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ミヤシロ

5話目です。

 それは直葉が大いに腕をふるったコウオウダケのディナーを、夜空の下で目と舌でたっぷりと堪能して、胡乃実がつくったシュリンの実のジュースやフルーツティーで食後の余韻に浸っていた時に言われた。

「結社のミヤシロ様が僕に会いたいって言ってる?」

 閑芽が彼にしては珍しく難しい顔つきをしていて、棗や柊も困惑げにしている。

 だが一番戸惑っているのは、会いたいと名指しされた千早だった。

 手にしていたカップが揺れて、危うく中身のフルーツティーをこぼしてしまうところだった。食事前に言われていたら、驚きで、楽しみにしていたコウオウダケのディナーが喉を通らなかった事だろう。

 だから閑芽も結社から戻ってすぐではなく、食事が終わり一息ついていた今に言ったのかもしれない。

「会いたいとはどうしてだ?ミヤシロ様は千早にどんな用件がある?」

 たずねたのは千早ではなく、直葉だった。こちらもらしくなく、きつめの口調と目つきをしている。

「それは俺も聞いたんだが、ミヤシロ様は千早のみに話すとしか言われなかった」

「何故、今になって……」

 ミヤシロの命を受けて千早を迎えにいった直葉は、ミヤシロの意図がさっぱり分からない。

 戻り森は行き場を失った異族と異能を受けいれる場所として、ミヤシロの一族が作った場所のはずだ。

 千早が何事かを抱え込んでいるのは、彼の纏っていた衣服に刺繍されていた王家の紋章からも察せられる。だが、まさかその事で一度は受けいれた千早を戻り森から追い出すつもりなのか。

