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0.プロローグ

初投稿です。拙い点が多いと思いますが宜しくお願いします。


ふ、と目を開けると眩しいほどの白に視界が染まる。


あれ?いつの間に寝たんだっけ?

半分意識を飛ばしながら歩いていたせいか状況が飲み込めない。最後の記憶は横断歩道を渡る途中にやたら近くでクラクションが聞こえたこと。


…まさか事故ったのか。慌てて体を確認するがかすり傷1つ負っていない、痛みもなくむしろ慢性疲労が取れている。

見下ろしていた視線を周りに滑らせれば上下左右壁と床も見分けがつかないほどのまっさらな白い空間にぽつりと一人で浮かんでいた。


「あ〜…なんだ、夢か。」


一体どこから寝ていたのか、確かに職場を出て家路についたと思うのだがそれもいささか自信がない。

ここ2日ほど寝てないので夢と現実の境目が曖昧だ。



「ようこそ。長い間お疲れ様でした。」



澄んだ声に顔をあげると微笑みをたたえた少年がふわりと正面に降りたった。雪のような白い肌と白金の髪でどこか浮世離れした印象を抱かせる彼は私の手を取り笑みを深める。

夢は深層心理を見せてくれるというが、美少年に労われたかったのか私は。いくら疲れているといっても情けない、今日は1分でも早く帰ってお風呂に浸かろう。絵画顔負けの微笑みを前にして予定を立てていた所に現実に引き戻す一言が降ってきた。



「申し訳ないけど、君にはあともう一仕事頑張って欲しいんだ。」



「お断り致します」



なんだ悪夢じゃないか。

毎日毎日限界まで職場に貼り付けにされて夢の中でもなお残業とか冗談じゃない!すっぱり断ると目をまんまるにして慌てふためいた少年は事のあらましを話し始めた。

なんでも私は事故死した設定らしく、これからいわゆるファンタジー世界に転移し魔物に苦しむ人々を救う聖女の()()()()()()()()()()()呼び出されただとか。

ほほーん、これは通勤時間で読んだネット小説に影響を受けているな。夢の中でさえ部下なのは悲しいかな性分として、異世界転移モノならやはりチート能力くらい持っているのだろうか。


「ちなみに人命救助が使命ならそれなりの能力は頂けるんですよね?」


「もちろん!得手不得手はあるだろうから好みに合わせて選べるようになっているよ。」



私が前向きに検討しているのに安堵した少年は嬉々として煌々と光る画面を出現させる。

RPGでよくあるスキルボードに近いそれは確かに私の名前が記されてはいるが、横に表記された異世界から召喚されし()()というパワーワードに口元が引き攣った。

その辺の変更事項を踏まえながら一番のキモ、スキルポイントの振り分けに取り掛かる。



「身体能力と魔力は最大にしておいて…へえ、魔法は属性別でそれぞれポイントを消費するのね。」



魔物と対峙する事を考えれば逃げる速さと魔法は欠かせない。

基本となるこの2つをMAXまで振っても大してポイントを消費しないのは戦う事が前提だからか。

あとは使いたい魔法だが、とりあえず死なない後方支援タイプがいいだろう。迷う事なく結界魔法と治癒魔法を最大まで上げて、炎や氷など攻撃と生活に必要な魔法にもそこそこ振ってからふとスキルを上から下まで目を通す。

魔法のみならず技術や芸術センスまでと項目は幅広い。見た目に関する物も多く髪や瞳の色を手始めに目の大きさや身長体格、果ては爪の形まで。まるでアバター設定だ。

外見の変更は意外と消費が激しいので理想通りにしたらポイントが無くなってしまう、悩んで年齢操作と肌荒れ0という成人女性垂涎のスキルだけに留めた。

その後鑑定スキルや精製スキルなど役に立ちそうなものに片っ端から加点し、趣味趣向系も取り入れながらついに1ポイントも残さず使い切った。

まあ、こんなところか。

操作も終わり提出すると確認していた少年が歓声をあげる。驚いて見れば両手を顔の前で振って謝ってきたが笑みを隠し切れないのかその口元はゆるゆるだ。懐疑的な視線に気が付いたのか、苦笑いで頬をかく。


「嬉しいんだ、こんな堅実な人なかなかいなくて…。欲に負けてしまう人も多いからね。」



確かに、外見スキルもそうだか他にも異性にモテる魅了や金運上昇など関係無いが魅力的すぎるスキルは事のほか多いように見える。

それなら初めから選択肢を与えなければいいと思うのだが、少年曰く鞭だけで人は動かない、だそうだ。

なるほど、よく分かっていらっしゃる。



「にしてもこれだけ真面目だと甘やかしてしまいたくなるね。これに無い力で何か欲しいものはある?」



蜂蜜が蕩けたような瞳に見つめられ居心地の悪さに身を捩る。自分の倍下の子供に甘やかされるとはなんとも言えない気まずさがあるが、貰えるものは貰っておきたい。

熟考の末、レベル上昇に応じて追加でスキルポイントが付与されるという超チート能力を提案してみた。

大量のスキルを取得した現時点で十分だとはわかるが、状況に応じて追加出来ればまさに最強だ。

さすがに強欲だったようで最初は渋られたが、取得できるスキルを戦闘と職業系に絞る旨を伝えると手のひらを返したように歓迎される。要は私利私欲に溺れない限りはどれだけ強くなろうが構わないらしい。



「本当に君で良かった!補助してもらう聖女は此処を旅立った子なんだけど、その…飴が多く要る子でね。とても彼女だけでは回せなくて。」



「ああ…それでアシスタントなんですね。」



元々1人で行う仕事を力不足な人材に振ってしまった場合よくあることだ。補助に回った側が割を食うことが多いが今回は追加でポイントも貰えるし、悪い話じゃない。



「人々に崇められることは無いかもしれないけど…それでもいいかな?」


「はい。あ、下僕って表現だけは変更お願いします。」



頷きがてらしっかり修正を頼むと少年は快く承諾してくれた。人格を守ってくれそうな人物でひとまず安心だ。

もともと自己顕示欲はあまり無いので今の会社より拘束時間が少なくて人間関係が良好なら日陰者で構わない。

ファンタジー世界なら繁忙期のデスマーチは存在しないはず。スローライフなんて高望みはしないからせめて人らしい生活をさせてくれる環境であってくれ…!

最後にもう一度意思の確認をされ、首を縦に振った瞬間足元からお湯が満ちてくるような暖かさに包まれた。



「ああそうだ。君の体だけど、人生のやり直しってことで10才にしとくね。」



にこりと笑って手を振った少年にしっかりと親指を立てる。10才という未来しかない響きに感動すら覚える、年齢操作バンザイだ。

そして温もりが頭の先まで満ちるのと同時に意識が途切れ、次の瞬間お尻に冷たく硬い感触が伝わってきた。

…あれ?




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