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【完結】俺と王様の異世界転移転生  作者: 真義あさひ
第四章 帰りたいのに帰れない

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219/220

俺、夢見の終わり(本編完結)

※作品タイトルを

「異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ」から


「俺と王様の異世界転移転生」に変更しました。

 暑い。なんか空気がじっとりしてて、でも真夏ほどじゃない。

 日本だったら九月下旬くらいの、まだ残暑の時期みたいな感じ。


 海辺のパラソル下のベンチでうたた寝している男がいる。

 動きやすいTシャツと短パン姿で肩には革製のサスペンダーを吊り下げている。

 顔には黒縁の眼鏡。

 まだ二十代前半のどこにでもいそうなお兄ちゃんだ。


 サンダルの足元にはバケツがある。覗き込んでみると魚が水の中で泳いでいる。釣りでもしてたようだ。


 その男を見て俺はすぐわかった。夢で寝てるところを見たことがあった勇者君だ。

 カズアキが転生した、王様の親戚である。

 優しげだけど、姿勢の良い凛とした雰囲気の、品の良い黒髪黒目のメガネ君だ。ばあちゃんやカズアキと顔つきがそっくりだべ。


「ぷぅ……ぷぅぅ……」


 可愛らしい子供の寝息も聞こえて、ん? と思って見てみると、勇者君は手に何か持っていた。

 半透明ピンクの、見るからにぷにっと弾力のありそうな小さなボディは……ウパルパ様じゃないか!?


「………………?」


 日差しが俺の身体で遮られたからか、勇者君が目を覚ました。


 勇者君はぼんやりしている。まだ半分夢の中にいるかのような顔つきだ。


「やあ、勇者君。調子はどうだい?」


 フードで顔を隠したまま話しかけるとビックリした顔で俺を振り向いたが、俺の腰回りに真紅の魔力を帯びた(リンク)が出てるのを見て納得した様子。


「え、ユウ君?」

「お前、覚えてるのか!?」

「え、あ、……ええと、どなたでしたか?」

「………………」


 寝ぼけて俺を愛称で呼んだが、意識がハッキリ覚めたらすぐ忘れてしまったようだ。

 俺のことがわかるわけがない。前世の記憶は基本的に覚えてないって聞いたぞ。

 あるいは、――うたた寝していたこいつが、王様みたいに夢見の術を使っていたなら話は別だが。


 それから少しだけ勇者君と話をした。


 勇者は見た目も性格も言動もまんまカズアキだ。

 てことは食いしん坊の天然タイプのはず。

 実際、彼が持っていた〝聖剣〟はなんと柳葉包丁に似た魚切り包丁の形をしていた。

 おま、お前……それ邪悪と戦えるタイプの武器じゃねえべ!?


 俺はこの勇者君がなんで邪悪を倒しきれなかったか知ってがっくりきた。

 武器が適さなかったんじゃね……?




