最終章 〜始まりの終わり〜
いよいよ本編最終章!
今まで読んでくださった皆さん、そしてブクマしている4名の方、本当にありがとうございました!
明流学園の謎解き同好会「ミステリーサークル」の活動が始まって一ヶ月が経とうとした。
幾度の謎解きをこなす会員達は夏の「ズノウクエスト」へ向けて着々と練習を積んだ。
さて、ヒロと美紅の二人はというと、ヒロからしてみればそろそろ恋人になっていてもおかしくない時期と予想していたのだが、どうにも告白することができず留まっていた。
最初の方はヒロの手助けをしていた古賀も、ヒロの度胸のなさにほとほと愛想が付いていたようだった。
「お前いい加減付き合ってくださいの一つくらい言ってこいよ。俺が保証する。絶対上手くいくって!」
「古賀先輩の保証なんて何の役にも立ちませんよ。」
「どういう意味だよ。俺の頭の柔らかさ知ってるだろ?」
「同じく注意力の程度も分かっていますから。」
「まあそれは反論できないけどな。でも、お前ら仲良しだろ。しょっちゅう二人で帰ってるし。手を繋ぐくらいはもうしてるんだろ?」
「とんでもない!」
とヒロは両手をブンブン振った。
「そんなこと出来るならもう結婚までいってますよ。」
「俺ならミスサに入った次の日には告ってるぞ。」
「先輩はそういう点で度胸ありますよね。バカ度胸。」
「先輩にバカとは何だ!」
と言ったところでガチャリと扉が開いた。
「あら、話は聞いてないけどあなたがバカなのは確かよ。」
と木坂が入って来た。
「おいおい。」
と古賀が言うや否や、さらに続いて近藤が
「そうそう。バカだね。」
次は松戸が
「バカなのは間違いない。」
終いには美紅も
「いい意味でバカですよ。」
と言って入ってきた。
「てめえらいい加減にしろよ。俺は天才だからな。」
「まあ確かに天才なのも認めるわ。でも天才とバカは紙一重よ。あなたはまさにその紙面上ね。」
「その通りだな!」
と松戸も言った。
納得のいかない顔をした古賀を置いて、松戸は真ん中の机にすわった。
「さてと、実は先ほど顧問から手紙を預かった。とはいえ差出人は顧問ではない。書かれていない。顧問から『全員で見なさいと伝言があった』といわれた。そういうことだから集まって。」
と言って、机に手紙を置いた。
fig17. 手紙
手紙の表には「ミステリーサークルへ」と書かれていた。
「よっしゃ、俺が読んでやるよ。」
と言って古賀が松戸から取り上げて中身を取り出し読み始めた。
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親愛なるミステリーサークルの精鋭たちへ
拝啓
太陽も長く照り続ける日々が多くなってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
五月が終わりに近づくにつれ、梅雨がやって参ります。それが明ければ七月。いよいよズノウクエストの開催です。今回のズノウクエストは私のアシスタントである三橋もスタッフとして参加しております。彼曰く最高の冒険を提供出来ると。
私もデバッグとして実際に問題を解いて、実際に足を運びました。移動時間があったのも一つの理由かもしれませんが、十時間以上かけてしまったことは情け無いことであります。しかし、それほど充実した謎解きであることの証明ではないかと、我ながら思う次第です。
既に謎解き自体は概ね完成されていますが、もうしばらく調整が必要である為、休みがないと三橋は嘆いていました。
さて、皆さん方もおそらく参加することと思います。いえ、参加しなくてはなりません。ズノウクエストで結果を残してこそ、我らがミステリーサークルの存在意義であり、存在価値であるからです。
特に、今年は新入生二人が入ったと顧問から伺いました。恐らく精鋭であることと思います。陰からではありますがお二人の成長と活躍をお祈り申し上げます。
ここからはかつての仲間にメッセージを送りたいと思います。
木坂さんはいまもサークルにいるでしょうか。あれほどの雰囲気の中、一年間活動し続けた木坂さんですから、今ではサークルで不可欠な存在かとお察しします。
古賀くんはサークルの太陽ですからしっかりと照らし続けていることと思います。木坂さんに怒られないよう、柔らかさ以外の部分も今年は高めましょう。
近藤くんは古賀くんの相棒ですから、その役目を果たし切っていただきたいと思います。古賀くんは使い方次第では神にも悪魔にもなる存在です。それを使いこなせるのはミステリーサークルではあなただけであると私は思います。あと、私が招待するツアーに参加された暁には、また食事でも行きましょう。あなたとは募る話がありすぎる。招待されればの話ですが。
