第8話 未来は一つじゃない
―― ザナイト騎士団 ――
「アータ……、いや、アメリアか、入れ! どうしたんだ?」
「はっ! ちち……いえ、団長がランスと……その……ごにょごにょ」
「なんだ!? はっきり言ってみろ!」
「団長の新しい扉が開こうとしている予感がしましてっ!」
「はい?」
「いえ、先ほど急にお二人の未来が見えたというか……、いえ公私混同、申し訳ありませんっ!」
(キンちゃん、アメリアちゃんに何をしたの?)
『マスターの指示通り、彼女の中にある未来の一つを見せただけです』
(そんな未来があるのっ!? えー、私だってそれは嫌だわ。略奪とかメリッサちゃんに怨まれちゃう)
「ほう、未来……ねぇ。そういえばヘッチョンの聴取があったな。このあとランス殿をお連れするからアメリアは先に牢屋に行っててくれ」
「はっ! 失礼しました!!」
「……行ったか。で、ランス……お前に聞きたいことが増えたんだが。アーたんに何をしてくれた?」
「えっ、私、知らないわよ。ただ、キンちゃんが一つの可能性をアメリアちゃんに見せたらしいわよ」
「それ、絶対お前の指示だよね? 確かに話が長くなってるのは認めるが、切り上げ方として他に選択肢あったんじゃないのか?
いや待て、それよりなによりお前との未来の中に一つでもそういう可能性があるってのが怖いわ!!
そうだ! お前さ、今度から俺と会うときは慈悲眼を使えな?」
「えー、さっき友人として美徳系は心配だって言ってくれたのにー!!」
「俺には愛するメリッサとアーたんがいるんだ! 頼む、俺に扉を開かせないでくれ!!」
「えぇ……開くもなにも勝手に私のことを意識してみんなが開いていくだけでしょう。うふ、こんな容姿でごめんなさいね?」
「いい女アピールがむかつくな。慈悲眼のペナルティ、憤怒反転でさっさとゴリラになれや!!」
「いやよっ!! アレすると髪の毛が抜けちゃうし、肌も荒れるから地味に嫌なのよっ!!」
『力の加減が難しいから嫌という理由ではないのですね』
「それにリルガちゃんがゴリラの私のことを怖がっていたし……。
そうだ、これならどお? 『まぼろし~♪』!!」
「うわっ!! これ本物のゴリラじゃねぇかっ!
ああ、幻視眼か。まあ、これなら大丈夫だろ」
「これで新しい扉が開くなら動物園でゴリラの飼育員さんに再就職しなさい」
「それ、幼児が好きだからって動機で孤児院の院長や教会の神父になる奴らと一緒じゃねぇか!!」
「どこかの大国ではとんでもない数の性職者がいるって話よ。
ずいぶん前から教会は乱れていたみたいだし、被害者がどれくらいになるのやら」
「ならねぇよ!! 流石にゴリラにときめかないわっ!
おい、それよりその子を起こしてくれ。ヘッチョンの聴取に行くぞ」
寝ていたリルガを襟巻き(子狐モード)にして牢屋に向かう二人であった。




