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華いちもんめ  作者: Suzk
6/6

咲く華の先にきっと、一等星が輝くように

咲いた花はいずれ枯れる。


ならどうして花を咲かせるの?


種を残すため、また次の人生で花が咲くのを待つ。


他に、その花のまま飾られていくのもある。


枯れる前に形を残す、それも人生。


枯れた後の儚さ、咲いたこともいずれ忘れられていく。


花をそのまま残してその人生を全うする、それもまた人生。


その美しい花のままでいられたとしても、いずれ廃れていく。


特別さは消え、当たり前になり、見向きさえも。




でも、何故君は華を咲かせようとするのか。




どの道を歩んでもいずれ忘れられ、廃れていく人生でも、



咲いた華の先にはきっと、




笑顔が咲いているからね。







__________








「本日、東京・文京区の東京ドームでは、」



「芸能事務所Color:U所属の人気アイドル、御殿場さんによる初のドーム公演、」



「 1st Dome Live『Beyond the Stars ~星の彼方へ~』が開催される予定です。」



「開場は午後4時、開演は午後6時を予定しており、周辺の道路や公共交通機関では混雑が予想されています」



「ご来場予定の方は、時間に余裕を持ってお出かけください。」







いつもより早く目が覚めた。

ソワソワとした気持ちを抑えられず、テレビをつけていた。


その内容は、自身のライブについて。


ついにここまで来れた、まだ実感は湧かない。


まだ信じきれちゃいない。


瞼を閉じて、アイドルという存在に出会ったあの日を思い出した。







「見てみたいです」



「…誰かに必要とされるなら。」







「君が望むなら__ここで、人生をやり直せるよ。」







「僕を最高のアイドルにしてください。」







「大勢の希望の光になって、君自身が必要とされるような、そんな、世界で一番輝くアイドルにしてあげる」







「これからの未来まで、誰かに決められていいものじゃない!!」



「夢を持つことまで、奪われる理由にはならない!!!!!!」







「僕は、過去を肯定しない。でも、背負うことからは逃げない」








長かった、ただただ長かった、


僕が "生きている" という実感ができるまでが。





御殿場「来た......。よし、行こう」




迎えが来たらしい。


そうやって新しい一日の運命を歩み進めた。








松江「おはy....って、えぇ!?!?!」



松江「うそ!!いつ金髪にしたの!?!?」



御殿場「昨日の打ち合わせの後です(^^)、似合ってますか??」



松江「最高だよ!!、みんなぶっ倒れちゃうんじゃないの??笑」



御殿場「そうかな〜??、ふふっ笑」



松江「ほら乗って!!行くよ!!」



御殿場「は〜い、今日もよろしくお願いします!」





松江「御殿場くん、緊張してる?」



御殿場「そりゃあ......3時には目覚ましましたから.....笑」



松江「そうだよね...笑、今度は1人であそこに立つんだからねぇ...」



御殿場「松江さんにとって、この6年間は長かったですか、短かったですか?」



松江「う〜ん....6年か、もう6年経ったんだね」



松江「短かった、かな」



松江「6年にしちゃ色々ありすぎたかなって」



松江「でも、おかげで僕もみんなも事務所自体も大きく成長することができたかな」



松江「ありがとね」



御殿場「やめてくださいよ、今日はこれからですよ」



松江「そうだね、」



松江「....そうだ、御殿場くん」



御殿場「何ですか?」



松江「本番前、ちょっと話がしたいな」



御殿場「...?わかりました」



松江「色々話してるうちにそろそろ着くね、準備して」



御殿場「....はい!!」







一年前にみんなで使った楽屋。

今日だけはずっと白く、広く感じた。


そう思うと、少しだけ不安になったのも束の間。




ルイ「お〜〜〜〜〜い、御殿場く〜ん!!!!!!」



御殿場「あっルイさん!!おはようございます!!」



御殿場「みなさん来てくださったんですね」



ユカ「大事な後輩の初めての1人ドーム公演に来ないような先輩じゃねぇから」



ユカ「なぁユリ?」



ユリ「ふふっ、そうね」



セナ「ASTARIA(アステリア)の曲もちょっと歌ってくれるって聞いたけど?」



ナツ「あぁそうだったね、何歌うの?何も聞いてないけど」



御殿場「秘密です(^^)」



セナ「あら〜?あなたそんな子だったかしら?」



御殿場「なったんですよ」