そして松戸くん。君が会長になったということも伺いました。知力・体力・判断力・決断力、、、あらゆる点に万遍無く満たされたあなたの才能はミステリーサークルに無くてはならないものです。いずれはあなたも今より深い謎解きの世界へ来るのではないかと心待ちにしています。自分の感性や直感、知識や知恵をいつまでの大切にしてください。
最後に、ミステリーサークルの皆さんがズノウクエストで大いなる活躍をしてくださることを、心よりお祈り、もとい、楽しみに待っております。
敬具
五月××日
コウサカナゾノモリ管理人 香坂新賀
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「だとよ。」
「香坂さんが懐かしいな。」
と近藤は目を細めて天井を見上げた。
「そんな言い方じゃ死んだみたいだろ。」
と松戸は近藤の肩を突いた。
「それにしてもズノウクエストが待ち遠しいですね。一刻も早く東京の街を駆け巡りたいですよ。」
とヒロが言うと美紅が頬杖をつきながら話した。
「言うのは簡単だけど結構大変よ。ただでも東京の駅なんて迷路みたいなのに。そこに謎解きが入ったら大変なことよ。永遠に出られなくなるわ。第一体力が一番心配よ。」
「体力ないのか?」
「ええ。マラソンも最悪だわ。人生で下から五番目よりもいい順位を取ったことがないわ。」
「それは…確かにひどいな…」
とヒロは呆れた。
「まあ、心配することないわ。一位がいれば最下位もいるのが戦いよ。私だって体力はあまり自信ないけど、大切なのは謎解きだからね。」
と木坂は美紅を慰めた。
「ありがとうございます…みなさんの迷惑にならないようにだけ頑張ります!」
と両手の拳を胸の前に立てた。
古賀はヒロに
「さっさと告れよ。取られるぞ。」
と囁いた。
普通に聞こえたが、聞こえてないふりをした。
数日後の放課後、掃除終わりで少しだけ遅れて視聴覚室に入ると既に全員が集まっていた。
「ごめんなさい、遅れました。」
「おお、いいんだ。香坂さんからまた封筒が来た。」
松戸が封筒を開けると中からは手紙とチラシとチケットのようなものが入っていた。
「仕方ない、また俺が読もう。」
と再び古賀は手紙を取り上げて読み始めた。
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ミステリーサークルへ
前略
これは私からの贈り物です。大会前の交流会が日曜日に、その週の土日で本番です。その間の一週間、日曜から日曜までの宿泊先のホテルを手配しました。快適な空間であると思います。男性・女性で部屋を分けました。洋室と和室のある気持ちの良い部屋です。ぜひご堪能ください。それともう一つ贈りましたのは新幹線の乗車券です。飛行機よりも遅いですが、帰ってその方が合宿のような雰囲気を味わえるのではないかと言う御節介です。交流会は夜ですから贈りました便で行けば十分に間に合うかと。お金の出どころはコウサカナゾノモリ本部であり、私のポケットマネーではありませんから心配していただかなくて結構です。そのかわりと言ってはなんですが、活躍してくれれば嬉しい限りです。
草々
コウサカナゾノモリ管理人 香坂新賀
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「ってことは、これ貰えるのか?」
「そう言うことだな。」
と松戸は宿泊先の案内を開いた。
「トウキョウウラヌスタワーホテルか。部屋番号がある。確かデカいホテルだったような記憶が…」
「今調べるわ。」
と木坂はスマホでホテルのサイトを出した。
「まあ、とても大きいわね。部屋は…十四階?あらあら、こんなところに泊めてもらっていいのかしら。」
「あ、俺も見たいです!」
とヒロは木坂のスマホを覗き込んだ。
その部屋の豪華さは小さな画面からでも十分に伝わった。部屋は半分が洋室、半分が和室である。飾られている花瓶、ライトスタンド。置かれているソファ、テーブル、ベッド。全てが大きかった。白を基調とした部屋は美しく保たれ、画面の中へ飛び込みたいとすら感じた。
「さすが香坂さんはやることのスケールがパネェな。」
と古賀も自分のスマホを見ながら言った。
「いよいよ逃げられないね。ちゃんと成績を残さなきゃならんぞ。」
と近藤は新幹線のチケットを見ながら言った。
「私も早く行きたくなっちゃいました!」
「まあまあ、美紅ちゃん同様全員そうだな。とは言え、まだ本番までまだまだだ。それまではしばらく、謎解きしまくるしかないな。」
と松戸は言った。
長く短い高校生活。ヒロは早くもその佳境を見据えていた。
ズノウクエストの先にあるまだ見えない、そしてどこまでも広がってるであろう謎解きの世界を感じた。
ヒロのミステリーライフはまだまだ序章に過ぎない。
最終章とはいえ、明日にでも2ndシーズン始めて行きます!
次はいよいよズノウクエスト。ミステリーサークルが始めてチームで挑むイベントです。
その結末やいかに…
そしてヒロと美紅に恋愛の進展はあるのか…!
乞うご期待!!