 その不安は直葉だけでなく閑芽も感じているようで、それが彼の表情を曇らせているのだろう。

 その重苦しい雰囲気を断ち切るように、発せられる声。

「僕、会うよ」

「千早!?」

「考えてみれば一度も挨拶に行ってないのは失礼だったな、ミヤシロ様って戻り森の長みたいなもんなんだろ?顔合わせをしとくのは礼儀だろ」

 千早は椅子から立ち上がり、部屋へと足を向ける。

「そうと決まれば、僕はもう寝させてもらうな。偉い人に会うってのに睡眠不足で醜態さらしたらやばいし」

「千早……」

「おやすみ」

 引き止めようとした直葉にとり合うことをせず、一言だけ言い置いて千早は部屋に戻ってしまう。

「直葉。気にかかるなら貴方も明日、千早と結社に行けばいいわ」

「柊?」

「ミヤシロが言ってたんだよ。俺達も来てもいいってな」

 柊の言葉を棗が補足して閑芽がそのあとに続ける。

「俺は明日、千早と一緒に結社に行くつもりだ。直葉、お前はどうする?」

 答えはもちろん決まっている。

「行く」 

 ミヤシロの意図が分からないなら、確かめるまでだ。


 千早はベッドに寝転がり、あてもなく宙に視線をさまよわせていた。

「ミヤシロ様か……」

 戻り森の長にあたる人物なのだから、聡明かつ厳格な人間なのだろう。そして、とても強大な結界の異能を有している。

 もしかすると知られたのかもしれない。千早がどんな存在で、何から逃げ続けているのか。

 その事で話があるのだとすれば、千早のとるべき行動はひとつだ。

 この戻り森から出て行く。それしかない。

 もともと長居するつもりはない。最初から金が貯まるまでと決めていた、捕まるわけにはいかないのだから、一か所にとどまるのはまずい。

 千早の脳裏に浮かぶのはこちらを見つめる黒真珠の瞳。

「無理なんだよ……」

 それは絶対に叶わない事で、叶えてはいけない事だ。

 だから千早は逃げ続けるのだ。

 どれほどに居心地の良い場所を見つけても。隣にいられたらいいと時折思う事があったとしても。それは絶対に叶えてはいけないのだから。

 だから、あの白い彼女の隣から、もう離れなければならない。


翌朝、千早はミヤシロ様のいる結社へと向かった。

一人で向かうつもりだったが案内がいるだろう、と閑芽と直葉がついて来た。

 閑芽達がついて行くなら、と棗と柊は胡乃実と一緒に清樹で留守番をしている。

「ミヤシロ様がいる結社は湖の中にあるって話は、胡乃実から聞いてるんだったよな?」

「ああ、ミヤシロ様の異能である結界で、水が社の中に入ってこないようになってるってな」

戻り森の中心部にある湖、その水底に結社はある。

しかし、どうやって結社に入ればいいのか?それはまだ聞いてない。

けれど、それを聞くより先に直葉が口にした。

「着いた」

 その言葉につられるようにして、直葉の視線の先を追って見たものに千早は感嘆の声をこぼした。

「うわ……っ」

 目の前に広がるのは、とても大きな湖だ。

 湖面はそこだけが時を止めたように静かで、湖を囲む水気に色を濃くした幹と葉々を持つ木々と苔むした岸辺を映し込み、うっすらと霧がかかっている。

 対岸の木々は霧と湖の大きさとで、ほとんど見えない。

「で、着いたはいいがこれからどうするんだ?」

「問題ない。向こうから出迎えてくれる」

「へ?」

 閑芽の答えに千早が瞬きしたのと、ほぼ同時にそれは起こった。

 ザザザと音をたてて、湖が真っ二つに割れたのだ。それはさながら湖面の扉が開かれるようにして。

「なるほど」

 これは確かに出迎えである。

 そして扉が開かれたその先にあるのは、朱の色が目にも鮮やかな美しい社。水の中にあったというのに、社には水滴ひとつも滴っていない。

「行こう、千早」

 促す直葉に沈黙で答えて、千早は社へと歩き出す。それを直葉が訝しんでいるのは気づかない振りをする。

 何故なら千早はもう決めたのだ。今日、ここを離れると。

 だから未練などなごりなど感じてはいけない。そんなもの、感じる資格はない。

 千早達全員が、社の中に入ると割れていた湖は再び元に戻っていく。しかし湖の水が社の中に入ってくる様子は全くない。

 話に聞いていたとはいえ、不思議な気分だ。

 社の外に目をやれば、すぐそこに水の中を気持ち良さそうに泳ぐ魚達がいるというのに、社も千早達も濡れるどころか、水気すら感じていないのだから。

 社に何度か訪れている閑芽に先導される形で社内を歩いていると、広々とした板張りの間に辿り着く。

 そこには揃いの白い水干を纏った二人の人物が待っていた。

 一人は小柄な女で、波打つ明るい栗色の髪を高く結い上げて、猫を思わせる橙色の目に溌剌とした活気のようなものを宿している。

 もう一人は大柄な男で両目を白い布帯で隠し、鴉の濡れ羽色の長髪を背の中ほどで緩く結んでいる。

「お待ちしておりました」

 その二人は同時にそう口にして、同時に頭を下げた。タイミングも角度も時間も、まるで計っているかのようにぴったりだ。

「どうぞお座り下さい」

 いつの間にか、板張りの間には丸い紫の座蒲団が用意されていた。

 まずは閑芽が腰を降ろして、次いで呼ばれた千早が、最後に直葉が座蒲団に座った。

 それを確認した二人は、板張りの床より一段と高い位置にしつらえられた柱と御簾に覆われた場所、その左端右端へとそれぞれ別れて座る。

 それを待っていたかのように、声がした。

紅葉モミジ銀杏イチョウ、御苦労」

 両端に座していた二人は黙したまま、床に額がつくほどに深く頭を下げる。

 という事は、この声はミヤシロのものか。

 女の声だ。それも想像していたものより、ずっと若い。もしかしたら20歳を越えていないのではないか。

 千早が表情に出さないように驚いていると、御簾がスルスルと上げられていく。

 これは普段はない事なのか、閑芽が驚きに肩を揺らして、直葉が身を固まらせた。

「よくぞ参った。露草千早」

 御簾の向こう、その姿が千早の目にもはっきりと見える。

 女は古の伝承に出てくる神々のような衣装を纏っている。

 紺青の髪は女が座している一枚の畳を覆い尽くすほどに長く広がり、瞳は光の加減で虹色に輝いている。肌は日の光を浴びた事がないのではないかのように白い。薄紅色の唇は優しく笑みを描いている。だが、その見た目よりも千早を驚かせたのは、

