第83話 孤児院に正面から潜入してみた
―― 孤児院 テイコクダイカンゲイ ――
「キターノの町にようこそっ! 帝国の方ですか?」
受付の仕事をしていた男がランス達に気がついた。
「そうだよ、ほら、これ」
ティラは当たり前のように身分証を提示する。
「ふむ、テイラー様……、少々お待ちを」
「ティラちゃん、大丈夫なの? それにテイラーって」
「テイラーは僕の表向きの名前だよ。あのおっさん無能だし表の登録まで消しないと思うよ。」
「いや、さすがに刺客まで放ってるのに――――」
「お待たせしました。
テイラー様、本日は遠いところからはるばるようこそお越しくださいました。
どうぞ、こちらへ」
「ティラちゃんの上司が無能だった件について」
この孤児院の用途は帝国貴族達の避暑地や王国への内部工作、奴隷の密売と幅広く使われているのだ。
「すごいね、こんなに綺麗な部屋があるんだぁ」
豪華絢爛な扉の前を通りかかった。
「テイラー様、そこはスイートルームでございます。
ご案内するお部屋はもう少し奥になります」
奥へ奥へと案内され、地下の階段を下りていく。
「カビ臭いわね」
「ただいま清掃中でございます。それでは、こちらの部屋にお入りください」
──ぎいいぃぃ
男が重たい鉄の扉を開くと中は薄暗くて何があるかもよく見えない。
「真っ暗ねぇ」
「部屋の奥に松明がございますので、どうぞ奥へ……」
「これかな?」
ティラが手探りで松明らしき物を手前に引くと……
──がしゃーんっ
「やだぁっ! まだ明かりつけてないんだけどぉ!」
「あれ? もしかして僕の元上司って無能じゃない?」
『閉じ込められましたね』
「裏切り者のテイラー様、ようこそ監獄ホテルへ!」
振り向くと丁寧な言葉とは裏腹に獰猛な笑みを浮かべる男が立っていた。
「ティラちゃーん……」
「あれれ? ごめんね、おネエさん。
あっでも、僕が帝国に追われてるのってこれで信じられるでしょ?」
「そうねぇ、前向きなのか後ろ向きなのか分からないけど……」
『まさかティラさんもマスターが可愛い認定するだけで無条件に信じる人とは思わなかったんでしょうね』
「可愛いは正義よ!」
「……ランスが言うなら大丈夫」
「疑いもしなかったっす」
「えー、なんだかおネエさん達といると調子狂うなぁ~」
「ずいぶんと余裕ですねぇ、あなた達なんでしょ? ビガー達を襲っているのは……」
明るいシルバーの光沢スーツに、中にはベストを着こんだ七三分けの細身の男が薄めのサングラスを指でくっと上げた。
「ヒート様っ!」
「ああ、もういいですよ。ここは私に任せてください」
「……では!」
受付の男はヒートに頭を下げて持ち場に戻っていった。
「しかし凄いですね、帝国で有名なティラ君と王国で有名なランス君がこんなところにいるなんて」
「お兄さんは僕のこと知ってるんだぁ」
「私も有名ねぇ」
「それはもうお二人とも有名ですよ、それからそこの天狐もね……」
──ぼふんっ
「……バレてた」
「ふふふ、これでも【看破】には自信があるんですよ」
「ねぇ、町長さんもここにいるのかなぁ?」
会話に飽きてきたティラは町長の話題を出した。
「マイペースですね、もう少し優位な感じを楽しみたかったんですが……」
「町長もだけど、ユーナちゃん知らない?」
「おや、気づきませんでしたか、ユーナさんならそこにいるじゃないですか」
ヒートの指の先……、ランス達の部屋の向かい側の部屋の壁にはぼろぼろになって気絶しているユーナがはりつけられていた。




