Love for ever
「この街も三十年ぶりか」
『彼女は元気でしょうか。
私達に新たな始まりを与えてくれた彼女は。』
「うーん、如何かな…
この街に来る前に寄った、
ゴブリン村にはもうあの二人は居なかったからな…」
『そうですね…
でも、ちょくちょくあの二人には会っていたので
其れほど寂しくは無いですよね。』
「あぁ、そうだね。
この仮面を付け始めてからは
俺の事は【仮面の異邦人】とか
【変態仮面】とか呼ばれてるからね。
外見で年齢が可笑しいとは思われなくなってるし。
寧ろ世代交代を疑われている始末。
…まぁ、あの二人にはバレバレだったけど。」
『フフッ
けど、黙っててくれましたよね。
しかも、二人の子供も可愛かったですし。』
「あっ!
過去形だぞー?
今は立派に村の代表役に納まって貫禄は出てるけどさ。」
『フフッ
…聖女ちゃんは元気でいるといいですね。』
「うん、一度も再開せずに終わるのだけは嫌だね。」
……
…
コン コン
「…どうぞ」
「聖女ちゃん…
俺だけど判るかな?」
「……その声は
ケントさんですね?」
「!!
覚えててくれて嬉しいよ。
あと、無事再会できて喜ばしい限りだ。」
「フフッ
私も再会できたことは喜ばしいですが、
この様に私が臥せったままの再会は
非常に心苦しいと言わざるを得ません。」
「いや、俺にとっては
君にまた逢えただけで望外の喜びだよ。
其れに君も案外矍鑠としているみたいだしね。」
「フフフッ
こんな年寄りを口説いても何も出ませんよ。」
「……君は綺麗だよ。
どれ程年を重ねようが、滲みだす美しさは隠し切れない。」
「……
フフフフッ…アハハハッ」
「………」
「…だから…
こんなお婆ちゃんを口説いても…
何も…良い事は…ありませんよ?」
「…外見だけの事を言ったつもりはない。
俺は各地を回っている時でも
この街の噂位は自然に耳に入って来た。
其れほど、君の企ては大それた改革だった。
革命と言っていいほどの。
…さっきこの施設を見学したけど、
是が君の言っていた理想なんだね。」
「……そうですか。
大それた改革とおっしゃいましたね?
噂では如何いった話が流布されているのか
把握し切れていませんが、
其れはもう血が滲む程の…
…当初は仮面を付けてくれる人も居ませんでした。女性側が付けてくれても今度は男性側が。漸く軌道に乗り始めたと思っても次は仮面姿は犯罪者扱い。其れが沈静化しても子供を連れて蒸発する人や子供の親の権利を主張しだす人、駆け落ちして行く人達まで。其れ等はまだ軽い方です。子供達が仮面っ子などと揶揄されたりして、親が子に逢い辛い状況を作られた時は無惨でした。
そういった経緯を経て、
心が擦り切れてしまう程の改革と成りました。
やはり、姉様がおっしゃっていた事は正しかったのだと
幾度も思った事か…
その結果が、今の私の状態なのですが。」
「……聖女ちゃん。
俺は君の前から…大事な時期に
姿を消した陸でなしに見えるのだろう。
だから、俺からは何も言えないけど――」
「ケントさん。
其れは違いますよ。
貴方は何時でも私を助けてくれました。
…あの仮面。
今も付けてくれていますよね?
貴方の噂は総て聞き及んでいるんですよ。
良い噂から耳を疑うような噂まで…
【仮面の異邦人】【仮面の貴公子】【仮面男子】【変態仮面】【仮面瞬動】
色々な名称で貴方の活躍を耳にする度に
私は何よりも勇気付けられました。
ですから、その様に言われるのは心外です。
ですから…ちゃんと褒めて下さいね?」
「……君は頑張った。よくやった。
誰にも成し得ない事を
君は成就させた。
未だ安定しているとは言い難いけど、
君は立派に役目を…理想を叶えた。
だから、安心していい。
だから…今度は俺が約束を守る番だ。」
「……ケントさん。
はい、貴方の秘密を教えて頂けますか?」
「勿論だとも。
…と言っても、信じられないだろうけどね。」
「フフフッ
其れは最初に巡り逢った時より
解っていますから大丈夫ですよ。」
「そうか……
俺は、この世界の人間じゃない。
しかも、俺は人の身為らざる者でもある。
無論、高次元生命体では無いけど。
要するに半端者なんだよ。
其れが理由で不老不死でもあるんだ。」
「……
この世界の人間では無い事は解りました。
高次元とは別に違う世界があるのですね?
ですが……
あ…そうですか。
貴方が不確定な存在なのは、
シスターシャ様の影響ですね?」
「……君は察しがいいね。
以前も思った事があったけど。
大体その通りだよ。
これ以上は説明できそうにないから
申し訳ないんだけどさ。
まぁ、今は元の世界に戻ろうとしている所なんだ。
それが頗る上手く行ってない訳ですな。」
「そうですか……
いえ……是だけで十分です。
……あぁ……
是で…想い…残す…こ…とは
ありま…せん…
……嗚呼、其処に居らっしゃるのは
――ナターシャ=シスターマ様でしたか……
生前よりも尚輝かしくも美しいですね―――――――――――――――」
「聖女ちゃん……」
『彼女は最後の力が尽きてしまったのですね…
気力が…ケンタロウ君に逢う望みが叶って
張っていた気力が尽きたのでしょう。
其れだけ、貴方に逢いたかった…
私はそう思います。』
「ああ。
俺もそう思う…思いたい。
だって、こんなにも安らかな表情なんだから。
其れに最後、君の本当の名前を呼んでた。
其れについては覚えがあるからいいとして、
もしかしたら君の事も―――」
『誰か身罷られたのですか?』
「!!
君は……
聖女ちゃん!?」
『?
私に名前はありません。
司る事象は≪生死≫。
……何故か貴方とは繋がりを感じますが…
其れに其方の方は…私と同じ高次元生命体ですか。』
『!!
私の事も見えるのですか?
しかも、翻訳が必要ないみたいですし…』
「シスターシャの事も見えてるのか?
って事はやっぱり、
この人は聖女ちゃんが高次元に至った存在…」
『申し訳ありません。
私は生前の記憶を失っております。
貴方は生前の縁者の方でしたか?』
「いや、そうではないよ。
けど、生前の君の事を感謝してもし切れない者ではある。」
『そうですか…
何か事情がお有のご様子。
私で良ければ伺いましょう。』




