第82話 自重を知らない町長の隠れみの
―― 冒険者ギルド キターノ支部 ――
「「「「 うぅ 」」」」
──どさっ どさどさ どさ……
ランス達は町の隅々まで歩き回り、黒いスーツ又は黒ずくめの者を見つけたらす巻きにして訓練場に連れてきていた。
ただし、三度目の出撃でお葬式に参列しようとした一般人を間違えてさらってしまったティラだけはお留守番役をすることになった。
「お帰りっ! おネエさん、暇だよぉ。暇だから一人くらい貰ってもいいかなぁ?」
おもちゃが欲しくて駄々をこねる子どものようだが、ティラが貰いたいのは人命のためランスは許容できない。
「ダメっ! 上級ポーションを当てにしてケガさせるのもダメだからね!」
「ちぇー! つまんないのっ」
「町長の取り巻きの場所が分かったら連れて行ってあげるからもう少し待ってて」
「うーん、それなら待ってるけど早くしてね」
「はいはい、じゃまた行ってきまーす」
「……こっち」
「どうしたの? リルガちゃん?」
「……ビガーに似たにおいがする」
「兄弟で体臭が似るのかしら?」
『そうですね、加齢臭だったらマスターと区別が出来ないでしょうし』
(ちょっと! 私は耳の後ろを二回は洗ってるわよ!!)
「ランスは全然臭くないっすよ。むしろいい匂いっす」
(むふーん)
『なんですか、そのドヤ顔……』
「……行くよ!」
『「あ、はい!」』
リルガを先頭に町の路地の奥へと入っていく。
「……ここでにおいが途切れてる」
「ね、ここって……孤児院?」
ずいぶんとお金がかかっていると思われる外装、窓から覗くと室内には高級の家具が揃えられており、中には受付まで設置してある。
「王都の高級な宿より下手したら豪華なんだけどっ!」
「町長、めっちゃいい奴じゃないっすかっ!!」
アーリーの町長に対する株価が上がった。
『ビーツがキターノの町長に就任して最初に作ったと言われています。その名も…………』
「…………はぁ、もういいわ。ティラちゃん、呼んできましょう」
───
──
─
―― 孤児院 テイコクダイカンゲイ ――
「ティラちゃん、ここにいるらしいわ」
「えっ!? ここって僕、前に来たことがあるよ」
「そうなの?」
「うん、帝国の偉い人がお忍びで泊まる場所なんだぁ。
僕は裏から警備する役だったからいっぱい美味しいもの食べたんだぁ」
「美味しいものは勝手に食べたのね……」
『孤児院とは名ばかりの迎賓館でしたか。
まったく自重していないとはさすが町長です』
「兄弟で我が物顔に振る舞うなんて許されないわ」
「おネエさん、早く行こうよぉ」
「ティラちゃんってバトルジャンキーなのねぇ……」
「……わくわく」
『うちにもバトルジャンキーいますよ』
「…………行きましょう。くれぐれも殺さないこと、ケガしないこと!」
「……はーい」
「はーい」
「自分はランスの頭にくっついてるっす」
『表から行くんですね』
──ガチャっ!
孤児院の重たい扉を開くと、シンプルながら一目で高級感を感じさせてくれる家具や調度品、目にも心にも優しいダークウッドやナチュラル系のカラーリング。外光が入らないエントランスでも効果的に張りめぐらされた鏡が照明をとらえ、美しく明るい空間が広がっていた。




