第16話 そのうち誰も落とし物を届けなくなる世の中になる
―― カップル専門ショップ カフェ屋 ――
ランス達がゆっくりランチを楽しんでいるとき、カフェ屋の入口で店員とぼさぼさの男が言い争っていた。
「なぁ、頼むよ。中を見るだけだからさぁ」
「ですから、ここはカップル専門店なのでお客様お一人ではお通しすることはできないんですよ」
「んじゃさ、ウーミって子、呼んでくれない? おたくで働いてるの知ってるんだからさぁ」
「……ウーミさんは勤務中ですし、失礼ですがどういった関係でしょうか?」
「どういうって僕とウーミは愛し合う仲なんだ。だから一時も離れるのが辛いんだよ。だからお店に入れてくれよっ!!」
「ちょっと、あまり騒がれましては周りの人に迷惑です。それにウーミに恋人がいるとは聞いてません。騎士の方を呼びますよ?」
「……あ? お前、僕とウーミの仲を引き裂くのか? カップル専門店なのに店員が俺たちカップルを別れさせるってのかよっ!」
──まじかよ 別れさせるとか?
周囲の騒ぎは店の奥まで聴こえ、店員が数名、表に出てきた。
「ちょっと! 何をしてるの?」
「あっ! ウーミ、今出てきちゃだめよ。……ほら、例の……」
「おい、どけ。ウーミ、僕だよ……さぁおいで」
男が店員を押しのけてウーミの前で手を広げた。
「……すみません、私……この間もつけ回すのやめてくださいって伝えましたよね? 交際についてはきちんとお断りしたはずです。それなのに、こんなとこまで押しかけられても困ります」
「お断りって……、あれはウーミが照れてただけだよね?
さ、行こう、僕たちはずっと一緒にいるべきなんだよ」
男がウーミの手を掴もうとしたが、その手は空をきった。
「っ! なんだ! あんたはっ!!」
「もう、人が幸せを満喫して出てきたら何よこの騒ぎは。お会計してぇ~♪」
「なんだ、その気持ち悪い話し方っ! ふざけてんのかっ!?」
『ふざけてますね』
「気持ち悪いのは貴方でしょ? えっと、ウーミちゃん? はこの人の好きなの?」
「いえ、こないだ落とし物を拾って渡しただけで、ずっと付きまとって来るんです! ホントに怖くてっ」
「そんな! ウーミが僕のことが気になったから声をかけてくれたんだろ? だって今まで僕の物を触ってくれる女性も声をかけてくれる女性もいなかった! ウーミ、君は僕の天使だ。ずっと……ずぅっと一緒にいよ――――」
「嫌です! 気持ち悪い!! 迷惑です!!!!」
「嘘だっ! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ………………嘘だぁっ!!
ウーミは僕の物なんだぁ、僕の物にならないのなら……うん。ウーミ、一緒に逝こう、次の世界で結ばれるために」
男はナイフを取り出してウーミに向けた。
「ひっ!」
『定番ですね、可愛さ余って憎さ百倍……マスターも気をつけてくださいね』
(いやねぇ、一緒にされるのムカつく)
「うわあぁぁーっ!!!!」
「そんなもん、振り回すんじゃないのっ♪ えぃ、背負い投げぇ~♪」
ウーミに向かって突きだされた男の腕をとってえぃ。
背負い投げでとりあえず静かにしてもらった。