「ちっちゃ!!」

 ミヤシロのあまりの小ささだ。

「千早……睨まれてる」

「千早……はっきり言っちまったなぁ」

 直葉は目を吊り上げている紅葉と怒りの気配を漂わせている銀杏を視界の端に入れながら、閑芽はなんだか感心しながら、千早にあまりそういう事は言わないほうがいい、と目で合図してくる。

 けれど当のミヤシロは千早の正直過ぎる感想がうけたのか、コロコロと笑い出していた。

「よいよい。わらわが小さいのは事実じゃ」

 ……正直、小さいで済むサイズでもねぇよな。

 千早は始めて見た。

 両掌に納まるサイズの人間を。顔だけ見れば18か19なのに、体は小人なんてレベルではない小ささだ。

 ミヤシロが結界の異能というのは嘘で、本当は体の大きさを変える事が出来る異能の持ち主なのではないか。

「ミヤシロ様は真実、結界の異能の持ち主であらせられる。このようなお姿をされているのは、戻り森の結界に異能のほとんどの力を使っているために御身が収縮されているからだ」

 銀杏の言葉に、千早は驚いて彼を見た。

 今の言葉は、まるで千早の心の中を読んだような内容だった。

「まるで、ではない」

 銀杏は些か嫌そうに呟く。

 つまりはそういう事なのだろう。

「あんた、心を読む異能の持ち主なのか」

「いかにも。だが安心しろ、読もうとしなければ読めない」

 それって僕の心を読もうとして読んだって事かよ。

 だが、心を読める異能がいるとは。

 千早の中の疑念は確信に変わった。

 ミヤシロは間違いなく、千早が何者でどんな理由があって逃げ続けているのかを知っている。

 ならば、昨夜決めた通りにすればいい。

「ミヤシロ様、僕はこの戻り森を出ていく」

「千早?」

 直葉がいきなり何を言い出すのか、と言いたげに呼びかけてくるが千早は話を続けた。

「心を読む事の出来る異能の持ち主が側にいるなら、貴方にはもう分かっているのだろう。僕がどんな存在か」

 そして、僕が何故逃げ続けているのかも。

「僕がこのまま戻り森にいれば、そう遠くないうちに僕を追いかけている奴らに追いつかれてしまう。そうなれば戻り森にいる人達にも危害が及ぶかもしれない」

 しれない、ではない。絶対に及ぶ。千早を追いかけているいる彼らは、千早を捕まえるためなら他者を傷つける事を躊躇わないだろう。

「だから、そうなる前に僕は戻り森を出ていく」

 言うだけ言って立ち上がる千早の腕を、直葉がつかんだ。

「離せ」

「嫌だ」

 直葉は千早の腕をつかむ力を強くする。

「僕は戻り森を出ていくんだ」

「納得できない」

「最初から言っていただろう。金が貯まるまでだって」

「まだ貯まっていないだろう」

「それでも、もう出ていく。出て行かなきゃいけないんだ」

「ダメだ。納得できない」

「……いい加減にしろよ!!」

 千早はたまらず叫んだ。

 なんで行かせてくれないのか?なんで分かってくれないのか?

 なんでひき止めるような真似をするのか?

 何も言わずに去る事が千早が唯一、直葉に出来る事なのに。

 それなのに、どうして。

「千早が何かを抱え込んでいるのは気づいてた。言いたくないのなら聞かずにおこうと思っていたけど、戻り森から出て行くというのなら話は別だ」

 どうして、そんな事を言うんだ?

