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ディサイド・デュラハン  作者: 星川レオ
第1部 始まりのディサイド
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39章 駄菓子屋

 道人と愛歌は放課後、博士と潤奈と共に十糸(といと)の森へデュラハン輸送トラックで向かった。調査スタッフ三人も含めて計七人で行く事になる。森の入り口でトラックを止め、歩きで潤奈の宇宙船まで歩く。


「博士、大丈夫ですか?宇宙船まで道のり長いですよ?」


 道人は博士の体力の心配をした。博士は多忙でかなり負担を掛けてしまっているからだ。


「ありがとう、道人君。なぁに大丈夫じゃよ。わしにはこのために履いてきた特別な靴がある。」


 博士は両足の(かかと)同士をこんこんとぶつけるとホバーが起動し、博士が少し浮いた。


「それ!この通りじゃ!」


 博士は素早い動きでぐんぐん前に進んでいった。先行して前を歩いているフォンフェルも追い越す。


「すごいな。昨日のアクアバズーカのランドレイクみたいだ。」


 ジークヴァルは道人のリュックについたホルダーから博士を見て呟く。


「博士ぇっ、すごいけど、フォンフェル追い越しちゃったら宇宙船の位置わかんなくなりますよぉーっ。」


 道人の突っ込みに皆が軽く笑った。


「愛歌と潤奈は大丈夫か?」


 道人は次に後ろを歩いている愛歌と潤奈の心配をする。


「大丈夫、大丈夫!これくらいへっちゃら!」

「…私はこの道、慣れてるから。」


 二人とも大丈夫そうで道人は安心した。愛歌と潤奈も楽しそうに会話しながら歩いているので退屈してなさそうだった。

 しばらく歩くと潤奈の宇宙船に到着した。博士たちはまず宇宙船の外見を確認し、写真を撮る。潤奈はデバイスを操作し、乗り物の入り口が開いたら光の板が出現して階段になる。


「道人君たちは先に中に入っていていいぞ。外見の確認にしばらく掛かりそうじゃ。」


 博士の厚意を受けて道人たちは先に宇宙船に入る。愛歌はどうなってるの、これと驚きながら中に入る。通路を少し歩いて広い真っ白な部屋にたどり着く。以前とは少し変わっていて、海水浴の時の麦わら帽子などが飾ってあった。


「…? これは?」


 道人は作りかけの木でできた置物が気になって潤奈に聞く。


「…それはタンスになる予定。もう一つは本棚。フォンフェルが作ってくれてるんだ。」

「フォンフェルが?」

「はい。森の近くから材料を取ってきて作りました。作っていると結構和むんですよ?」

「器用だよネ、お姉ちゃン。」


 道人と愛歌はタンスと本棚になる予定の物を眺める。釘もちゃんと打ち込んであり、外面の木もコーティングされていて綺麗に作られている。


「おぉっ、確かによくできておるな。」


 博士が宇宙船の外見の調査を終え、中に入ってきた。


「フォンフェルはデバイスの中に入れなくてもこっちの方が楽しそうじゃな。」

「えぇ、そうですね。私としても主の護衛は続けたいですし、このままでいいかもしれません。」

「じゃが、発作の方は何とかせんとの。こちらでも何とか修理方法を検討しておる。つらいじゃろうが、しばらく我慢しておくれ。」

「いえ、いいんですよ、博士。何時までもお待ちしますよ。」


 博士はフォンフェルとの会話をした後、宇宙船内部の機械を潤奈から説明を受けながら調査した。その間、道人と愛歌は潤奈の淹れてくれた麦茶を飲みながらちゃぶ台の近くに座って待った。

 宇宙船の調査を終えた後、博士たちは今度は十糸(といと)姫の洞窟の調査に向かう事にした。以前ラクベスが襲ってきた事があったため、警戒していたが、何も襲って来なかったため、杞憂(きゆう)に終わった。洞窟の方も特に新たに見つかるものはなく、例のカラクリのデュラハンの調査をしたくらいで終わり、宇宙船まで戻った。


「さて、もう少し宇宙船の調査を続けたいが、道人たちはどうする?」

「私が博士たちの護衛をしておきますので、主は道人たちを駄菓子屋に案内してはいかがですか?」


 そういえば以前、遊園地エリアのレストランで今度、駄菓子屋に行ってみようと愛歌が言っていたのを道人は思い出した。


「そっか!潤奈、駄菓子屋の手伝いしてるんだっけ?よし、良い機会だから行ってみようよ、道人!」


 道人は了承し、駄菓子屋に向かう事になった。


「…フォンフェル、珍しいね。私と別行動取るなんて。」

「何かあってもハーライムが主を守ってくれますから大丈夫でしょう。主に何かあったら勿論、全力で駆けつけますが。」

「…そっか。良かったね、フォンフェル。頼りになる友達ができて。」

「はい、ハーライムは頼りになります。」


 道人はスマホに映るハーライムを見た。恐らく今、実体化させたら照れている事だろう。

 フォンフェルの好意を受け、道人たちは潤奈に案内され、十糸(といと)の森を出て小さな町に出る。さすがに歩き続きで愛歌にも疲れが見えたので道人は愛歌と手を繋いで歩いた。愛歌は少し照れながら歩く。森を出てすぐのところに駄菓子屋はあった。


