ダーク・ダーク・ナイト
......11月って何も行事ないよな。そんな事ないって?いやいや、そんな事あるって!だって【No】vember、だしな!......
そんな事言ったやつは誰だ。俺か。しょーもな!
激シブギャグは記憶の奥底に封印するとして、実際11月は学校行事がマジで無い。せいぜい2学期末考査が最終日からあるぐらいだ。つまらんなー。
「つまらんなー」
「なんだ、蓮。試験はもうすぐだぞ?ここが踏ん張りどころだ」
「仁は頑張りすぎだって。俺はもうダメだ」
仕方ないので、俺は図書室で勉強会をしている。時間がたっぷりある放課後、しかも仁の解説ノート付きでやる気が出ないんだから、もうどうしようもない。中間考査で英語は赤点ギリギリだったからなあ。
まさか(東どんちゃら大)の問題が出るとは思わなかったからな。……ありえん。お爺教師恐るべし、だ。今回はどこのが出るんだろ?もう(オックスふんふん大)とかじゃね?
「れーちゃん、頑張って!私は数学に生きるから!」
「紗奈は英語を……いや、いいか。後で空間ベクトル教えてくれ」
「了解ですっ!」
紗奈も一緒だ。恋も勉強も頑張らなきゃねっ!なんてこの前言っていたので、仁に許可を取って誘ったのだ。……紗奈は数学以外の科目にあまりやる気を見せていないが。
ま、だらけ気味でもやるだけマシなはずだ。そう信じ、俺たちは3人で完全下校時刻まで試験勉強をして帰る、という模範的日々を送った。香織も家でちゃんと勉強しているらしく、帰ってきてもリビングに居ないことが多かったな。
それでも夕飯の時間になると、呼ばれて出てきてお兄ちゃーん!……そんな感じの日々が続いた。
考査まで後2日、今日もいつも通り真面目にテキストをこなし、帰路に就く。家に着くと、香織が久々に出迎えてくれた。
「お帰り、お兄ちゃん!……ふあ……ぁ……ふぅ」
ん、大あくび。最近ちゃんと寝てるのか?心配なので、聞いてみた。
「あんまり寝れてないなあ……。あ。そうだ!ねえお兄ちゃん、一緒に寝たら私が寝たって分かるから安心だよね?それに、夜は冷えるし……ねえ、一緒にぬくぬく、しよ♡」
なんて甘い声で言った。……兄としては妹が心配なので、その提案を受け入れた。別に甘やかすってわけじゃないからな!ただ心配ってだけだから!もうねー、ウルウルした目でお願いされたら断れませんって!
あっという間に寝る時間になった。流石に香織の部屋のベッドは狭いので、俺の部屋に。
最初は背中合わせでベッドに入ったが、香織はすぐに向きを変え、後ろから抱きついてきた。
押し付けられた胸がむにゅりと形を変える。
甘い吐息が首元を通り抜ける。
布団に潜り、俺の足を両方の太腿で挟んでくる。
そしてそのまま、ずり上がってはずり下がる。
2人の身体が熱を持つ。深く眠るはずだったのに、かえって呼吸が浅くなっていく。
……このままじゃ眠れない。生活に支障が出てしまうな。やっぱり別々に寝ようか、と言おうとして、香織の方を向く。
「えへへ、まだ起きてたんだね♡」
「あ、ああ。やっぱり別々に寝ないか?その、眠れなくて」
「そう……じゃあ、おやすみしよっか」
香織はそう言って俺の肩を掴む。
「香織?」
「お兄ちゃん、おやすみっ……」
唇に、柔らかいものが当たるのを感じた。
それが何か、俺には分かっていた。
一瞬だったが、湿っていると分かった。
甘い空間が歪んでいった。
もっと味わいたい、なんて。思ってしまった。
「……それじゃ、また明日♡」
すっかり暗闇に慣れた目は、香織がにっこりと笑い、俺の部屋から出て行く様子を捉えた。
また明日、か。待ち遠しい。……いや、何考えてんだ!妹だぞ!
『私はお兄ちゃんの妹だけど、本当の妹じゃないんだよ』
あの告白が頭をよぎる。ああ、顔が熱くなる。……いや、忘れるな!紗奈は大切な恋人で、香織も大切な……。
いや、もって何だよ。
頭は冴えているはずなのにな……もう早く寝てしまおう。布団を被って、取り敢えず目を閉じる。……甘い匂いがする。
『お兄ちゃんは私の本命なの……』
本命チョコレートは、思考が蕩けるほど甘かった。