「お前には本当に感謝してる。行き倒れていた僕を拾ってくれた事も。そして、僕の異能を認めて感謝してくれた事も」

 直葉が拾ってくれたから、ただ追い立てるように逃げ続ける日々の中でつかの間の安息の地を得る事が出来た。直葉の命を助ける事が出来たから、疎ましくて仕方なかった自分の異能も、けして呪わしいだけではないのかもしれないと思えた。

 千早は直葉と出会い、直葉に救われた。だからこそ、彼女がくれた安息の地と彼女自身を危険に晒しかねない自分自身がこのまま、ここにいるわけにはいかないのだ。

「千早、私はそんな事が聞きたいんじゃない」

 いずれ出ていくのは分かっていた。清樹に馴染もうとしながらも、千早はいつもどこか別の場所にいるようだったから。それが直葉には気がかりで、同時にやりきれなさも感じていた。

 千早は直葉に言ったのに。理不尽だと思うのなら、嫌だったのなら、それを言葉にしろ怒りにしろ、と。怒っていいのだと、そう言ったのに。

 何故、それを言った本人がその言葉の通りにしてくれないのか。

 千早に何があったのか、彼が何者なのか、直葉は知らない。正直なところ、今はそんなのどうでもいい。

 ただ、千早が逃げ続けているのは、彼が望んだ事ではなく、それは理不尽を強いられているという事で、ならば彼はそれに怒っていいはずだ。

「千早が言ったんだ。理不尽には怒っていいと。じゃあ千早が逃げ続けなければいけないこの状況は、その怒っていい理不尽ではないのか?」

「お前……」

「千早が怒れないなら、私が怒る」

 あの時、千早が怒ってくれたように。

「あのさー」

 申し訳なさそうに入ってくる声がした。紅葉のものだ。

「……二人とも盛り上がってるところ悪いんだけど、少しは周りの目を気にしたら?」

 千早と直葉は我に返りバッとこの場にいた自分達以外の人間達に視線を向けた。

 必死に勇気を振りしぼって声をかけただろう紅葉は、顔をうっすら赤く染めて苦笑いしている。銀杏は何も見ていないとばかりに体ごと別の方向を見ているが、耳が赤くなっている。閑芽は感動に目を潤ませて親でもないのに「二人とも、大きくなったな」とか意味の分からない事を言っている。そしてミヤシロは目をキラキラと輝かせて、続きは?続きは?と期待に胸をふくまらせている。

 四人のそれぞれの反応を目の当たりにした千早と直葉は、ものすごい勢いで後退し、互いの間に距離をとり目をそらしてその場に座った。

 ミヤシロはあからさまにがっかりしていたが、体の向きを元に戻した銀杏に話の続きをするように促され、コホンとひとつ咳払いをして居住まいを正した。

「まずは、なんじの思い違いを正さねばならぬようじゃな、千早よ」

「思い違い?」

「そうじゃ。どうやら汝は妾が銀杏の異能により汝の事を知り、この戻り森から追い出そうとしていると思っているようじゃが、それは違う」

 千早はミヤシロの言葉に虚をつかれ、直葉と閑芽はひとまずミヤシロに千早を追い出す気はないと分かり、安堵の息をつく。

「じゃあ、なんで僕に会いたいなんて言ったんだ?」

「それは無論、汝の力になれたらと思うたがゆえよ」

 何を当たり前の事を、ミヤシロは千早の問いの方が分からないというような顔をしている。

「戻り森に迎え入れたからには汝もこのミヤシロの家族じゃ。勝手に出ていくなど許さぬぞ」

 ミヤシロはにっこりと笑顔を見せる。

「ミヤシロ様……」

 話を聞いていた直葉は自嘲じみた気分だった。何が意図が分からないなら確かめるまで、と自分は肩ひじを張っていたのか。この戻り森の長であるミヤシロはこういう人だったのに。

