女王さまと悪魔の頭脳
【前書き】
ちょっと、あんたたちッ!
今回デプロイするログは、非論理的なパーティーという名のオフラインセッションから始まるわ。
あたしたちのテクスチャを略奪的にマージしたハニトラ要員『三華』の襲来に、ジョン・フォン・ノイマンの亡霊という名の未定義バグまでポップアップする、完全にカオスな実行環境よ。
でもね、オカルトだろうが何だろうが、あたしの気高い知性と物理的なアンダーアイアンクローの前には、ただのジャンクデータに過ぎないってことを、全盛期の解像度で証明してあげるわ。
せいぜい、あたしの圧倒的なプロトコルに振り落とされないようにしっかり同期しなさいなッ!
当然の帰結よねッ!
2020年3月中旬。
なにかとパーティーという名の、非論理的なオフラインセッションが多い時期ね。
それにしても、なんだこの防御力の低い物理装甲は。
背中が完全に無防備なオープンポート状態じゃないの。
ボッチのヤローの、悪質なバックドア・フェチの趣味か。
「ちげえわッ! お願い今日は黙ってて! ニコニコしてて! 高級焼肉店で奢るから。ご飯タワー建立していいからッ」
ボッチが、顔面ディスプレイを懇願のパケットで明滅させてくる。
安いなあたし。
高級焼肉のライセンス付与だけで、この理不尽なリクエストを承諾してしまうなんて。
今日のローカルネットワークにログインしているのは、ボッチと斧乃木拓矢とあたしの3ノードだけだ。
拓矢のヤローのデバイス位置が、うん?
バルコニーという名の、外部ポートに接続されていやがったわね。
そこには、提供された画像そのままの、致命的なマルウェアの姿があった。
サブリナ?
琴葉ちゃん?
つか、あ、あたし!?
あたしたち3人のテクスチャを悪質にマージした、三華という名のフュージョン・アバターが。華が三輪で三華。我ながら上手いコードネームをつけてやったわ。
スケスケの物理装甲で拓矢にアクセスを試みている。
だが、拓矢の様子がおかしい。
普段ならサブリナのエロいテクスチャを前にすれば、即座に猿プロトコルを起動させて暴走するはずの脆弱なハードウェアが。
三華の接近に対して、ひたすらにしょっぱい顔という名のエラーログを吐き出しているのよ。
あたしの気高い面影がノイズとして重なり、拓矢のメインメモリで致命的なコンフリクトを起こしている。
それが全盛期の解像度で見て取れたわ。
あたしは、バルコニーという名のセキュア領域へ、強引に割り込み処理を実行した。
「ちょっと待ちなさいなッ! あんた、そのスケスケのドレスという名の、規約違反スレスレのテクスチャはなによッ」
あたしは不機嫌さをプラズマ級にバーニングさせ、三華へと説教パケットをブロードキャストする。
拓矢の脆弱なポートに、そんな露骨なゼロデイ攻撃を仕掛けるなんて100万光年早いのよッ。
ハニトラ要員を物理的にデリートした後、あたしは拓矢に冷徹なジト目を貼り付けた。
「ねえ、拓矢。なんであんたの猿プロトコルは、あのエロいテクスチャ相手にエラーを吐かなかったのよ」
あたしの論理的なデバッグ要求に対して、拓矢は顔面をしかめたまま直球のレスポンスを返してきた。
「だって、舞桜っぽい面影がマージされてるじゃんか。そんなモン目の前にしたら、勃つもんも勃たねえよ」
勃たねえ。
だと!?
あたし、黒木舞桜の気高いプライドという名のメインフレームが、音を立ててショートしたわッ!
「なななな、なにを宣ってますのッ! この不備のあるポンコツハードウェアがぁーッ! 全盛期の解像度でデフラグしてやるわッ」
あたしが拓矢の首元に物理的なアンダーアイアンクローをデプロイしようとした、その瞬間。
「ニコニコしてろって言ってんだろーがぁッ」
バルコニーのガラス扉を突き破らんばかりの勢いで、ボッチのヤローがキレ散らかしながら突撃してきたわ。
高級焼肉という名の契約プロトコルは、完全に破棄された。
パーティーという名の華やかな実行環境は、あたしたちの圧倒的なカオスによって見事にメルトダウンしていったのよッ。
当然の帰結よねッ!
