40章 御頭デパートへ
木曜日の放課後、道人たちは校門の前に車を止めて待っている虎城と潤奈と合流した。もはや校門の前に車が待っているのは道人にとっては日常の光景となっている。今回虎城は自分のマイカーではなく、博士の貸し出し用の車で迎えに来てくれた。大樹が新たな仲間に加わって人数が増えたのと、デパートに向かう途中で虎城の妹さんを乗せる都合で借りてきてくれたのだ。
「すみません、虎城さん。今日仕事お休みなのに、手間を掛けさせてしまって…。」
道人は後部座席に座って虎城に話し掛けた。
「いえ、いいんですよ。私も潤奈さんのお手伝いをしたいですから。」
虎城は全員が乗った事を確認し、車のエンジンをかける。みんなのシートベルトの着用を確認し、車を出した。
「すみません、皆さん。デパートに向かう前に御頭小学校に寄らせて頂きますね。デパートのすぐ近くですから、すぐ済みますので。」
道人たちは全員構いませんと返事をした。
「虎城さんの妹さんっておいくつなんですか?」
道人のとなりに座る愛歌が運転中の虎城に話し掛ける。
「九歳の小学三年生ですね。私が二十四で大分歳が離れているんですよ。当時妹ができるとは思っていなかったから、生まれた時はすごく嬉しかったんです。」
「あぁ、妹は大事にした方がいいぜ。」
入院している妹がいる深也は虎城に共感した。
「ところであんた、年下にも敬語使って話すよな。何か拘りでもあるのか?」
「深也は逆に年上でも敬語喋らないもんね〜。」
「うっせぇぞ、愛歌。」
「まぁまぁ、お二人さん。」
「喧嘩は駄目さぁ。」
深也と愛歌の絡みに仲裁に入る大樹とカサエル。
「私の父がよく言う口癖で『実るほど頭を垂れる稲穂かな』ということわざがあるんです。学問や技能が深まっていくと他人に対してますます謙虚になる、という意味ですね。私はそれを志として今まで生きてきました。子供の頃の私にはこの言葉の意味が難しくてですね、なかなか理解できなかったんですよ。だから、まずは誰に対しても敬語で話してみよう、と思うに至りまして…。その時の名残りみたいなものですね。」
「へぇ〜っ、そうだったんですね…!」
道人はに為なるなぁと腕を組んで頷く。
「…今の言葉、いいね。メモしとこ。」
助手席に座る潤奈はメモ帳に今の虎城の台詞をメモしていた。
「あぁ、でも、誰に対してもというのは違いますかね。家族にはため口使いますよ、私。」
「まぁ、それはそうですよね。」
道人は虎城の言う事に返事をする。せっかくなので道人はもっと虎城に色々聞いてみる事にした。
「虎城さんのご趣味は何ですか?」
「それは勿論の事、デュエル・デュラハンですよ。後は登山と算盤ですかね。」
「わぁっ、算盤できるんですね!」
「…道人、算盤って何?」
潤奈は後ろを向いて道人を見る。
「横長の薄い箱にね、たくさん串刺しの玉がついてて、それを上下させて計算する物なんだ。」
道人はジェスチャーで算盤がどんなものか潤奈に教える。
「…そうなんだ。今度教えてくれる?」
「えぇ、構いませんよ。ふふっ、パークでの楽しみが増えましたね。」
「後、登山も好きなんですね。」
「えぇ、何か困り事や悩み事があったりした時によく登りますね。頂上に登った時の風景と達成感が私に良い刺激を与えてくれるんです。私はそれが好きでしてね…。」
虎城と話している間に御頭小学校が見えてきた。校門の前で待っている黒髪のツインテールの女の子に対して虎城は手を振った。校門の前に車を止め、妹さんを車に乗せる。
「迎えに来てくれてありがとう、お姉ちゃん!わっ!?何かたくさんお客さんがいるね。」
道人たちは妹さんに挨拶し、自己紹介した。
「初めまして、稲穂です。よろしくお願いします。」
「あっ、さっきの…。」
道人はさっき虎城から聞いたことわざを思い出した。
「そうなんですよ。どれだけそのことわざ好きなんだーって感じですよね。」
「うん、お父さんがよく言うことわざなんだよ。私はこの名前大好きなんだ。」
道人たちは笑いながら話す稲穂につられて微笑んだ。
「デパートは小学校の近くですから、すぐに着きますよ。稲穂もお姉ちゃんたちと一緒にデパート行こうね?」
「うん、行く!」
虎城は姉妹間で笑い合った後、前を向いてハンドルを握った。
「…かぁ〜っ!聞いたか、不良王?虎城さんのため口を!レアじゃ、レア!耳が幸せじゃ〜っ…!」
「そうか。そりゃ、良かったな。つか、不良王呼びやめろ。未だに。」
「喧嘩は駄目さぁ。」
道人たちは稲穂ともっと会話しようと思ったが、もうデパートの駐車場に着いた。
小学校とは目と鼻の先だ。道人たちは車から降り、デパートの入り口に立った。
「さぁ、諸君!整列!」
「整レツ!」
愛歌がサングラスをかけ、右手を上に上げると道人たちは愛歌の前に横一例に並んだ。虎城も妹と一緒に並ぶ。
「何だ、あのサングラス?」
深也は一人、愛歌のサングラスに言及した。
「今回の目的は何かね、道人君?」
「はい!潤奈の好きなミスパトという食べ物の味を再現した食べ物を探す・作るためです!」
道人は敬礼して愛歌に伝える。
「よろしい!潤奈君、ミスパトとはどんな食べ物なのか、説明を!」
「…つか、何でお前が仕切ってんだよ?」
深也が愛歌に突っ込むが無視される。
「無視かよ!」
「すまない、深也…。愛歌は子供の頃からこういう小芝居が好きなんだ…。」
「…なるほどな、さすが幼馴染。慣れてやがる。」
「…えっと、白い…地球でいう生地?で細い…麺?が入ってて…一つで色んな甘みが体験できる、温かい食べ物かな?」
「麺の入った饅頭みたいな感じなんじゃろうか?うーん…。」
大樹は腕を組んで想像する。
「そう!あたしたちは時間内にミスパトに似た食べ物を潤奈に食べさせるか!食材を買ってあたしたちで再現して潤奈に食べさせるか!それが今回のあたしたちの勝利条件である!」
「であル!」
「お姉ちゃん、あのお姉ちゃん面白いね。」
「ふふっ、そうね。」
「と言うか、愛歌姉ちゃんの後に誰か話してない?」
虎城は稲穂に気にしない、気にしないと誤魔化す。
「それでは潤奈の思い出の味を目指して、がんばろーっ!」
「おぉ〜っ!」
道人と大樹、潤奈は愛歌のノリに合わせてコール&レスポンスをし、デパートへと入店した。