 あの死にかけの神人カップルが俺に託した力は、さてどうするか。


 勇者君は手に何か握っていた。ウパルパ様を持ってるのとは別の手にだ。

 半円のコインのペンダントだ。聞けば死んだ親父さんの形見だそうで、たまに取り出しては眺めて心の慰めにしているらしい。


 あ、そうか、と俺は気づいた。

 たくさんの人々から託された力をどこに注ぎ込めばいいか。このコインだ。


 俺は、カズアキに抱いていた『こいつを助けたい』『幸せになってほしい』ありったけの気持ちをコインのペンダントに注ぎ込んだ。

 (リンク)から自分を通じて、意外なくらい大きな力が湧き出てくる。王様がこの勇者君を助けたい想いも加わって相乗効果だ。


 というか、王様めちゃくちゃこいつのこと好きだろ。なんかそういうの、勇者君と会ってしみじみ理解した。

 あの、一目惚れした竜殺しのべっぴんとはまた違った意味で好きなんだろな。


「お前、独りで頑張るなよ? 皆、お前を助けたいと思ってるんだ」


 軽く肩を叩いてやる。

 と、「あっ!?」と勇者君が驚いた声を上げた。


 コインが彼の持ってた聖剣に引きつけられて、融合したのだ。

 ゆっくりした現象だったから俺も目で確認した。革のサスペンダー越しにじわじわと……


「さすが異世界。なんか聖剣アクティベートしたんじゃないか?」

「そうなんでしょうか?」


 しきりに首を傾げる勇者君が、金色の魔力を全身に帯び始める。

 やがて胸周りに金色の光の円環――(リンク)が出て、体内に収束していった。


 黄金のオーラをまとう勇者に俺は満足した。

 この世界、人が持つ魔力は様々な色があるが、金色は勇者だけのものだ。世界を救う者だけの色。

 勇者が救世主(セイヴィア)とも呼ばれてる理由でもある。


 勇者に目覚めた彼の助けになりたいと思ったが、自分は異世界人だ。

 夢の世界を利用してここに来たけれど、元の日本に戻らなくてはならない。


 そこでふと、かつてど田舎村でカズアキが遺骨と接触したときのことを思い出した。


「もしかしたら、俺も」


 今まで考えなかったわけじゃない。

 けんども、自分が消えるかもと思ったら怖くて、できるだけ意識を向けないようにしていた。


 だけど、ど田舎村から日本に戻るとき、次元の狭間で王様に教えられたことがある。


「王様。あんたに会いに行く。偶然じゃなく、俺の意思で。そしたらこの旅も終わる。そうなんだろ?」


 俺は王様が見ている夢だ。ならそうと強く願って、本人と会えば恐らく……


「俺はアケロニアに戻るよ、王様。あんたとして」


 小さく呟いていると、勇者の名前を呼ぶ声がする。数名の若い男女だ。勇者の仲間たちだろう。


「カズン! 晩飯の魚は釣れたのか?」


 声をかけてきたその中の一人に見覚えがある。

 黒髪と黒い目の、背が高く体格のいい男前。軍服ではなかったが冒険者の装備姿だ。

 かつて夢の中で大剣を貰ったり、教えを受けたりしたときより、幾分か若い。


 そうか。あの男が数年後、あの夢で会った王様になるんだな。


 俺は勇者の傍らに立ったまま、深く被っていた外套のフードを外した。


「ユーグレン?」


 勇者が俺を見て、不思議そうにあの王様の名前を呼んだ。


「ぷぅ?」


 勇者君の手の中でウパルパ様がパチッと目を覚ました。

 まだ眠いのか、ぼんやりしたお顔を短い前脚でこすこす擦ると、目の前にいた俺を見てハッとした後、鮮やかな青いお目々でニヤリと笑う。


「いい夢見れたか? なのだぷぅ?」

「……次はちゃんと愛のある夢を見せてくださいよ」

「おまえに愛など百年早いぞぷぅ!」


 くそ。この生意気なウパルパ様が夢の起点かよ!

 萌え可愛い幼女声なのに言ってることは全然可愛くない。

 百年も待ってたら俺、墓の下のお骨になってるじゃん。


 ……でも良かった。まだ誰も倒れず、死んでもないところが夢見の起点なら、ここから死ぬ気で頑張れば未来の悲劇は避けられるかもしれない。


「われも悪い夢を見てしまったのだぷぅ。もっと幸せな夢が見たいぞぷぅ~」


 あれだろ、邪悪から守るためにこの国を海の底に沈める夢だべ?

 あの死にかけカップルが言っていたバッドエンドの世界線だ。

 ゆ、夢で良かった……のか? いやそれほんとに夢だべな!?


 さあ、いよいよ本当の敵と対峙するときだ。

 俺が知る限り、この後は、勇者の父親の仇が襲来する。世界を崩壊させるほど凶悪な邪気を持った、最悪の魔だ。


 上手くやれたら、勇者は王様を庇って倒れないし、数百年後にあの神人カップルが死ぬ未来も、世界の崩壊も回避できる。


 まあこの後、王様の激重な恋や、竜殺しのべっぴんの一途な想いが叶うかはわかんねえし、この勇者が二人から逃げられるかは未知数だけんども。




 ――そうして夢が終わり、現実は再び動き出した。


 俺と王様の異世界転移転生は、ここで終わりを迎えたのだった。





おしまい



完結までご覧いただきありがとうございます。

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