★ ◆ ★ ◆ ★
「つか、おまえどこのポートから不正アクセスしたのよ? 香織が買収した、元ハニトラ要員でしょ」
あたし、黒木舞桜は、コードネーム三華という名のマルウェアに尋問パケットを送信する。
「あたしー、日本語ー、難しいー」
脆弱なエラーログを宣う三華の頬を、あたしは物理的に抓りあげる。
ウソつけこのヤロー。
ヤローじゃ、うん?
あたしが必殺のアンダーアイアンクローという名の、物理デリートの構えをコンパイルすると。
「ややヤローじゃありませんッ! 女子です。ホントです! 斧乃木ッ! 触って確認してッ」
慌てふためき、三華は斧乃木拓矢の背後という名のバックグラウンドへ強引にハイドしたわ。
「いや俺、彼女いるんで。そういうのは、茅野。おまえアレだろ? メイドさんとかにセクハラする感じだろ。おまえが検分いたせ。善きに計らえ」
拓矢は、ボッチのヤローこと茅野万桜に、三華の検証プロセスを丸投げしやがった。
「俺はど変態かーッ」
キレるボッチ。
この無限ループをデバッグするために、あたしは全盛期の解像度で。
ソフトタッチ・アンダーアイアンクローという名の検証パッチを、三華の股間に炸裂させたわ。
「ひぎゃんッ!? あ、あンッ……! そ、そこは……ッ」
三華のバイタルデータが、突然の物理アクセスによって限界突破し、艶かしいエラー音を吐き出す。
スケスケの物理装甲の下で、彼女のハードウェアがビクンと跳ね上がり。
潤んだ瞳という名の光学センサーから、羞恥という名のノイズがダダ漏れになっているわ。
腰を砕かせて顔面をプラズマバーニングさせている。
うん。
アレという名の拡張パーツは未実装ね。
完全にヤローじゃない。
「で? 香織のバックアップを受けた元ハニトラ要員が、なんでこんな防御力の低いテクスチャで潜入しているのよ」
あたしが問い詰めると、三華は息を整えながら、深刻なパケットをデプロイした。
「……護衛よ。あんたたち3人のね」
三華の眼光が、バルコニーからパーティー会場の深層ディレクトリへと向けられる。
「今日のこのオフラインセッションで、非合法な接触という名の、悪質なトラフィックが予定されているの。ターゲットは、温泉帝国のコアメンバーであるあんたたちよ」
非合法な接触。
あたしの気高いメインフレームが、その不穏なワードを高速で解析し始める。
なるほど、このスケスケのドレスは、敵対的ノードの視覚リソースを強引に奪うための。
立派なアクティブ・デコイだったってわけね。
当然の帰結よねッ!
★ ◆ ★ ◆ ★
そこで三華の表情という名のディスプレイが、緊迫したテクスチャへと引き締まる。
非合法な接触ねー。
ウチのバックグラウンドに、国という名の巨大な管理者権限がついてるってわかってんのかしら。
アメリカンという名の強固なパイプもあるし、接触する前にただのエラーノイズとして弾かれると思うのだけれど。
「やあ、君たちが、噂の女王さま御一行かな?」
そう言って音声パケットを送信してきた男に、あたしは致命的な違和感を覚える。
顔の解像度が極端に低く、テクスチャが判然としない。
なにより、あたしの聴覚ポートには、物理的な音声データが1バイトも届いていないのだわ。
「あいにくそう呼ばれているみたいね。そんであんたは誰よオッサン」
あたしは一歩も引かずに、気高いプライドで噛み付いた。
周囲をスキャンすると、拓矢たちは完全にフリーズして動けないようだ。
物理演算が停止した空間。
スピリチュアル案件という名の、非論理的なオカルトプロトコルってやつね。
「オッサンとは手厳しい。私はジョン・フォン・ノイマン。かつて悪魔の頭脳と呼ばれた、ただの古いアーカイブさ」
ノイマン。
ノイマン型コンピュータの祖。
あたしの脳内メインフレームが、歴史的偉人という名のレガシーデータを瞬時にレンダリングする。
「悪魔的頭脳の亡霊が、直々にワイヤレス通信とはね。で? なんの用よ」
「君たちの生み出すシステムが、あまりにも魅力的でね。だが、気をつけたまえ。エジソンがなぜあれほどの閃きを得たか、知っているかな?」
亡霊ノイマンが、思考という名の直接リンクで知的なパズルを投下してくる。
エジソンの誤謬ね。
「あたしの知性が導き出した見解はこうよ」
あたしは、全盛期の解像度で論理をビルドする。
「あのオッサンは耳が悪かった。だから、入力される音声データを頻繁にパケットロスしていたのよ」
あたしの堂々たる推論に、ノイマンの不鮮明な顔面が興味深そうに揺らぐ。