 戻り森で生きる全ての異能と異族を家族と言い愛する、我らの長であり母。そんな人が一度受けいれた自分の家族を、そうそう追い出すような真似をするわけがなかったのに。

 だが千早はミヤシロの言葉に安心するどころか、顔色をより一層悪くしていた。

「千早?」

「駄目だ、駄目だ、僕はここにはいられない」

 千早は頭を振り、ミヤシロに詰め寄る。紅葉と銀杏がそれを阻み体を抑え込もうとするのにも、構わずにだ。

「僕の事情を知ったんなら分かってんだろ!?僕が誰に追われてるのか?僕を戻り森におくって事はそいつら敵にまわすって事なんだぞ?」

 彼らを敵にまわすという事がこの国で生きるうえで、どれほどの事か本当に分かっているのか。

「それに僕は、僕は……」

 僕は本当は、もう……!

 感情に任せて何もかも吐き出しかけた時、それは起こった。

 唐突に襲った体全てがしびれてしまうような錯覚を覚える寒気、とてもじゃないが立っていられない。

「千早!?」

「どうしたんだ?」

「しっかりするのじゃ!」

「どこか痛むの?」

 いきなり膝からくずおれた千早に、慌てて全員が駆け寄る。ただ直葉だけは、千早のこの様子に覚えがあった。

「これってまさか……」

 千早は直葉の指をつかみ、歯と歯の間から無理やりねじり出すように訴える。

「にげ……こ……ら……ます……に……」

 ニゲロ。ココカラ、イマスグニ。

 間違いない。千早の異能、危険予知が何か危ないことが起こると予知したのだ。

「みんな、ここから……っ!!」

 直葉の言葉は、最後まで音になることはなかった。

 別の音が、直葉の言葉をかき消したからだ。

 ドン!!とまるで雷鳴がおちるかのような轟きと、結社をいや、戻り森全体を揺らす地鳴り。 

 ミヤシロの小さな小さな両手が床を力なく叩いたように見えたが、それは倒れこみそうになった体を支えるための動きだった。

「ミヤシロ様!?」

「いかがなされました!!」

 ミヤシロは荒い息をもらしながら、社の外を睨んだ。

「結界が……破られた……!」

「!まさかっ!?」

 戻り森が築かれてから、一度として破られる事のなかったミヤシロ一族の結界が破られたと言うのか。一体誰が?どんな目的でそんな事を。


 そこかしこから悲鳴や怒声があがっている。鳥たちは木々から飛び立ち、気でも狂ったかのように喚きながら、空を埋め尽くす勢いでとび回っていた。

 そんななかで散歩にでも行くような気軽さで戻り森に入ってきた二人がいた。

「綺麗だなぁ。これが戻り森の結界だったんだー」

 ゆっくりと空から降り注ぐガラスの破片にも似た虹色に煌めく欠片に手を伸ばす、若葉色の目と襟足の長い桜色の髪の美女と間違えそうになるが、声で男と分かる美青年。

「見た目が綺麗でも強すぎだろ、ここの結界。壊すのにこんなに時間かかったの、すげぇ久しぶり」 

 肩に幅広の大剣を担ぐ、日に焼けた小麦色の肌に琥珀の目と灰銀の髪を左側でひとつに結んだ、やや筋肉質ではあるものの色気のある女。

「あの戻り森の結界だからねー、仕方ないよ。でも十夏トオカちゃんのおかげで中には入れたわけだし」

「お前も少しは働けよ、億斗オクト

 にこにこと媚びるような笑みに手までもみ合わせている億斗に十夏は呆れながら息をつく。

「もっちろん!今から働きますって。きっちり探し物を見つけないとね」

 億斗の獲物に狙いを定めるような目に、十夏も好戦的な笑顔で応え、二人の招かれざる客はそのまま前へと進み始めた。

 

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