ナツ「ははは!!、そうだな、成長したなぁ」



秋光「御殿場さん!!おはようございます、ちょっと遅れちゃってすいません....」



御殿場「斗真!!、全然遅れてなんかないよ。大丈夫、来てくれてありがとう」



秋光「御殿場さんの曲全部聞いてたら朝になっちゃってて....」



御殿場「はぁ〜〜〜.....何回言ったら分かるのさ、寝てくれって」



秋光「うっ...」



御殿場「それで体調崩して熱出ました、来れませんってなったら自業自得だぞ?」



秋光「はい....すいません」



秋光「俺...いつか御殿場さんと一緒に歌いたいです、一緒のステージに2人で立ちたいです」



御殿場「いいじゃん、やろうよ」



御殿場「ユニットとか組んじゃったりして」



松江「え、やる?というか企画進めてたんだけど」



御殿場・秋光「え!?!?!?!?!?!?!?」



秋光「それは早くもっと言ってくださいよ!!!!!!!!!」



松江「や〜....だって、ユニット名の案がまだ出てなかったり、デビュー曲の作詞作曲やってもらいたい人にメール送ったりってだけの段階だし....」



御殿場「もうそこまでいってるんですか、ぐらいですよそれって」



松江「あれ、そう?」



ルイ「まだそこら辺の感覚ズレてるのは変わってないよねぇ、悠さんって」



松江「ははっは」





スタッフ「御殿場さん、松江さん、通しリハ行いますので準備お願いします」





御殿場「呼ばれちゃった」



松江「いこっか」



御殿場「はい、じゃあ行ってきますね」



ASTARIA・秋光「いってらっしゃい!!」








ルイ「....大きくなったなぁ」



ルイ「悠さんが拾って来た時はまだちっちゃくて細くて、感情もなさそうな子だったのに」



ユカ「あれだけ感情出せるようになったあいつはもう最強だよ」



ルイ「うん、そうだね」


























通しリハを無事終わらせて、ケータリングを食べて、メイクして。



開演まで、あと40分といったところだ。





あの頃より一段と重く、キラキラと輝いている衣装を見つめる。




鏡の前に立った御殿場は、ゆっくりと袖に腕を通した。


赤いチェックの袖と襟がついた、ベージュのジャケット。


布は思ったよりも軽く、けれど肩に乗った瞬間、

その重みだけは確かに伝わってきた。



ボタンを留めるたび、

今日ここに立つ理由が、一つずつ形になっていく。



背中に手を回すと、

指先が、はっきりとした菱形の“空白”に触れた。


完全には覆われていないその穴の向こうで、

裏地の赤いチェックが、静かに覗いている。


動くたび、背中から長く伸びた布がひらりと揺れた。

表は落ち着いたベージュ、けれど裏側には、隠すつもりのない赤がある。


__全部隠さなくていい。

そう言われているみたいだった。



ジャケットと同じ色のズボンを整え、

最後に姿勢を正して、もう一度鏡を見る。


そこに映っていたのは、背中を押される側の少年じゃない。

自分の足で、光のある場所を選んだ人間だった。



御殿場は、息を一つ吐いて、

小さく笑った。



「……行こう」



その言葉と同時に、

背中の布がまるで舞台を知っているかのように、静かに揺れた。





松江「似合ってるよ」




不意に、背後から声がした。


御殿場が振り返る前に、

松江はすでに鏡越しに彼を見ていた。




松江「赤、似合ってるよ」




指先で、ひらりと揺れる背中の布を軽く持ち上げる。

裏地の赤チェックが、照明を受けて一瞬だけ強く浮かんだ。





松江「最初の衣装も赤の襟だったよね、懐かしい」



松江「うん」



松江「今日の君にちょうどいいね」





松江はそう言って、満足そうに小さく頷く。



御殿場は少しだけ目を伏せて、

それから、鏡の中の自分を見つめ直した。



松江「朝言った話、してもいい?」



御殿場「はい、大丈夫です」







松江「....実は僕ね、」



松江「昔アイドル目指してたんだよ」



御殿場「え、そうなんですか....?」






松江「....うん」



松江「大きなテレビん中でキラキラ輝くアイドルを見て、あぁ僕もあんなんなりたいって思うようになって」







松江「でもうちの親父は許してくれなかった」



松江「アイドルなんて女々しいもの、毒になるからやめなさいってさ笑」



松江「それからはテレビを見ることを許されなくて勉強漬けになって、」



松江「はは...僕これでも東大卒なんだよ??笑」






松江「...でもそれでも夢を諦められなくて隠れて事務所を駆け回ったけど、やっぱダメで」



松江「自分がダメなら誰かをアイドルにって考えになってこの事務所を立ち上げた」



松江「同じくアイドルを目指してた若い姪っ子とね」