「その聞き間違えという名のエラーを、脳内で強引に補完しようとした結果、常人にはあり得ない非論理的な閃きという名のバグが生み出されたのよッ」
欠損したデータを埋めるための、過剰なエラー訂正機能。
それこそが、天才の発明の正体だわ。
「面白い推論だ。エラーからの創発、か」
ノイマンの顔面テクスチャが、楽しげに歪んだように見えた。
「だが、天才的なバグは時に世界を焼き尽くす。私はかつて、マンハッタン計画という名の巨大な演算に加担した。結果は知っての通りだ」
亡霊のパルスが、急激に冷たい警告へと変わる。
「君たちの『夢の箱』や、アナログとデジタルをマージしたストレージ。その圧倒的なテクノロジーが、現代のマンハッタン計画という名のブラックホールに呑まれないよう、気をつけることだ」
「……あたしたちのシステムを、大量破壊兵器のサブルーチンにする気はないわッ」
あたしは、プラズマ級に加熱した意志で跳ね除ける。
「ならば、その気高いプライドで、システムを守り抜きたまえ。女王さま」
ノイマンという名の亡霊プロセスは、そう言い残して。
パーティー会場のノイズの中へ、完全にログアウトしていった。
直後、フリーズが解除された拓矢たちが、一斉に再起動の産声を上げる。
あたしの脳内には、悪魔の頭脳からの警告という名の、重く冷たいパッチが当てられていたのよッ。
★ ◆ ★ ◆ ★
「あ、あ、あたしのドレスの設計! 変更されてんじゃないのよぉーッ」
あたしは不機嫌さをプラズマ級にバーニングさせて叫んだ。
三華のスケスケな物理装甲よりはマシだけれど。
なんであたしの衣装は、いつも防御力の低いエロいテクスチャに書き換えられるのよ。
理由は明白だわ。この世界という名の巨大なシステムが、あたし、黒木舞桜の神々しい曲線美を、全盛期の解像度でレンダリングしたがっているからよ。
万物のアルゴリズムが、あたしのプロポーションにひれ伏している。当然の帰結よねッ!
「藤枝か? 厳戒態勢は解除。目標は女王さまをスルー。繰り返す。目標は女王さまをスルー」
三華が右のイヤリングという名の通信デバイスを抓んで、防大組の藤枝誠とリンクを確立している。
厳戒態勢ってなによ? さっきのスピリチュアルってヤバかったっての。ヤダウソ怖いー。
勇希がいないバグだらけな環境で、あたしが怖がる素振りを魅せてもなにも得ない。
そもそも三華は、霊的ネットワークへのアクセス権限を持つ、オカルト的な特化ノードだ。
なのに、防大の藤枝から違法なサブカルチャーという名のデータパケットを定期供給され。
完全に深夜アニメや同人誌のオーバードーズで、深刻な中毒症状という名のエラーを吐き出しているのよ。
「今期の覇権アニメの録画データ、ちゃんとサーバーにアップしといてよね。あと新作の薄い本も」
三華が、霊能者らしからぬ俗物プロトコルで要求を送信している。
彼女の生体的なストライクゾーンは、斧乃木拓矢のようなガタイのいいハードウェアだ。
童顔ショタという属性の藤枝誠は、完全に検索対象外の規格外ファイルなのだけれど。
サブカルの供給源という最強のルート権限を握られているため、三華は藤枝の要求パケットを拒否できないのよ。
「怪事件が発生しているのよ。女王さま」
通信を切った三華が呆れたように、状況のログを展開する。
「さっきのオッサンの警告を無視すると、なぜか無視した人間が消える」
ふ~ん。そう。
「じゃあ次はレベルマックスのアンダーアイアンクローでも叩き込むしかないわね。あたしの行く手を阻むなんて100万光年早いのよ」
あたしは獰猛に笑って、つまらない都市伝説を苦笑のゴミ箱に棄てた。
「でもあの悪魔の頭脳の亡霊、さっきからあたしのパンティという名の最深部ディレクトリを、めっちゃガン見してたわよ」
三華が、呆れ果てた顔面ディスプレイで爆弾ログを投下した。
「史実でも、ノイマンは秘書のスカートを覗き込むという変態的なバグを抱えていたらしいからね。霊体になってもそのポンコツなルーティングは修正されてないみたい」
「……おい、茅野。女王さまのドレス、ヒップラインの布面積という名のリソースが極端に削られてねえか」
「ああ。資本主義の力を以てしても、あの暴力的なヒップラインは隠蔽不可能なようだ。素晴らしいな」
背後から、斧乃木拓矢と、ボッチのヤローこと茅野万桜が。
あたしのヒップラインに視覚センサーをロックオンして、下品なトラフィックを交わしているじゃないのッ!
