二 若松屋
その間宿の名主は、若松屋の喜兵衛なる人物であった。
鶴のように痩せ細った、四十がらみの男である。身なりは整っていて名主らしい貫禄もなくはなかったが、その痩せ細った顔に血の気は薄く、眼には怯えたような光が宿されている。それは、この地が妖異に脅かされているという何よりの証であるようだった。
「さ、さきほどはうちの若い衆がご無礼をいたしました。このように辺鄙な地に降魔師様をお迎えすることができようとは、この若松屋、心よりありがたく存じます」
広々とした座敷で葵たちと対面した喜兵衛は、恐れ入った様子で頭を下げている。きっと降魔師などを眼前に迎えるのは、これが初めてのことなのであろう。このようにうらぶれた脇街道に降魔師が通りかかることなど、そうそうあるわけがないのだ。
ここは間宿の真ん中あたりに位置する若松屋の、表座敷である。葵はぴしりと背筋をのばし、楓丸はだらしなくあぐらをかきながら、それぞれ喜兵衛と相対している。最初に若い娘が茶を運んできてからは他に姿を現すものもなく、その場には喜兵衛の声だけが鬱々と響くことになった。
「こちらの間宿は長らく平和な土地であったのですが、三年ほど前からたびたび妖異に脅かされて、手前どももほとほと困り果てていたのでございます。北や南の宿場であれば、いささか事情は違ってくるのでしょうが……なにせ間宿という場所は、なかなかお上にも顧みられないものでありまして……」
「なるほど。して、この地は如何なる妖異に脅かされていたのであろうか?」
「は……おもたるは、八本脚の妖異でございますな。日中にはそうそう姿を現すこともないのですが、夜になるたびに街道や町裏を徘徊し、行きあった人間はことごとくなぶり殺しにされてしまいました」
あの牛鬼どもが大挙していたならば、このような間宿など一夜にして滅ぼされていたことだろう。
しかし妖異は、人の無念や怨念を糧とする。殺めてしまえばそれまでなので、まるで畑を耕すかのごとく、じわじわとなぶって怨念を育てるのだ。間宿の人々が恐怖に震えれば震えるほど、それが妖異の力となるのだった。
「それなるは、東の山に巣食っていた牛鬼なる妖異である。かの妖異は、八日ほど前に退治した」
「は……退治? 八本脚の妖異どもを、すでに退治してくださったので?」
「うむ。しかしこの地には、すでに牛鬼とは異なる妖異が現れている。我々が先刻まで対峙していた妖異めは、白銀の髪を持つ女の姿をしていた。そういった妖異に心当たりはないだろうか?」
「いえ、そのような話は、とんと聞きませぬが……言われてみれば、ここ数日は八本脚の姿を見たという話も途絶えておりました。その矢先に、あのような人死にが出てしまったのです」
先刻の骸は、駆けつけた男たちの手によってすでに片付けられている。喜兵衛はその無惨な死にざまなど話に聞くばかりであったはずだが、その痩せた顔はいっそう血の気を失っていた。
「きっと妖異の話が途絶えていたので、迂闊な若衆が夜歩きなどをしていたのでございましょう。何やら人のあらそっている気配がいたしましたので、うちの若いものたちを見回りにやったのですが……そこで降魔師様とあの骸を見つけたという次第でございます」
「では、これまでにあのような骸が出たことはなかったのであろうか?」
「はい。八本脚に襲われた人間は、いずれも無残に喰い殺されておりました。刀でなます斬りにされたような骸など、これまでに出たという話はございません」
「ではやはり、あれは白銀の妖異めの仕業ということだ。牛鬼が討滅されたために、余所の地の妖異が流れてきたのであろう。妖異というのも獣と同じで、それぞれの縄張りで悪行を為すものであるようだからな」
