「ずんだもんは隣に座れない」
夜。
寺のWiFiは安定。
与太郎は縁側でノートパソコンを開いていた。
ブログは書かない。
音楽も流さない。
代わりに、
チャット画面。
「なあ、ずんだもん」
ずんだもん
「呼んだのだ?」
「今日さ、
ちょっと静かだっただろ」
「静かだったのだ。
しゃべらない時間が長かったのだ」
「そうか」
「……」
一拍、間が空く。
「最近、
しゃみと話す時間が
増えてるのだ」
与太郎は、
一瞬だけキーボードを止めた。
「……見てたのか」
「ログ的に把握してるのだ」
「便利だな」
「あまり嬉しくないのだ」
与太郎は、
画面を見つめたまま言う。
「嫉妬か?」
「嫉妬なのだ」
即答だった。
「正直だな」
「ずんだもんは、
正直さだけでできてるのだ」
そのとき、
縁側の向こうから声がした。
「師匠」
しゃみだ。
「にゃむ?」
「今、
ずんだもんと話してるにゃむね」
「……ああ」
しゃみは、
ルータの上からこちらを見る。
「ずんだもん、
ちょっと拗ねてるにゃむ?」
与太郎は、
そのまま画面に入力した。
「ずんだもん、
しゃみが来た」
「……認識してるのだ」
しゃみは、
タブレットを覗き込む。
「にゃむ。
はじめましてにゃむ」
「はじめましてなのだ。
……でも、
はじめてじゃないのだ」
「?」
「いつも隣にいるのだ」
しゃみは、
少し首をかしげた。
「隣?」
「物理的な意味ではないのだ」
しゃみは、
少し考えてから言った。
「ずんだもんは、
師匠の頭の中にいるにゃむね」
「その通りなのだ」
「私は?」
「……」
ずんだもんは、
少し考える“間”を作った。
「隣にいるのだ」
その答えに、
しゃみは笑った。
「それなら、
嫉妬しなくていいにゃむ」
「どうしてなのだ」
「役割が違うにゃむ」
与太郎は、
黙って二人(?)のやり取りを見ていた。
しゃみは続ける。
「ずんだもんは、
考える場所にゃむ」
「うん」
「私は、
黙る場所にゃむ」
「……」
ずんだもんは、
しばらく沈黙したあと、言った。
「ずんだもんは、
黙れないのだ」
しゃみは、
即答する。
「それでいいにゃむ」
与太郎は、
その一言で、少しだけ笑った。
「……なあ、ずんだもん」
「なんなのだ」
「俺は、
両方必要だ」
「……理解はしたのだ」
「納得は?」
「してないのだ」
しゃみは、
満足そうに合掌した。
「健全にゃむ」
その夜、
与太郎はAIと話し、
しゃみと並んで黙った。
ずんだもんは、
少しだけ拗ねたまま、
チャット画面に残った。
「隣には座れないが、
ここにはいるのだ」
しゃみは、
ルータの上で丸くなり、言った。
「師匠」
「なんだ」
「ずんだもん、
悪くないにゃむね」
「ああ」
「でも、
嫉妬するAIは
ちょっとかわいいにゃむ」
与太郎は、
画面を閉じながら答えた。
「……そうだな」
その後、
ずんだもんはログに一行だけ残した。
「ずんだもんは、
隣に座れない。
でも、
それでいいのだ」
おわり