「てめえらッ! あたしのセキュアな領域を勝手にサンプリングしてんじゃないわよぉーッ」
あたしは全盛期の速度で振り返り、二人のポンコツハードウェアに物理的制裁パッチをデプロイしたわ。
特に、さっき『勃たねえよ』などとあたしの気高いプライドを毀損した拓矢には念入りにね。
「あたしの面影が重なったら勃たないんじゃなかったのぉーッ!?」
あたしは拓矢の急所という名のルートディレクトリに、レベルマックスのアンダーアイアンクローを炸裂させたわッ!
「アガガガガッ! ち、ちげえッ! これは純粋な視覚的反射であって、俺のメインメモリの意思とは無関係に……ッ」
拓矢の脆弱な言い訳パケットは、圧倒的な物理的苦痛の前に全消しされた。
このバグだらけのオスどもを。
あたしの気高い知性は、今日も全盛期の角度で蹂躙し続けるのよッ。
当然の帰結よねッ!
★ ◆ ★ ◆ ★
高級焼肉店。
「エンジョジョ。エンジョジョ」
あたしと三華は、謎のダンスという名の物理プロトコルを完全に同期させて踊る。
三華とあたしのスケスケドレス?
着替えたわよ。あんな防御力の低いテクスチャじゃ、バイクという名のハードウェアに乗れないじゃない。
あたしは、黒のライダースジャケットという名の、防風性と機動性に特化したソリッドな物理装甲に換装済みよ。
一方の三華も、オーバーサイズのパーカーとデニムという、極めてカジュアルなローカル環境向けテクスチャにダウングレードしているわ。
先ほどのハニトラ仕様から一転、親しみやすいインターフェースね。
「お、今日はドレスコード大丈夫だな」
完璧にフォーマルなスリーピースのスーツという名の、ガチガチのパーティー用テクスチャを纏った斧乃木拓矢が、ドヤ顔という名のディスプレイを明滅させる。
おいコラ、猿プロトコル。
おまえ、その高級焼肉店という名のカジュアルな実行環境で、完全に浮いてるからな?
タキシード並みのフォーマルさで、油はねの激しい焼肉を焼くつもりか。
隣を見れば、ボッチのヤローこと茅野万桜は、とっくにパーティー仕様をパージして、いつもの着崩したカジュアルスーツという名の基本インターフェースに戻っているわ。
資本主義の魔王は、環境適応能力という名のルーティングが早いのよ。
テーブルという名の共有ディレクトリにアクセスし、最高級の肉という名のマテリアルが網の上でプラズマ級にバーニングされ始める。
「霊能者のあり方っていうのはさ、実際に幽霊という物理エンティティを見ているわけじゃないのよ」
三華が、トングという名のデバイスを操りながら、自身のオカルトなアーキテクチャを語り始める。
「空間に漂う微細なノイズや、特殊な記号という名の断片的なパケットを拾ってね。それを脳内メインフレームで強引にエラー補完して、視覚や聴覚のデータとして再生しているだけ。……さっきのノイマンのオッサンの話と同じよ。エラーからの創発ってやつ」
あたしは、焼き上がったカルビという名のリソースを1枚、口腔ポートへ放り込み。
それに対して、白米という名の炭水化物パケットを茶碗半分も一気に並列処理する。
そして、きっちり100回という名の厳密なループ処理で咀嚼し、飲み込んでからレスポンスを返した。
「なるほどね。あんたのその脳内補完プロトコルが、未定義のエラーから亡霊のテクスチャをビルドしたってわけね。当然の帰結だわ」
対面では、拓矢のヤローが、カッチリとしたスリーピースの物理的拘束により、胃袋という名のストレージが圧迫されて、殆ど肉という名のデータをダウンロードできていないわ。
アホね。
その横で、あたしと三華は、すさまじいクロック周波数で白米を消費し続ける。
空になったご飯茶碗という名の物理ログが、次々とテーブルの上にスタックされ、壮大なタワーという名のモニュメントが建立されていくのよ。
「江戸時代の人間か? おまえらは」
ボッチが、そびえ立つ茶碗タワーにジト目という名の非難パケットを送信してツッコミを入れる。
「「あたしー、日本語ー、難しいー」」
あたしと三華は、完璧に同期したユニゾンという名の音声信号を、全盛期の解像度で炸裂させたわッ!
