【閑話】 ブレイバーと呼ばれた少女3
「ふっ!」
気合いと共に繰り出された突きによりアビスラットが塵に帰る、それと同時に体調の変化を感じる
「あ、レベル上がりました」
近くで護衛をしてくれている騎士さんがちょっと不機嫌そうにため息を付きながら近づいて来る
「はぁーっ、こんなに簡単にレベルを上げられちまうとこっちはやってらんねーんだがなー」
少し笑いながら言う言葉に棘はない、短い付き合いだけど少し間違えば死んでしまう今の状況で少しでも重い気持ちを消してくれるように気遣ってくれているのがわかる
「なんか、ごめんなさい・・・」
それでも少し気まずくなって謝ってしまう、そんな私の頭をちょっと乱暴に騎士さんは撫でながら
「いやいや、誉めてんだぜ、これでレベルも二桁入っただろ?もう底に降りても問題ないな、どうする?行ってみるか?」
私は少し考える、もうアビスラットでは怪我もすることはないくらいに強くなったと思う、それに底にいるMSも槍の射程なら問題ないと思う、あと、なんだか戦うのが楽しくてもっと強いMSと戦いたい気持ちが強くなって来ているような気がする
「はい、行ってみたいです」
私の返事を聞いて騎士さんは腕を組み少し考えてから
「わかった、ただし今日はここでキャンプするからゆっくり休め、申し訳ないがここから先は俺達は付き合えない、明日朝までしっかり護衛するから万全の態勢を整えとけよ」
そう言うと騎士さんは周りに散らばっている他の騎士さん達を集めてキャンプの準備を始めます
ぐっ、と握りしめた拳を開き見つめてみる
「大丈夫だよね、私・・・少しは強くなってるよね・・・」
誰に話すでもなく小さく呟き、初香もキャンプの用意を手伝いにみんなの元へ小走りで近づいて行くのであった
パチパチとたぎ木のはぜる音と騎士さん達の楽しい話に心が和む
わたしの隣にいる女騎士さんは冒険者からの成り上がりで結構苦労したみたい、貴族の人もいるから結構差別的で閉鎖的な世界だと思ってたんだけどそういうことはあまりないらしい、騎士になる貴族様は変わり者か志が高い人が多いらしく逆にそんな事を言う人は精神が弱い、とか、そういう奴は大体ちゃんと訓練しないのがセオリー、足手まといにしかならない、第一戦場では仲間か敵か、しかないのにそんなややこしい事を言ってたら信用出来ん、そういうのは貴族様がやってくれ、とか言われて敬遠されてしまうらしい
確かに戦争でも始まればそんな事を気にしている人に背中は任せられないだろうしね・・・良くわかんないけど
殺伐とした環境での穏やかな楽しいひとときでかなりリラックス出来た私はぐっすりと眠る事が出来ておかげで体調も万全だ
ただ、別れる際に騎士さんが
「・・・すまん」
と言ったのがちょっと気になった
底に降りると大きな洞窟のような入り口がありその入り口を少し歩くと本格的な底になるらしい
ここはいつまで経っても洞窟なので多分洞窟タイプの底なんだと思う
洞窟タイプは比較的に楽な部類に入る深淵と聞いてるからちょっと安心した、でも昆虫はちょっと苦手かも、本気でお金稼がなきゃいけないからそんな事言ってられないけどね
「よーし、いっちょやっちゃいますかー!」
そう言うと初香は槍を握り直し奥に進むのであった
「本当に良かったのですか?部隊長」
1人深淵の底に降りていくブレイバーの後ろ姿を眺めている部隊長に女性の騎士は近づきながら話しかける
「第一レベルアップを助長するのも違反行為ですよ」
部隊長は振り返らずに静かに答える
「手は出してない、勝手にMSと戦って勝手にレベルアップしただけだ、昨日だってキャンプしていただけだ、深淵でキャンプするのだぞ、辺りを警戒するのは当たり前だ」
「ふふふ、その通りですね、私達もそろそろ引き上げませんか?これ以上は帰還が夜になってしまいますよ」
女性の騎士はそう言うと返事を待たずに皆の元へ行き隊列を整え待機する
「すまん、だが、君の能力は危険すぎる」
洞窟の入り口から目を反らすように振り返り
「帰るぞっ!」
と一声掛けて歩き始める、あんないたいけな少女を自分達の都合で深淵の贄にする事を恥じながら
その後、王都に戻ると少女の素行や精神鑑定結果から説明すれば普通に生活出来た事が判明
ブレイバー抹殺の為に魔族が暗躍していた事も判明し、手遅れとはどこかで理解しながらも自分達の良心への言い訳の為に冒険者ギルドにブレイバー回収というクエストを発注する事になるのは別の話
何でもある部隊が存続まで掛けて進言したらしいのは噂話か真実か・・・