喜兵衛はその痩せ細った身を、ぺたりと畳に投げ出した。
「ご、降魔師様! どうぞ後生でございます! なにとぞ、妖異の討滅を……このままでは、この地も滅びを待つばかりでございます。すっかり廃れたこの間宿では、ご満足のいくお礼を準備することも難しいかとは思いますが……」
「礼など、必要ない。この夜の宿さえ用立ててくれれば、それで十分だ。……かの妖異は、腹を満たすを明日の楽しみと抜かしていた。そのときこそ、必ずや討滅してくれよう」
「あ、ありがとうございます! どうぞこの夜は、存分におくつろぎくださいませ! すぐに食事と風呂の準備をさせましょう!」
葵が止めるいとまもなく、喜兵衛は座敷を飛び出してしまった。
座布団の上で物珍しそうに部屋の様子をうかがっていた楓丸が、葵のほうに向きなおる。
「葵よ、ふろとは何なのだ? それも食い物なのだろうか?」
「風呂とは、熱い湯で身を清める場のことだ。きっとこの問屋でも客人を迎える機会が多いため、そのような準備があるのだろう」
葵の故郷においては水も薪も貴重であったため、たとえ問屋でもそうそう内風呂など構えてはいないはずであったが、これだけ山深い土地であれば、また事情も異なってくるのだろう。湯屋は好かない葵であっても、内風呂であれば文句はなかった。
「まあ、そのようなものはどうでもよい。さきの妖異は明日の楽しみなどと抜かしていたが、それすらも我々を油断させようという策謀であるやもしれぬからな。決して気を抜くのではないぞ、楓丸よ」
「うむ。しかしおれは、どうにも腑に落ちぬのだ。……先刻の骸は、本当にあの妖異めが殺めたものであるのだろうか?」
「なに? まさか、あれが辻斬りの仕業だなどと抜かすわけではあるまいな?」
「辻斬りだか他の妖異だかはわからぬが、あの妖異めはおれを喰らいたいなどと抜かしておったろう? それでいて、斬り刻まれた骸には喰われた跡も見受けられなかった。これは、どういうわけなのだろうか?」
「どういうわけも何もない。なぶりたければ存分になぶり、喰らいたければ存分に喰らう。怨念の塊たる妖異の心持ちなど、人間にわかろうはずもないのだ」
「そうなのだろうか」と、楓丸は腕を組んで考え込んでしまった。
その姿に、葵は不審の念を覚える。
「お前は何を思い悩んでおるのだ? あやつは妖気を隠す手管をたずさえておるようだが、妖異であることに間違いはないのだぞ?」
「それは、おれにもわかっている。しかし……あやつの身からは、血の臭いもしなかった。それに、どれだけ妖気を隠そうとも、人を殺めたばかりの妖異と出くわせば、おれは……どうあっても、こらえようもない怒りにとらわれてしまうように思うのだ」
楓丸の黒い瞳には、ずいぶん真剣な光が宿されていた。
しかし、葵の中に迷いや疑いは存在しない。
「他にも妖異が潜んでいるというのなら、それもまとめて討滅するだけのことだ。あるいはあれが、人間の為した悪行であるというのなら……それは、人間の法にて裁く他あるまい」
「うむ。それはそうなのであろうな」
そんな風に応じつつ、楓丸はなかなか憂慮が晴れない様子である。
しばらくして、下働きの娘が三つ指をついて風呂の準備が整ったことを告げてきた。
「風呂か……呑気に湯に漬かっている場合ではないのだがな」
しかし葵は父親と死に別れてからのひと月ほど、川辺の行水でしか身を清めていなかった。大事な武具から身を離してまで、湯屋におもむこうなどとは思えなかったのだ。それに、嵬空山を頼れない現在は、路銀もはなはだ心もとなかったのだった。
これはいったいどうしたものかと、葵はいささか思い悩み――それからふっと、父親の言葉を思い出すことになった。
