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002話 王の封印

暇つぶしに読んで、面白いなって思っていただければ、幸甚至極にございます。

 吹き飛ばされ体皮に切傷を創った凶獣は目を怒らせ、紫黒の妖気を立ち昇らせた影から、数十匹の妖獣を生み出した。

 「ビシャン、周りの妖獣を頼む」

 今まで忍の後ろに控えていたビシャンと呼ばれた白虎は、主の命に従い、新たに生み出された妖獣に噛み付いては放り投げ、裂いては地面に押し付け、瞬く間に一掃していった。

 「お前にその傷を付けてからもう三年か。あの時の借りは今度こそお前を真っ二つにして、返してやるよ」

 忍は前回の死合を思い出しながら、独り言のように呟いた。すると凶獣は黄色い目を細くし、破れた傘のような暗紅色の翼が一際強い光を発した。その翼より発せられた光は、一つの水晶玉のように収束し、忍の頭上十五(メートル)ほどの中空に留まったかと思うと、やがて膨らみ出し、忍の周囲を半球状に取り巻いた。

 運悪くその半球の中に囚われたムカデが、グシャッという音とともにその身がゴマ粒の大きさに圧縮された。凶獣の発した暗紅色の檻は、その中の生物に四方から圧倒的な超重力を与えるものであり、囚われた者は決して出られず、肺から空気が押し出され、ムカデと同様の有様となる妖術のようである。

 しかし、その檻の中で忍は涼しげな顔をして立っていた。いや、忍が発する輝白の光は天まで届き、天空から差す光芒のように、超重力の半球に穴を穿ち、忍びの周りに白い結界を張っていた。

「二度と同じ手は食わねぇよ」

 忍は、短刀を再び逆手に握り、凶獣の頭に向けて跳躍すると、「虎擲竜挐(こてきりゅうだ)」という大音声と共に、短刀を振り下ろした。すると忍の持つ短刀が金鳥のごとき光を発し、防御態勢を取った凶獣の左腕ともども、古傷をなぞる様に左肩から右腰に光の筋を残す裂撃を見舞った。経絡を寸断された妖獣の王は、背中から地面にドサッという音と共に落ちた。

 紫黒の獣の断面からは黒色の(もや)が立ち昇り、翼から発されていた暗黒色の輝きは色を失った。

 忍は倒伏した凶獣に近づき、膝を地面に付けると、短刀で自分の右手の親指の腹を短く切った。親指に盛り上がった血液で、凶獣の胸に調伏の呪言を描くと、妖獣の王とも呼べるその身体から一切の力が抜けた。忍は凶獣の腕と足を縛ると、白虎と共に凶獣を引きずり淡い光を放つ鍾乳洞に入って行った。

 どれくらい歩いたか、深い鍾乳洞の最奥へとやって来た忍は、半球状になった壁面と地面に妖獣封印の呪印を次々と描き、妖獣の王の身体をその中心に横たえた。次に天井から氷柱の様に伸びた鍾乳石に注連縄を結ぶと、凶獣の両手首、両足首に注連縄を結び、最後に半球状の室の入り口にも注連縄を張ると、妖獣の王に正対した。

「負の感情を飲み込みし無暁の闇よ、安らかに眠りについてくれ」


 稀代の忍と妖獣の王との戦いを夢想していた少年は、忍が持ち帰った妖獣の爪を加工した刀を下賜され、少年自身も忍の神と共に新たな妖獣と戦う事を思い描きながら夢の中へと落ちるのであった。

少年が布団の中で思い描く世界を書いてみました。

そのため、戦闘の描写は短めです。

今後物語が進むと、もっと臨場感溢れる戦闘シーンを描きたいと思ってます。

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