松江「事務所の名前のColor:Uってのは、"叶える" のリズムからとったんだ」



松江「自分の代わりに誰かの人生に色を付けたかった」



松江「環境が原因で夢を諦める人に手を差し伸べたかった」



松江「だから僕にとって君は...」



松江「.....ごめんね、こんな話本番前に」



松江「でもどうしても今日、この場で言いたくて…」



松江「だって僕の夢もやっと叶うんだから…」



御殿場「何言ってるんですか」



御殿場「こちらこそ、僕を生かしてくれてありがとうございます」



御殿場「あの日、もし松江さんに出会ってなかったら」



御殿場「家に帰ったあの時に、遠い川にでも行って身を投げたと思います」



御殿場「あの場所には僕が穏やかに眠れる墓すらなかったんですから」



松江「実際には僕が君を見つけた、じゃなくて」



松江「君自身が勇気を出して踏み出したからこそ、僕らを見つけられたんだよ」



松江「それ、今まで忘れてたでしょ?」



御殿場「.........あぁ、そっか」




望んだ訳じゃない孤独の修学旅行。

見知らぬ土地で音が聞こえた方へ導かれるように足を踏み出した。



それが、始まりだったな。



あの頃は、アイドルや推しだけでなく、テレビやSNS。

どんな人間であれ、夢を持てるということなんて知らなかった頃だ。



出会わなければ、出会っていなければ。


僕はこの人生を変えようともしなかっただろうし、

この世にすでにいなかったかもしれない。



始まりの場所も、時代も何もかも選べないままだったというのに。



それをたった一度の勇気で、人生を変えられる出来事になったということ。




それは「奇跡」なんて言葉だけじゃ足りない。




今までの人生が暗く灰色だったのは、きっと、



これから咲きゆく人生がより色鮮やかに輝くための土台だったのだろうか...。






そう思うと....






松江「今の調子はどう?」



御殿場「震えが止まらないです」



松江「怖い?」



御殿場「いえ、」



御殿場「興奮して震えが止まらないんです」



松江「.....!?」



松江「かっこよくなったね」



松江「今の君に心配はいらないみたいだね」





スタッフ「そろそろお時間で〜す!!ご準備お願いします!!」





御殿場は息を吸って、

ゆっくりと吐く。


背中の布が、その呼吸に合わせて揺れた。









松江「御殿場くん」







松江「今日君は世界で1番輝く人になる、この世界でたったひとつの"一等星"だよ」





松江「今度は君が世界に見つかる番だ」








松江「さぁ、君だけの景色が待ってるよ!!」




御殿場「……行ってきます」




松江は笑った。




松江「うん、行ってらっしゃい...!!」




松江「5万人、待たせすぎないようにね」








OPが流れている、お客さんの声が聞こえる。


僕を、みんなが待っている。






僕の登場はバックステージからだ。


バックステージを背中にして登場する。




これは、僕の過去を背負ったまま、


現在からもっと遠い未来へ、華々しいステージを目指して進んでいきたい


僕を信じてくれるファンのみんなとたくさんの星を見たい


というメッセージを込めての構成だ。








3、2、1





暗闇から光の中へ。



ここにいる全員が、僕を見ている。


声が聞こえる、今までよりずっとずっと大きな声が。



今までの葛藤や苦しみを消してくれるかのように、僕の存在を確かめてくれるように。







目を開けて、溢れんばかりの光の中に


僕の象徴である赤い光が一面の花畑のように揺れている。






幸せの声と光の中、また僕は一歩を踏み出した。














花はいずれ枯れる。


光も、歓声も、永遠じゃない。



それでも人は、今日という一日に意味を与えようとする。

誰かに見つけられ、誰かの心に残ることを願って。



過去が消えることはない。

忘れられることも、赦されることも、約束されてはいない。



それでも__彼は立っている。



選ばれなかった生まれも、語られなかった時間も、

すべてを抱えたまま、その名を呼ばれる場所へ。



その姿を見て、誰かが笑った、誰かが救われた。


それだけで、この人生は無意味じゃなかった。



物語は終わる。


けれど、ステージの上で鳴り止まない拍手だけが、

確かにそれを証明していた。




彼は、咲き続けていた。

そしてその先で、また別の華が芽吹いていく。





__ここから先は、近い未来の話だ。








「華いちもんめ」〜完〜



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