「…お爺さんお婆さん、こんにちは。」

「ん?おぉっ、潤奈ちゃん!」

「あら、いらっしゃい、潤奈ちゃん。おや?そちらの二人は…何時も潤奈ちゃんが話してるお友達かい?」

「…うん。遊びに来たの。」

「初めまして、道人です。」

「愛歌です。」


 道人と愛歌は軽く自己紹介する。潤奈も老夫婦の紹介をしてくれた。名前は岡島味太、岡島市子。創業七十年の駄菓子屋を営んでいると紹介された。


「せっかく来てくれたんだ、店内の駄菓子を買ったら中でお食べ。サービスするよ。」

「…ありがとう、味太さん、市子さん。」


 道人たちは駄菓子屋を見て回る。なかなかの品揃えでさすが七十年続く店は伊達ではなかった。


「あ、見て、道人!これ、懐かしい!久しぶりに食べたいな!あ、こっちも!あれもいい!」

  

 愛歌は興奮状態で次々と道人の持った籠に入れていく。楽しい場所を全力で楽しむのは愛歌らしいと道人は思った。


「結構買っちゃうね…!はしゃぎ過ぎたかな…?たははっ…!」


 愛歌は照れながら右頬を掻いた。


「いや、大丈夫。僕が払うよ。」

「マジか!?大丈夫かい、道人君?そんな頼り甲斐を見せちゃって!甘えちゃうよぉ〜っ?」

「安心なさい。もう愛歌の爆買いには慣れたもんよ。」

「何という頼もしさ…!お嫁さんにしたい…!」

「何で僕がお嫁さんなんだよ?僕の場合、お嫁さんは愛歌だろ?」


 愛歌はそれを聞いた後、ハッとなり、頬を染めて慌てて駄菓子の探索に戻った。


「…自爆ネ、愛歌…。」


 デバイス内でトワマリーが囁く。愛歌は頬を膨らませてデバイスの画面に軽くデコピンした。


「潤奈も遠慮せずに籠に入れてな。」

「…うん、ありがとう、道人。」


 駄菓子を選び終え、道人は会計を済ました。道人たちは岡島家のリビングに上がらせてもらい、駄菓子を食べながら楽しく会話をした。さすがに全部は食べられないので持って帰る事にした。岡島夫婦にまたおいでと言われた後、潤奈の宇宙船まで戻る事になった。


「楽しかったぁ〜っ…!また行こうね、道人!潤奈!」

「うん。今度は大樹や深也も連れて行きたいな。」

「…うん、岡島さんたちも喜ぶよ、きっと…。」


 潤奈は楽しそうにしていたが、どこか気落ちしている様に見えた。


「潤奈、どうかした?さっき、駄菓子をみんなで食べてる時もたまに悲しげな表情してたけど…。」

「…あ、ごめん、道人。気に掛けちゃった…? …その、ちょっとだけ、お父さんの事を思い出しちゃって…。」


 道人と愛歌はなるほど、と察した。


「…お父さんの作ったミスパト、思い出しちゃってね…。また食べたいな、って…。思い出しても仕方ないんだけどね…。」

「…よし!決めた!」


 愛歌は潤奈の悲しそうな顔を見た後、決心した。


「明日、みんなで御頭(おがしら)デパートに行こう!そしてさ、潤奈の好きなミスパトに似た食べ物を探そうよ!なかったらみんなで作ろう!」

「愛歌…!うん、そうだね!良い考えだと思う!」

「…えっ、でも…。」

「大丈夫!あたしたちが必ずミスパトに似た食べ物を見つけるか、再現してみせる!だから、元気出して、潤奈!」

「潤奈、後でどんな食べ物か教えてな。絶対君を喜ばせてみせるよ!」

「…道人、潤奈…。 …うん、わかった。お願いできるかな?」


 潤奈は涙腺が緩み、両目を両手で擦る。

道人と愛歌は潤奈の手を握り、宇宙船まで帰った。戻ると博士たちも今日の調査は終了していて、今日のところはトラックで家に帰る事になった。潤奈は笑顔で道人たちに手を振った後、明日を楽しみにし、鼻歌を歌いながら宇宙船に入った。楽しそうな潤奈を見届けた後、道人はトラックに乗り込んだ。

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