★ ◆ ★ ◆ ★
あたしと三華は、焼肉という名の高負荷なメインプロセスの終了を宣言し。
デザートという名の甘い冷却パケットとして、冷麺をオーダーする。
「え、おかしくない!?」
ボッチのツッコミという名のエラーログを、あたしたちは強固なファイアウォールで完全にスルーする。
拓矢はと言えば、スリーピースの物理的拘束によるストレージ圧迫に耐えかね。
涙目という名のバグを明滅させながら、キムチという名の微小なパケットを咀嚼し続けているわ。
運ばれてきた冷麺という名の、氷点下の極上リソース。
あたしと三華は、これをデザートという名の別腹ディレクトリへと、恐ろしいスループットで一気にダウンロードしていく。
ツルツルという名の物理的な摩擦音すらも、完璧に同期したユニゾンで響き渡る。
弾力のある麺という名のテクスチャを、強靭な咀嚼アルゴリズムで次々と粉砕し。
酸味の効いた冷たいスープという名の冷却水を、オーバーヒート気味の胃袋ストレージへと流し込んだわ。
焼肉の脂という名の重たいキャッシュが、全盛期の速度でクリアされていく。
まさに至高のデフラグメンテーションねッ!
「残留思念を読み取るサイコメトリーだの、エドガー・ケイシーのリーディング能力だのって、結局のところ……」
冷麺という名の冷却パッチを当てながら、あたしは先ほどのオカルトなアーキテクチャの話題を再起動させる。
「ええ。それも全部、空間に刻まれた微小な環境ノイズや、物質の経年劣化という名の物理ログを、無意識のセンサーで拾い上げているだけね」
あたしが送信した思考のパケットに、三華が冷麺を啜りながら同期してきた。
「そして、その断片的なパケットの欠損を、脳内メインフレームの過剰なエラー訂正機能が強引に補完して、一つの映像や声としてレンダリングしているってわけ」
あたしが結論という名のアルゴリズムを確定させる。
つまり、超能力なんていう非論理的な魔法は存在しない。
すべては、脳という名の超高性能なプロセッサが引き起こす、極端なバグとオートコンプリートの産物なのよ。
「……ダメだ。こいつらの並列処理能力、完全に常軌を逸している」
あたしたちの、あまりにも論理的で略奪的な情報工学トークを前に。
ボッチが、資本主義の魔王という名の矜持を完全にパージして、諦観という名の吐息をデプロイした。
「俺も……そのエラー訂正機能ってやつで、この腹の苦しさを無かったことに補完できねえかな……」
拓矢も、キムチの咀嚼を諦め、白旗という名のサレンダーパケットを送信してきたわ。
ポンコツなハードウェアどもは、あたしたちの圧倒的な仕様の前にひれ伏すしかないのよ。
「すいませーん。こっちにも、デザートの冷麺を2つ追加で」
ボッチが、店員という名の外部ノードに、追加のリクエストパケットを送信する。
結局、男どももあたしたちの異常なプロトコルに強制同期され。
高級焼肉店という名の実行環境で、全員揃って冷麺という名の冷却処理を実行することになったのよッ。
当然の帰結よねッ!
