【閑話】 ブレイバーと呼ばれた少女5
暗い・・・暗い・・頭がガンガンする、頭が痛くてうまく考えられない・・・
ここはどこなんだろう・・・
私は今どうなってる?
私は今倒れている?
頬っぺたに土の感触・・・私は何をしていた?
深淵の底に潜って、セミの幼虫を見つけて、セミの羽化を見て・・・
!!
そうだ!セミの鳴き声で起こった衝撃波で吹き飛ばされて!それで多分気絶しちゃったんだ!
やばっ!早く起きなきゃ!周りは今どうなってる!?
初香は衝撃波で受けたダメージでうまく動けなかったがそれでも体を起こす
気絶する前とは打って変わって静寂が支配する暗闇の空間、耳を済ますと何やら遠くから話し声が聞こえる
「こんな場所で話し声?騎士さん達が来てくれた!?」
ホンのわずかな希望にすがり初香は話し声の方に意識を向ける、すると話し声の方から「ポゥッ」と明かりが天井に向かい打ち上げられた
その明かりが打ち上げられてから1拍置いて
またセミの大合唱が始まる、さっきよりは慣れたのか耐性が付いたのか、初香は耳を押さえて目をつむるだけで耐えることが出来た
必死に耐えながら、さっきの話し声の主は大丈夫だろうかと目を開ける
え?
なに?
なんで?
なんで魔族がここにいるの?
魔族、それは人間と世界を取り合う忌むべき存在
能力は高く下手な冒険者が敵うはずもない、レベルの低いうちは会ったら即殺、己の不幸を呪うしかない
唯一の救いは数が少なく人間の生存区域に現れる事などまずない事、会ったらとにかく逃げること
それが最善、と聞かされていた、こんな王都の近くで会うはずがないのに・・・なんで・・・
更に絶望的な事に魔族は3人いるみたい、こっちに気付いたみたいで物凄い勢いで此方に走ってくる
「ぐおおおおぉぉぉっ!」
「きえあああああっ!」
「うひひひひひひいいいっ!」
何を言っているのかわからない!危険な呪文!?悪魔語?ダメ!体が動かない!
耳の辺りから伸びる白く真っ直ぐな角、柔らかいのかびょいんびょいんと揺れておりさらに背中からは無数の耳から生えた角と同じ様な白い触手がわっさわっさと揺れている
禍々しい紫の皮膚がテラテラと輝く魔族
「うひあぁぁぁ!」
あろうことか白い羽根を持ち左右にユラユラと揺れ飛び此方にハッキリと認識させないように近づく慎重な魔族
「うひうひうひひいぃぃぃっ!」
なぜか頭だけセミに狙われバコバコッと何匹も突進され首から上が左右に残像を残すくらい揺れている魔族
「いだだだだだあぁぁぁぁっ!」
3人共に同じ角、同じ触手が生えており、その形相はまさしく悪鬼、時折魔方陣のような紋様が浮かびは消え浮かびは消え、それがまた一層不気味さを増している、引きつったようなおぞましい笑顔を油でテラテラと輝かせている様だ、初香は郷土のお祭りに出てくる赤い妖怪を伸ばして叩いて引きずって油で炒めたらあんな感じかな?と焦る中で考えていた
地獄の門番でももう少し穏やかな顔をしているであろうと思えるほど凄まじい形相であった
「ひっ!ひいぃぃっ!」
地獄?いえ、それよりも地獄、自分でも何を言ってるのかわからない、これは無理、ひとまわりしてビミョーに冷静になった初香は冷静に恐ろしさを感じて
「すいませーん、お先に落ちまーす」
などど訳のわからないことを言ってまた気絶するのであった
さわさわと揺れる心地よい植物の感触と穏やかな日差し頬に感じ初香は意識を取り戻す
・・・・何だか悪い夢を見てたみたい・・・
まるで車で引き摺られたように体中が痛い・・・
ここはどこなんだろう・・・
私は今どうなってる?
私は今倒れている?
立っている?
土の感触?・・・私は何をしていた?
深淵の底に潜って、セミの幼虫を見つけて、セミの羽化を見て・・・
!!
魔族!
意識が急速に戻り体が緊張で固まる、しかし身動きが取れない
ボケていた視界が次第に戻り、初香は辺りを確認する
首から下に広がる地面、そこには稲科の植物だろうか?それが見渡す限り広がっている
どうやら私は畑の中に埋まっているみたい、なんでこうなったのかはわからないけど・・・なんで?
動けるか試しているとどうやら右手だけは地面から出ているようでなんとか動かせる
「助かった、のかしら?、いえ、助かってないわよ、ね?」
なんとかここから出ないと明るい未来はなさそう、色々頑張ってみたけど結局出られるまでに3日かかった
3日目に出会い、助けてくれたのが
今の私の飼い主
雪たんだ




