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Cry for the moon 〜永遠の愛を求めるジュナと未来から来た青年カグヤの竹取物語  作者: 雪月花


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34:section of カグヤ 【感情を消す機械】


 明るい強烈な光に照らされると、ジュナの様子が変わった。


「……何……これ? ……力が……入ら、な、い……」


 ジュナがヘナヘナっとハンドルに沈み込むと、ブームスランもゆっくりと止まった。


 何ともなかった僕はすぐさま車から降りて、運転席側にまわり、ジュナを支えながら外へ出してあげた。


 おそらくこの光は、ジュナたち過去の遺伝子をもつ生物に作用するものだ。

 僕たち未来人は、人工的な進化を繰り返しているから効かない。

 

 未来での戦争の時に、適応する生物に使用して動けなくしているのを見たことがあった。


 


「ジュナ、大丈夫?」

「なん……とか? ……あれ、は……」

 僕に寄り添われてなんとか立っているジュナが、思わず上空を見上げた。


 音もなく巨大な飛行物体が浮かんでいる。

 そこから光に照らされているので、眩しすぎて全体の輪郭を見ることは出来なかった。


 するとその飛行物体から、青い軍服を着た数名が飛び降りてきた。

 強靭な体をしたアンドロイドだ。

 銃を僕たちに向けながら、音もなく近付いてくる。


「やめて! カグヤを連れて行かないで!!」

 ジュナが泣き叫んで抵抗する。

 けれど僕たちはあっけなく捕まり引き離された。


 力が入らないジュナは地面に手足をつくようにして倒れ込み、隣に立った軍人に銃を後頭部に突きつけられた。

 僕は後ろ手で拘束されてしまう。


 


 気付くと、宇宙船から生身の人間が地上に降り立っていた。

 僕はそいつを見て苦々しく呟いた。

「……オグマ大佐……」


 1000年後の未来で、僕が裁判を受けている時に立ち会っていた軍人だ。


 こいつが僕の不老不死の技術を欲しがっているのか。

 感情を消す機械でのし上がって、邪魔になったら僕に全ての罪を着せたのに、それだけでは満足しなかったようだ。


 僕の背後で拘束しているアンドロイドが、僕をオグマ大佐の所まで連れて行った。


 近くまでくると、オグマ大佐がゆっくりと笑みを浮かべてから口を開いた。

「君の刑期が終わったので、連れ戻しにきた」


「嫌だ。帰りたくない!」

 無駄だと分かっていたが、拘束を解こうとして暴れた。


「見苦しいな……おいメレフ」

 オグマ大佐が隣にいる軍人に、目配せだけで命令する。

 メレフと呼ばれた軍人は、手のひらサイズの細い棒のようなものを取り出した。


 それはすごく見慣れたものだった。

 僕が開発した感情を消す機械だった。

 所定の場所を指先で触れて命令を流すと、針先のようなものが先端から出てくる。


 それをどこでもいいから体に打ち込む。

 中の透明な液体の中に入っているナノマシンが脳に作用して、感情を伝達する物質を阻害し出す。


 メレフがその機械を振り上げた。

 そして僕の服をつかみ、乱暴に引っ張り寄せてから首筋に刺した。

「うあ……」

「自分が開発した機械を試される気分はどうだ?」

 メレフがニヤリと微笑し手を離した。

 役目を終えた機械が首筋から落ちる。


 反動でよろけながらも僕はジュナを見た。


 彼女はいつの間にか来ていたモネの一族の双子に助けられていた。

 けれど力が入らないので、地面にペタンと座り込み、僕をジッと見ていた。

 その表情が怯えたものに変わる。


「……カグヤに……何をしたの!?」

 力が入らないながらも僕に詰め寄ろうとしているジュナを、両サイドの双子が腕を持って止めていた。

「感情を消したのさ。カグヤが開発した機械だ。お前のことなんか、もう何とも思わない」

 メレフがご丁寧に説明してくれた。


「そんな! ……カグヤ…………カグヤ!!」

 ジュナが僕に向かって必死に叫ぶ。




「……消えない」

 僕は思わず呟いた。


 そしてジュナをしっかりと見つめた。

「ジュナ! 消えてない! この時代で過ごして……君と一緒にいて強くなった感情は、僕の機械では消せない!!」

 僕は力の限り叫んだ。

 せめて……せめて最後に伝えたかった。


「ジュナを想うこの強い気持ちは消せない!!」




「……収容しろ」

 オグマ大佐の非情な声がした。


 その途端、僕を拘束しているアンドロイドに、引っ張られるようにして連れて行かれた。

 

 宇宙船との乗り降りの場所になっている地点に立たされると、重力操作と気流操作の要領で、僕の体が浮かび上がる。

 そしてあっという間に宇宙船に吸い込まれた。


 ……残されたジュナの僕を呼ぶ声が聞こえた気がした。




 ーーーーーー

 

 宇宙船の中に入った僕は、独房のような所に投げ込まれた。

「うぅっ!!」

 床に倒れ込み、思わず声を漏らす。

 

 手には光物質で出来た拘束具。

 人生で2回目だなと思いながら上半身を起こした。


 そこにオグマ大佐とメレフが入ってきた。

「それで、カグヤと一緒にいた未来人2人はどうします?」

 喋りながらここに向かっていたのか、2人は会話を続けていた。

「見知らぬやつらだ。捨て置け。カグヤの仲間か何かだろうが、もうカグヤは手の内だ。手出しは出来まい」

 オグマ大佐が吐き捨てるように言った。


 どうやら軍には、2人がモネの一族だとはバレていないようだ。


 すると、メレフが僕に近付きしゃがみ込んだ。

 そして銃を耳に突きつけてきた。

 細胞を蒸発させてしまう銃だ。


 その銃が一瞬光り、僕の右耳が熱くなった気がした。

「うあぁぁあぁあ!!」

 右耳に激痛が走る。

 (うつむ)いた僕の前髪をつかみ、メレフが無理矢理上を向かせた。

 

「このように、失った部分が素早く再生します。カグヤは不老不死の技術を完成させています」

 メレフが事務的な口調でオグマ大佐に説明する。

 

 メレフが言ったように、僕の右耳は綺麗に再生していた。

 それと同時に痛みも引いていく。

 そこまで確認すると、メレフが前髪から手を離した。


「素晴らしい」

 オグマ大佐の瞳の奥が光った気がした。

 

 彼はどれだけ無慈悲なことが好きなんだろうか。

 感情を無くした兵士が作れる未来に歓喜している。

 恐ろしい欲望を宿した黒い瞳に、僕は底知れぬ恐怖を感じていた。


 そして以前はこの男のそばにいて、何とも思わなかった自分に嫌気がさした。

 



 

 次の35話は、2人の目線になるので「35−1話」と「35−2話」があります。

 その分1つが短いです。よろしくお願いします。

 

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