卒間は大神と話した後、司令室を後にし、自販機でお茶を買った後、エレベーターで屋上のヘリポートへと向かう。自動ドアにカードキーとパスワードを入力し、屋上の手摺りまで歩いて遥か遠くまで広がる暗闇の海を眺めながら茶を飲んだ。


「…博士たちに比べて、私はどうだろう…?司令官として、あの子たちの助けになれているだろうか…?度重なるバドスン・アータスの襲撃の後処理ばかりのこの私に…。」


 卒間は上着の内ポケットから妻と息子の写真を取り出し、眺めた。


「司令官どころか、父親としても私は…。」


 卒間はしばらくボーっと暗闇の風景を眺めていた。


「…っと、しまったな。長居し過ぎだ。戻らないとな。」


 卒間が自動ドアの方向に振り返り、写真を胸ポケットに仕舞おうとした瞬間、強風が吹き、写真が飛んでいってしまう。


「なっ…!?しまっ…!?」


 飛んでいく大事な家族の写真に手を伸ばし、もう諦めの感情が湧き出そうとしたその時、胸にドクロをつけた人型が写真をキャッチした。


「…!? 何っ…!?」


 卒間の目の前に現れたのは道人たちが水縹星(みはなだせい)海岸で遭遇したと報告にあったディアスという敵の姿に酷似している。


「バドスン・アータス…!?何故…!?」

「…身構えるな、ニンゲン。別に戦う気はない。…これはお前の家族か?」


 ディアスは写真に写っている家族の事を聞いてきた。


「…あ、あぁ、そうだ。」

「…大事な物とお見受けした。危うく二度と見つからぬ物となってしまうところであった。以後気をつけよ、ニンゲン。」


 卒間はディアスの意外な行動に呆気に取られ、警戒する事なく、写真を受け取った。


「あ、ありがとう。…でなくて、何しに来た?何が目的だ?」


 ディアスは腕を組み、卒間を観察した。


「お前、ここのニンゲンか?」

「あ、あぁ、私はデュラハン・ガードナーの司令官だ。」


 卒間は内ポケットにある護身用の銃に手を入れる。


「司令官…。なら、ちょうど良かった。私はシチゴウセンの一人、ディアス。あなたは?」

「わ…私は卒間、卒間塔馬だ。」

「なるほど、塔馬か。良き名だ。」


 卒間はディアスからは全く敵意も殺気を感じず、気づいていたら護身銃から手を離して下ろしていた。


「…一度しか言わない。明日、我が友ダジーラクが全てのシチゴウセンを連れ、チキュウに降りて御頭街(おがしらまち)を襲撃する。」

「何…だと…!?」


 卒間は信じられない発言をディアスから聞いて驚愕した。


「お前たちは勝ち過ぎた…。ライガ、ダーバラ、ラクベス、レイドルク、シユーザーを退けたお前たちにダジーラクは興味を持ち、自らがお前たちの実力を見に来る事になったのだ。」

「そんな事が…!?」

「…確かに伝えた。だが、私はバドスン・アータスの一人…。お前たちを惑わすフェイクかもしれない。信じるか、信じないかはお前たち次第だ…。」


 ディアスは後ろを振り返り、去ろうとする。


「…ま、待て!何故、何故お前はその事をわざわざ…!?」


 卒間は右手をディアスに伸ばし、引き止める。


「…()()ダジーラクは何をするかわからない…。お前たちの実力を見るだけなら、いらぬ犠牲者を出す必要はない…。そう思っただけだ…。」

「どういう事だ?お前は今まで多くの星を滅ぼしてきた一人のはずだ!なのに何故犠牲を出す事を気にする!?」


 ディアスは振り返り、卒間を見た。


「…確かにな。何を今更、大量殺戮に後悔しているのか…。我ながら不覚悟者だ…。」


 ディアスはそう言うと去っていった。卒間は血相を変え、急いで司令室に戻り、博士に通信を繋いだ。


「おぉ、司令か。何じゃ、また何か用か?」

「博士、まずい事になるかもしれん…!情報の真偽は確かではないが…用心に越すに越した事はない…!」

「ど、どうしたんじゃ、司令!?一体何があった!?」

「大神君、至急調べて欲しい事がある!状況が確認でき次第、もしかしたら道人君たちに急ぎで連絡を取ってもらうかもしれん…!」

「は、はい!」


 卒間は屋上であった事を博士と大神に話す。博士と大神はそれを聞いて青ざめるが、すぐに対応を開始する。


「私は…司令官として、あの子たちを、この街を守ってみせる…!」

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