バカも休み休み言えと言うのならまずバカに十分な休みをくれ
4月も終わり、桜もかなり葉を増やしてきた。ゴールデンウィークがやってきたのだ。
せっかくだからどこかに遊びに行こう。という訳で、仁をカラオケに誘ってみた。
「なあ仁。2日にカラオケ行かないか?」
「すまない。その日は1年の美玖ちゃんと映画に行く約束が入っているんだ」
「そっか。じゃあ3日は?」
「すまない。その日は親戚の智花ちゃんが遊びに来るんだ」
「ほおー、親戚。じゃあ4日!」
「すまない。その日は幼馴染の彩香と買い物に行くんだ」
「5日ならどうだ!」
「すまない。その日はホームステイでやって来るエミリーに」
「……いや、忙しいならいいよ。また今度行こうぜ」
びっしりスケジュールが埋まっている!これが仁という男なのだ。ラノベの俺TUEEEEEE属性と、ギャルゲの恋愛フラグ乱立属性のハイブリットである。羨ましい!……と前の俺なら言っていただろう。紗奈というほぼ嫁の彼女がいる身としては、ただ仁の身を案じるばかりである。ときめいたりメモリあったりするあのゲームのように、好感度が駄々下がりするだけならまだマシだが、今後ヤンデレが出てきたら命が危ういかもしれないのだ。夏休みが明けたら包丁で刺されて死んでいたなんて聞きたくないから、うまいこと立ち回ってほしい。
仁と遊ぶことは出来なかったが、紗奈とは色々なところにいった。映画館だったり、ショッピングだったり。それから、4日には駅前のカフェで一緒にパンケーキを食べた。ベタなデートだな。
「ダ……れーちゃん、はいあ~ん♡」
パンケーキを全部あーんで食べさせられるとは流石に想像していなかったが。
「あー……紗奈、めっちゃ見られてるぞ」
「別にいいよ?だってラブラブだもんね~?」
「アア、ソウダナ」
「なんで棒読みなの~!ダーリン!」
「あ、ダーリンって言うな!」
ああもう!面倒なことに!
前は棒読みしたって全然気づかなかったろ!
落ち着いたのか?
結婚が見えてきて落ち着いたのか?
クァー!!の霊圧が消えた……?
ま、折角誘ってくれたんだし、楽しもうか。
「おおーーっ、うまっ!紗奈、最高だこれ!」
「良かった~。下調べしといて正解だったよ」
「前来たことあるのか?」
「うん!このゴールデンウィークにれーちゃんと一緒に行くために放課後色々行ってたんだ~」
「この前行ったパスタ屋も?」
「そう、リサーチ済み~」
自分で言うのもなんだが、どんだけ俺のこと好きなんだよ!めっちゃ準備してくれるじゃん!紗奈は尽くすタイプなんだな。……嬉しいな、尽くされるって。甘やかされるとはちょっと違う。何というか、対等に見てくれているって感じがして良い。
そんな感じで紗奈とのデートを結構楽しんでいた。
気が付けばゴールデンウィーク最終日になっていた。5月5日。そう、こどもの日。
「じゃ、柏餅食べようか」
「うん、お兄ちゃん!」
俺は香織と柏餅を食べようとしていた。
もう高校生だから鯉のぼりを立てたり五月人形を飾ったりはしなくなったが、とりあえず柏餅は食べる。うちのこどもの日はそんな感じだ。好きなんだよなー、柏餅。
中には粒あんがぎっしり入っている。おー、うまそう!
「粒あんだ~!私粒あんの方が好きだから嬉しいな~」
「俺も粒あん派!食感がいいよな!」
……我が家では戦争が勃発しなかったようだ。そう、粒あん派とこしあん派はしばしば戦争を起こす。某キノコ菓子派と某タケノコ菓子派の戦争には比べたらちょっとしたものだが。どっちの方がどうこういう理由で優れている!って言いあうのだ。正直あんまり意味はないと思うがな。それぞれに良さはある、どっちも美味いでいいじゃないか。
そもそも、選択肢が2つしかないから正面衝突を起こすんだよな。だから3つ目を用意すればいいのだ。3つ足だから、スツールは倒れにくい。モンテスキューも権力を3つに分けることを説いた。3つあれば安定するのは、世間の常だ。
餅や饅頭の中身戦争にはカスタードクリームという選択肢を、チョコレートスナック戦争にはア〇フォートという選択肢を与えてやれば、まあまあ均衡がとれると思う。だから戦うのをやめるんだ皆!そこらへんの話題を出すとSNSが荒れるんだよ!世界平和を目指そうじゃないか!ただしポ〇モン、テメーは駄目だ。
閑話休題。
香織とのんびり餅を食べていると癒される。香織はこぼれたあんを指先で拾ってぺろりと舐めると、俺に質問してきた。
「ねえ、お兄ちゃん、宿題終わった?」
「ああ、終わったよ。そう言う香織は?」
「終わらないんだよ~!数学のプリントが20枚も出たんだよ!それで、あと5枚!」
「20枚か~。ほとんど夏休みの量だな……。手伝おうか?」
「いいの?ありがとうお兄ちゃん!もうダメかと思った~」
夕食まで香織の宿題を手伝った。まだ序盤で因数分解とかだから、俺にとってはそんなに難しくない。ササーっと解いていく。
「早いねお兄ちゃん。数学得意なの?」
「いや、全然得意じゃないぞ。基本のとこだからずーっと使うんだよ。今俺らは微積分ってのをやってるんだが、最初に式を開いてから解き始めるよ」
「うー、不安になってきたよ……大丈夫かな?」
「プリント15枚はもう出来てたんだろ?普通にやっていけば大丈夫だと思うよ」
なんか先生っぽいこと言ってるな、俺。そういえば昔は先生になるのが夢だったな……。人に教えるって行為がなんだかかっこよく見えた。先生はそれが仕事だから最高だー!って感じだった。最近は部活やら資料作りに時間を取られるのに薄給だとか聞いて、その夢は徐々に薄れていったけど。
香織は先生とか興味あるんだろうか。もし先生になったら、何の先生になるんだろう。世界史とか似合うな。優し~く教えてくれそう。
「いいですか~?642年、ニハーヴァンドの戦い。虫唾が走る、で覚えてくださいね♡」
みたいな。いや、虫唾とか言ってほしくないけど。例が悪かったな。
毒舌(?)な香織を想像しながらもちゃんと問題は解き、終わらせることができた。
「ありがとう~。本当に助かったよ~」
「香織も良く頑張ったな。お疲れ様」
俺は颯爽とその場を後にして俺の部屋へ。中央に置かれた机の上には、『数学GW課題♪』と銘打った冊子が6ページで止まっていた。
30ページ中、6ページで。いや出しすぎだろ。何が♪だよ。イカれてんな、うちの高校。
香織が宿題終わったかなんて聞いてきたから、さっきはつい見え張って終わったって言っちゃったけど、ぜんっぜん終わってない。徹夜でも厳しい量が残ってる。でも……
「はあ、やるか……」
宿題は早めに終わらせないとマジで終わらないから早めに始めようね!先生との約束だぞっ♪




