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アルディア戦記 ~少年はやがて皇帝になる~  作者: wok
異世界テレシアへ

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第4話 サネユキ

「おかあさん… みず————」


アキトは朦朧とする意識の中で小さく呻いた。身体が少しだけ動いた。


「アキト、大丈夫だ。私がなんとかしてやる!」


「少し、待ってろ!」


カン、カン、カン、カン、カンッ


ナガトは艦橋を早足で駆け下りた。


ナガトは走りながら考えた。


あれは脱水症状だ。だが、この艦には水がない。


助ける方法は一つしかない。私の血を飲ませることだ。


だが、神の血を人に与えることは日いづる国では禁忌だ。


しかし————


その方法でしかアキトを救うことはできない。ならば躊躇うことはない!


ナガトは艦隊司令部のあった区画へ入った。


そして、ある木の柱を強く叩いた。


ガツンッ パキッ


木の柱の一部が割れて、その中には一振りの日本刀が入っていた。


ナガトはそれを手に取り、急ぎ艦橋へ戻った。


「アキト、今から私の血を飲むんだ!」


ナガトは大きな声で言い放つと、持ってきた日本刀を抜き左手の手首を軽く切った。


ナガトの手首から鮮血がしたたり落ちる。


「でも…」


アキトは戸惑う。


「アキト,ためらうな!私は戦女神だ、この程度大したことではない!」


ナガトは左手首をアキトの口へ押し付けた。


アキトはナガトの気迫に押されて、少しずつ飲み始めた。


ゴクッ


小さなのどぼとけが上下に動いた。


「よしっ、そのまま飲み続けろ!」


アキトは十分ほど血を飲み続けた。


次第にアキトの顔に血の気が戻ってくる。


しばらくするとアキトは起き上がった。


「ナガトさん、ありがとう」


アキトはナガトにお辞儀をした。


「ふむ、元気になったか。あと"さん"付けは不要だ。ナガトでよい」


「わかった。ナガト」


アキトはナガトが持っている刀に気が付いた。


「ナガト、その刀は?」


「ああ、この刀はこの艦が建造され始めた頃、ある海軍参謀が資材にこっそり忍ばせていたものだ」


ナガトは目を瞑りしばし考えた後、アキトに告げた。


「この刀の名は"サネユキ"と言う」


「サネユキ?って言うんだね」


アキトはサネユキを見つめた。サネユキは一瞬青白く煌めいた。


◆ ◆ ◆


グゥゥゥゥゥゥゥゥ————


アキトのお腹がなった。


「ふむ、人は何かを食べねば生きていけない。しかし、この艦には食べ物がない」


「ゆえに私は海に潜り魚を取ってこようと思う」


「アキト、サネユキとともに少し待っててもらえないか?」


アキトは頷いた。


「うん、早く帰って来てね。ナガト」


アキトは小指を差し出した。ナガトは小指をアキトの小指に絡ませた。


「ふむ。少し艦を止める」


ナガトはアキトにサネユキを預けると艦橋を駆け下りた。


三十分後————


髪と服を濡らしたナガトが艦橋へ帰ってきた。手にはタイのような魚を握っていた。


「ナガト、大丈夫?」


アキトが心配そうな顔をする。


「問題ない。それよりアキト、サネユキを持って私の後について来てくれ」


アキトは頷くとナガトの後ろに着いていった。


アキト達は長門の烹炊所ほうすいじょへついた。


烹炊所には、固定された調理台があるだけだった。


ナガトは調理台の埃を取り払い、台の上に魚を置いた。


「サネユキを貸してくれ」


アキトはサネユキを手渡した。


ナガトはサネユキを抜き、刃で魚を捌きはじめた。


シュー、シュー、ザクッ、カカカッ


数分後、台の上には魚の刺身が出来上がった。


「まずは私が毒見をしよう」


ナガトは刺身を一切れ摘まむと口にいれた。


刺身はコリコリッとして少し甘みがあった。


ナガトは人が食べても害のないものであると確信した。


「よし、アキト。刺身を食べるんだ」


「うん」


アキトは刺身を手で摘まみ口に入れた。


「おいしい」


アキトはつぶやいた。


「そうか、よかった」


ナガトは微笑んだ。


◆ ◆ ◆


2日目もアキトはナガトの血を啜り、魚を食べて命を繋いだ。


3日目の朝————


ついに大陸が見えた。



続く

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