第十七話 全自動掃除機のようなら、、、
もんどり作戦が行われる大宮公園入口付近まで走ると、自衛隊、消防、現場の作業員達が呆然と脇で立ち尽くしていた。
何日も続けて頑張ったのに、今の進路ではこのもんどりには入らないのだ。
出来てからその連絡を貰ったのならそれはそうなるだろう。
次に切り替えて頑張れる気力が残っているようにはとても見えなかった。
千尋は荒木教授の言葉を思い出していた。
荒木『まるで全自動掃除機のようだね』
夫の浩は
浩『孔は意外と単純な装置なのかも知れないよ』
と言っていた。
そうよ、全自動掃除機なら周りにセンサーかついていて壁にぶつかった時にそこで向きを変えている。でも縁にはセンサーなんかない只の漆黒の孔だ。
でも何処にそのセンサーが、、、。
室井博士は
室井『自身の半径よりも多くを海の上には晒さない〜』
と言っていた。
つまり孔のセンサーは孔の縁ではなく裏側の中央付近にあるはずだわ!
立ち尽くす人々の中に赤坂の映像で見た現場監督がいた。
千尋が駆け寄り話しかける。
千尋「政府危機管理本部の片瀬です。掘削をして頂いてた方ですよね?」
植松「は、はい」
千尋「赤坂では本当に残念でした。作業員の方のお悔やみを申し上げます」
植松「ありがとうございます。しかしあなたのような若いお嬢さんまで参加されてるんですね」
千尋「私は当初必要かと思われた地質学の研究員だったのですが今はそのまま参加してました。もう子供もいるおばさんですよ」
植松「ならば教えてください。私の部下だったのですがあいつのかみさんに何て話せばいいのか、、、」
千尋「まだ伝えてないのですね」
植松「はい。でもここが失敗したら伝えなくてはなりません。あいつの所はまだちっちゃいのが3人もいるんですよ」
千尋「それは、、、。ならば奥さまとお子様には、勇気を持った素晴らしい父親だったと伝えるしかないでしょう」
植松「、、、」
植松は涙を堪えられなかった。
ここで対処の可能性があるなら、、、。
千尋「現状確認ですが、新しい進行予測線は正確に判りますか?」
鼻水を一度すすってから植松が答える。
植松「先程、自衛隊から聞いた話では右に48m程ずれてます」
それもう私の実家の真正面じゃない。
でもあそこなら、、、。
千尋「この先に小さな児童公園があります。そこの進行予測線上に人の入れる深さの溝を掘れませんか? 人が入れれば良いのです。上手くすれば孔の向きを変えられるかもしれません。それと消防の方も、、、」
植松「孔の向きを変えられるのですか? 人が入れる位ならすぐだ。お~い、隊長さん!」
自衛隊の方が走って来た。
陸自隊長「どうしました?」
植松「政府危機管理本部の片瀬さんが孔の向きを変えられるかも知れないと」
陸自隊長「直ぐに本部に連絡して何でもやりましょう。大宮消防署の方は?」
大宮消防署・水樹「はい」
片瀬「この先の児童公園で放水の準備をお願いします。放水車両は孔の進路から離してください。私が危機管理本部へ連絡します」
水樹「判りました。消防隊員、直ぐに準備に掛かるぞ!」
◇◇◇◇◇
千尋『荒木教授。大泉防衛大臣はいらっしゃいますか?』
荒木『ああ、ちょっと待って』
大泉『大泉だ。片瀬くん、どうした!』
千尋『大臣、穴は全自動掃除機のように水で向きを変えます。半径以上を水に晒さないなら感知するセンサーのような部分が孔の裏側中央付近にあると思うのです』
大泉『裏側と言ってもどうするのだ』
千尋『通過する近くの児童公園に人が入れる溝を掘って感知するセンサー部分に直接放水して向きを変えてみます』
上手く向きを変え半径以上のズレを直せればもんどり罠に入るかも知れないのだ。
大泉『まさか、君が孔の下に入るのではあるまいな?』
片瀬『どんなセンサーか判らないので放水にも確認が必要です』
大泉『ダメだ! 片瀬くんも赤坂の作業員を見ただろう。自己犠牲ではならないのだ。人命に関わるような危険な作戦は許可出来ない』
片瀬『ここで止められなければ日本は壊滅ですよ。それに室井博士らの観測で地下は大丈夫なはずです。つまり孔の下は大丈夫です!』
かなり無理やりな意見だと千尋自身も思った。
大泉『判った。現場の指揮は片瀬くんに任せる。後で陸自隊長に連絡を入れておく』
片瀬『出来るか判りませんが、私の実家が丁度孔の通過する正面なんですよ。なのでちょっと頑張ってみます』
大泉『おい。まあこんな時にそれだけ言えれば大丈夫だな。やるだけやってみてくれ。危険な事は禁止だが失敗しても構わん』
片瀬『はい! ありがとうございます』




