第13話 ベタな少女漫画のワンシーン
―― ランスの家 ――
──コンコンッ!
おはようございます! ホームデリバリーです、荷物を届けにきました!
『おや、宅配便が届いたようですね。リルガさん、受け取っていただけますか?あ、ランスって文字書けますか?』
「……書ける、わよ。がんばる」
『あとは僕がフォローします、さぁ、行きましょう』
「……おはよう、わよ」
「おはようございます! ゲドン様からの荷物です。
では、こちらにサインを………………はい、ありがとうございました。失礼します!」
帽子をとって礼儀正しくお辞儀をして、宅配便のお兄さんは颯爽と走っていった。
『うまく行きましたね』
「……やった、わよ」
『しっぽの揺れが激しいですよ。さあ、荷物は居間に……あ、持てますね』
変化をしてもランスそのものになれる訳ではないが、リルガは天狐族のため元々身体能力は高い。
奴隷紋のない今のリルガであればヘッチョンを簡単にケッチョンケッチョンに出来ただろう。
『ケッチョンケッチョンて。それ言いたいだけでしょ』
「……ランス、大丈夫かな?」
『もう少しかかりそうですよ。さぁ、今度は寝室のお掃除をお願いします』
「……まかせて!」
ふんすっ鼻息を荒く寝室へ行くリルガはふと気づく。
「……ランスはどこで寝てるの?」
『寝室はリルガさんが使っていますから、居間とかで適当に寝てますよ』
「……ごめんなさい」
『年頃の女の子と一緒に寝るわけには行きませんからリルガさんは気にしないでください』
気にするなといっても気にするのが道理である。
リルガは寝室を片付けて、ランスのベッドを綺麗にして自分が子狐モードならゆっくり寝れるスペースに段ボールを置いてクッションをつめた。
「……できた!」
『やっぱり気にしますよね、マスターも喜ばれるでしょう』
「……やった!」
しっぽがくるくる回転してそのまま空でも飛びそうだ。
───ドォッン! ドォッン!
ランスウウウゥゥゥ、出てこーい!!
『おや? この声は……』
「……アメリア」
『おやおや、少々、難易度が高いですね。どうしましょうか』
「……リルガ行きます!」
『そのまま出撃しそうですね、それではお願いします』
リルガは姿見でランスモードのチェックをして玄関へ向かった。
「……おはよう、わよ」
「おいっ! 貴様、昨日はよくも嫌な想像をさせてくれたなっ! お前のせいだって父上に聞いたぞっ!!」
『あ、リルガさんにこの説明は難しいですね、とりあえず……じっとアメリアさんの目を見つめてください』
「……じー」
「っ! な、なんだ、私の顔に何かついているのか?」
「……じー」
まばたきを我慢しているため、リルガランスの瞳がにじんでくる。
「いやっ、その……、そんなに強く言ったつもりはなかったんだが……」
『今です、優しく抱きしめてください』
──そっ
「なっ! おい、やめろ! ダメだ、こんなまだ昼前……。
……ん? 貴様、またからかってるな! 私から離れろぉっ!!」
「……っ!」
突然押されてしまったリルガはバランスを崩してしまい、そのまま後ろへ倒れてしまいそうになる。
「えっ!」
アメリアはとっさにリルガランスの腰に手を回して、リルガランスを支えた。
「………………っ!」 「………………」
支える女、支えられる男、とても違和感のある光景。
玄関に静寂がおとずれる……、この場にいるのは見つめ合う二人……。
「…………人の家の玄関であなた達、何をやっているの?」
そしてげっそりやつれた家主のランスだった。