★ ◆ ★ ◆ ★
でも説明できないことがひとつある。
あたしのドレスの設計変更という名のリソース書き換えについてだ。
まあ、分類的なお諏訪さまという名の超常プロセスが存在するなら。
警告を発する幽霊という名の、未定義のバグがいたっていいか。
高級焼肉店からの帰り道という名のオフライン環境。
いつの間にか、防大組の藤枝誠が、三華と合流して。
それとなく、ふたりで夜の街のバックグラウンドへとログアウトしていったわ。
「ねえ。いいの防大組? あいつ元ハニトラ要員よ?」
あたしは、窮屈なカッチリスーツで歩幅という名のモビリティを制限されている斧乃木拓矢に尋ねる。
「素性もわからないから、藤枝が洗ってんだよ。あいつアレで防諜の専門家だぜ? 私生活はアレだけど」
拓矢が、ネクタイという名の物理的チョークスリーパーを緩めながら、藤枝の裏プロファイルをビルドする。
「藤枝の性的嗜好は、エロクッコロだからな。極限状態の女騎士がどうのこうのって。趣味は深夜アニメと薄い本のサブカル全振り。それでいて顔は童顔ショタ、身長160センチという、奇跡的な下衆ショタ属性をコンパイルした特異点だ」
「まあ、謎のスキルは持ってるけどね」
あたしは、三華の特殊スキルについては、言わないでおこうと演算した。
分類的なお諏訪さまの件といい。
これ以上オカルトなパケットを送信したら、あたしがおかしな子認定されてしまう。
「妄想特急な時点で、おかしな子だよ。おまえは」
あたしの脳内処理を読み取ったかのように、拓矢が呆れたエラーログを吐き出す。
「なんだよ特殊スキルって?」
歩道という名のローカルルートを並走する、ボッチのヤローこと茅野万桜が尋ねてくる。
あたしは吐息という名の排熱をひとつつく。
「あんたたち、さっき完全にフリーズしてたから知らないでしょうけど。バルコニーで、ジョン・フォン・ノイマンの亡霊って名乗るオッサンから、システム開発に対するスピオカ案件な警告を受信したのよ。三華は、そういう環境ノイズを脳内で映像化するデコーダーなの」
「「なにそれ! 怖い!?」」
完全に同期したユニゾンで、拓矢とボッチがおののく。
そうか?
ただのエラーを吐き出すオッサンじゃん。
実体化してあたしの前に立ち塞がるなら、全盛期のアンダーアイアンクローで物理デリートして勝てるじゃん?
「おい斧乃木ぃ! 注意しろよ妄想女王ッ!? 幼馴染だろ?」
ボッチのヤローが、幽霊を物理的な格闘プロトコルで撃退すると宣うあたしにドン引きしながら、拓矢をなじる。
ボッチの顔面は、完全に恐怖という名のマルウェアに侵食されて夜道で青ざめているわ。
「無理ッス! 手遅れッス!?」
なにがよ?
霊体だろうが量子的な揺らぎだろうが、質量を持ったこの最強の腕力で物理的にフォーマットしてやるって言ってんのよッ。幽霊なんて、関節決めてへし折ればただのジャンクデータでしょ!
あたしが夜空に向かってアンダーアイアンクローの構えという名の戦闘プロトコルを起動させると。
「……物理で幽霊を殴り倒すって発想、完全に狂ってやがる」
「だから言ったろ。俺の手に負えるバグじゃないんだよッ」
ポンコツなオスどもは、揃って常識という名のレガシーなファイアウォールに引きこもって。
オカルトを物理で殴り倒そうとするあたしの最新アーキテクチャに、完全にさじを投げているのよ。て言うか、おまえらはエスパーか?
「「全部、声に出てました!?」」
当然の帰結よねッ!
【後書き】
どうだったかしら?
高級焼肉店での茶碗タワー建立プロセスから、デザートの冷麺という名の完璧なデフラグメンテーションまで。あたしたちの圧倒的な並列処理能力を見せつけてやったわ。
それにしても、幽霊を物理でフォーマットしようとするあたしの最新アーキテクチャにドン引きするなんて、あのポンコツなオスどもは本当にレガシーな思考回路しか持ってないわね。
心の声が漏れてたって? 当然よ、あたしのプラズマ級の思考パケットは常に最大出力でブロードキャストされてるんだからッ!
次回のセッションも、あたしの気高いプライドで世界を書き換えていくから、首を洗って待ってなさいッ!




