第12話 女はお花摘み、男はキジ撃ち、じゃあおネエさんは?
―― ランスの家 ――
『おはようございます、リルガさん』
「……ランスは?」
『お花畑で白つめ草の花冠を作っているそうですよ』
「……手伝う」
『ああ、残念ながら一人用でして』
──ぱたん
リルガは両耳をしょげさせてその場に体操座りをした。
『うーん、困りましたね。……また寝るとか』
──ふるふるっ
『ですよね、うーん、お掃除してもらうにしてもまだ背が低いから難しいですし』
ぴくっと耳が立ったかと思えばリルガは立ち上がり変化した。
──ぼふんっ!
「……これで良い?」
『ほう、天狐族の変化ですか。素晴らし……あっ、惜しいですね』
すらっとした背丈、ストレートのフォックステール、顔つきは少し幼く切れ長の眼は気持ちつり上がっている。
リルガ的には百点満点だと、どや顔を決めていたが予想外の待ったに不満な顔を見せる。
「……惜しい?」
『ほぼ、ほぼ、マスターなんです。ただ残念ながら……マスターにはヒゲがないのですよ』
艶っとした頬っぺから、ぴんっと2本ずつヒゲが生えている。
「……消せない」
『まあ、でも掃除をしていただく分には問題ありませんね!』
髪の毛が自然の法則に逆らってぶんぶんと揺れている。
『あ、そこしっぽなんですね。とりあえず朝ごはんを食べてください。あとで掃除道具があるところ教えますよ』
急に背が伸び、目線が変わり、自分ではない身体に初めて変化したこともあり、リルガはまだまだ動きに慣れていない。
よたよたと台所へと向かうリルガ。
『はい、そこの下にパンがあるので……、あっ、まだ火は危ないから朝はパンとミルクだけで我慢してください』
「……ご飯あるだけで嬉しい、わよ」
『無理してマスターの真似しなくても大丈夫ですよ』
「……練習する、わよ」
『……その努力は無駄にはなりませんから、頑張ってください』
はむはむっ
こくこくっ
静かな食卓が続き、リルガは食べ終わると「……ごちそうさま」と呟き、後片付けを始める。
このあとは掃除の手伝いができる、少しだけ役に立てそうだ。
黙々と後片付けをするリルガのしっぽはやはりぶんぶんと揺れていた。
『(よっぽど楽しみなんですね)』
一方、その頃のランスはトイレで燃え尽きて真っ白になっていた。
さらに時を同じく、怒りの炎を瞳に宿し完全武装でガチャガチャと音を鳴らしながらランスの家に向かう者がいた。
「私に不穏な未来なぞ見せおって! 父上の代わりに成敗してくれるっ!! 首を洗って待っていろ! ランスっ!!」
町中で、突然叫びだす見習い騎士を特に驚くわけでもなく生暖かい目で見守る町の人たちの視線に少女は気づかない。
ちなみに、ランスは第一章を終えて手を洗っているところだ。
『まだまだお腹の調子は戻らないようですね』
(うるさいわよっ!ぐぐぐっ)
ばたばたばたばた、ガチャ、バンッ!(2回目)
第二章が始まりそう。




