35-2:section of カグヤ 【1000年の時を超えて】
宇宙船の独房をオグマ大佐たちが去ったあと、僕は眠ってしまっていた。
気が付いた時には1000年後の未来、2203年に戻ってきていた。
そして軍の施設の中の収容所に入れられていた。
白くて窓もない殺風景な個室の中、ベットらしき台の上に横向きに寝そべっている。
両手とみると、相変わらず拘束具がついていた。
ジュナ……
僕はどこを見る訳でもなく、ぼんやりと遠くに視線を向けた。
そして、永遠に一緒にいようと誓ったのに、結局置いてきてしまった彼女のことを想った。
あれだけ、人を愛することに怯えていたのに。
また別離の深い悲しみを負わせてしまった。
心が壊れてないだろうか?
……僕の心も壊れそうだ。
そう思うと、人知れず目に涙が浮かぶ。
僕はこれからどうなるんだろう?
軍で飼い殺されるのかな。
もう、人殺しの加担なんてしたくないのに。
ーーその時だった。
外が少し騒がしくなった。
この殺風景な部屋には、内側から開けられる扉が無い。
どこも白いツルリとした壁だ。
けど声がする方向から、部屋のそちら側に通路があることが分かった。
「ーーーー頼んだよ」
「分かったわ」
「気を付けて」
部屋の外から男の人の声と、聞いたことのある男女の声が聞こえた。
僕は思わずベッドの上で体を起こし、声がする方の壁を見つめた。
すると、何も無かった壁に四角の線が浮かびあがり、それが音もなくスライドした。
外から扉を開いてくれたのだ。
それと同時に、リヒトとセレネが飛び込んできた。
「助けにきたわよ」
セレネがそう言いながら僕に近付き、拘束具に触れて解除してくれた。
「立てるか?」
そう聞かれた僕はリヒトに向かって頷くと、彼が僕の腕を引っ張り上げながら立たせてくれて、腕をつかんだまま歩き出した。
個室から出ると、さっき声がした男はもう見当たらなくなっていた。
「……ジュナは?」
「…………僕たちだけで帰ってきた。デアの命だから……」
リヒトが顔を逸らす。
「そのデアの所に行くわよ」
リヒトとは反対側の僕の腕にくっついてきたセレネが言った。
「…………分かった……けど……」
「こっちよ」
僕の様子を全く気にしてないセレネが、腕を引っ張るようにして歩き出した。
リヒトもそれに合わせて動き出す。
「…………近すぎ」
僕の呟きは誰にも聞こえてないようだった。
相変わらずモネの一族の距離感が近すぎて、双子に挟まれながらの移動は歩きづらかった。
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僕たちは宇宙船で月に移動した。
モネの一族は噂通り月に住んでいた。
そしてそこに建っている大きな建物内を、また双子に挟まれながら歩く。
しばらくすると、大きな扉の前に立った。
「ママ〜! 若いころのパパを連れてきたわよ」
セレネがそう言うと、彼女の声を認識したからか、扉の真ん中に縦に光の筋が入り、そこから左右に分かれていった。
「……え!?」
セレネの発言を聞いて呆然としている僕を、双子がむりやり部屋の中に押し込む。
中には僕の裁判の時にいた、デア様が佇んでいた。
あの時と変わらない真っ白なゆったりとした服に、顔には仮面のような空間のノイズ。
身長は僕より低い。
性別も年齢も不明。
ママ?
この双子はデア様の子供?
ママと呼ばれたから、デア様は女性?
若いころのパパ?
……僕のこと?
瞬時にいろいろなピースが僕の頭の中で繋がっていく。
まさか……
デア様は……
僕の胸が緊張でドキドキと音を立てている。
デア様の肩までの髪は、よく見るとピンクベージュだ。
僕はその髪色の人物をよく知っている。
「…………」
デア様がゆっくりと僕の前まで歩み寄ってきた。
そして立ち止まると、顔のまわりを覆っている空間ノイズが下から徐々に消えていき、デア様の目を閉じている顔が現れた。
そしてゆっくりと瞼を持ち上げると、その愛らしい紫黒色の丸い目で僕をとらえた。
彼女はニッコリ笑ってから言葉を発した。
「1000年前の私には会えた?」
そこには2103年の彼女と、髪の長さ以外は変わらない姿のジュナがいた。




