4話
瞳にわずかな光が差し込んでくる。体全体に気だるさがあって上手く手足を動かせない。
数秒もしないうちにぼやけていた視界が、はっきりしてきて周囲の状況を少しは把握することができた。
「ここは…どこ」
黒瀬由奈はあたりを見回しながら、そうつぶやく。
なにか、硬いものに寝かされている由奈が一番最初に目にしたのは、木製の屋根。底辺をなくした三角錐を真下から見ている形だ。左のほうを見ると、開けた砂利の敷かれた空間があって「ザァー」という効果音を立てて、雨が降っている。雨はどしゃ降りという言葉が一番似合う降り方をしていて、屋根の外で跳ねる雨粒が由奈の元へ届いてきそうだ。
「あ、先輩起きたんですね」
足元から聞こえるその声の主、由奈の足を膝に乗せたひよりは不安そうにはにかむ。
そして「よかった」と付け足した。
そのあと、しばらくして雨は弱まった。
由奈は後輩たちを軽く突っぱねて自宅に向かった。
公園から直進して急勾配を下った先にあるその二階建ての家は、明かりも灯さずに街頭に照らされて佇んでいる。
手入れされておらず雑草が生えっぱなしの庭を横目に玄関の扉を開け、由奈は空っぽな何もない廊下を通って自室へと向かった。
自室のカギを開けると、つけっぱなしのモニターが由奈を出迎えた。
そそくさとスクールバッグをベッドに捨てて、制服のままの由奈はキーボードをカタカタと打ち鳴らす。
一連のチャットを終えると、由奈は安堵のため息をついた。ブラウザを閉じてそこに映ったデスクトップに、にやける。
一年前のオカルト研究会の画像。そこにはひよりと由奈、同級生の灰原朔がいて、三人で身を寄せ合いピースしている。
由奈はモニターの横の写真立てを両手で優しく持ち上げて寂しげにほほ笑んだ
「お母さん、――」