(妖異のために、おのれの生を縛る必要はない。用心も度を過ぎれば怯弱の思いとなり、怯弱の思いは悪念となって妖異の糧にされてしまうのだからな)
かつて父親は澄みわたった面持ちで、そのように語らっていたのだった。
葵が父親の伏士として働いていた、もっとも幸福であった時代の記憶である。
(食いたければ食い、眠りたければ眠る。酒を飲みたければ飲めばいい。常に気を張って生きるのではなく、どのようにくつろいでも即時に心持ちを切り替えられるように計らうのだ。そうでなくては、体よりも先に心のほうが参ってしまおうからな)
きっと葵の父親ならば、この場で風呂の申し出を断ったりはしないだろう。
それでようやく、葵も腹を決めることができた。
「相分かった。主人のもてなしに感謝する」
「は、はい。では、こちらにどうぞ……」
葵と楓丸は娘の案内で、風呂場まで導かれることになった。
屋敷には、騒擾の気配が満ちている。きっと街道に転がされていた骸について、取り沙汰されているのであろう。そうして心を惑わされることこそが、妖異に力を与えてしまうのだが――かといって、修行も積んでいない無辜の衆生に怯えるなと言いたてても詮無きことであった。
「こちらでございます。どうぞごゆるりとおくつろぎくださいませ」
二人を風呂場の戸の前まで案内すると、娘はそそくさと立ち去っていった。
戸を開けると、脱衣をするための小部屋が設えられている。向かいの壁にまた戸があり、そこからもれる湯気がうっすらと白くたちのぼっていた。
「よくわからんが、家の内で行水をするようなものか。そういえば、葵と行水をともにするのは初めてのこととなるな」
「たわけたことを抜かすな。男女が風呂をともにすることなどありえんし、そうまで広い内風呂を構えた家などあるわけもない」
「そうなのか? おれはいつも、母とともに行水をしていたのだが」
「……私はお前の母ではないぞ、うつけものめ」
「なんだ、つまらん」と、楓丸は幼子のように口をとがらせた。
「ならば、葵から先に身を清めるがいい。おれは戸の外で、番人の真似事でもしていよう」
「それでかまわんが、決してこの場を離れるのではないぞ。私よりも先に妖異の存在を気取ったならば、すぐさま声をかけるのだ」
「相分かった」と言い置いて、楓丸は戸の外に出ていった。
戸を閉めた葵は、ひとたび風呂場の様子をあらためてから、錫杖を壁にたてかける。普段であればいざ知らず、気配を隠して妖力をふるう妖異の存在に、葵はこれまで以上の警戒を強いられていた。
(しかし、明日まで眠らずに気を張っていることはできん。こちらが隙を見せれば、妖異をおびき寄せることもかなおう)
そんな心持ちで、葵は手甲と脚絆を外し、それから丸ぐけの手巾帯をほどいた。
墨染めの僧衣と小袖を脱ぎ、胸もとのさらしと褌をほどけば、もう生まれたままの姿である。裸身となった葵は降魔刀と錫杖を手に、風呂場へと踏み入った。
風呂桶の内側に鋳鉄の筒を入れ込んだ、いわゆる鉄砲風呂である。風呂桶の上にかぶせられていた蓋を外すと、真っ白な湯気が風呂場を満たした。
葵は湯桶でかけ湯をしてから、風呂桶の中に身を沈めた。
決して気を緩めたつもりはなかったが、はからずも吐息がこぼれてしまう。それほどに、しばらくぶりの風呂は心地がよかった。
(最後に湯屋へとおもむいたのは……父上を失う数日前であったか)
しかし湯屋というのは蒸し風呂であるので、風呂桶の湯に浸かったのはさらなる昔日となる。それがどれだけの昔日であったかは、容易く思い出せないほどであった。
右手に錫杖、左手に降魔刀をつかんだ珍妙なる姿で、葵は再び息をつく。自分が父親を失って以来、どれだけ息を詰めて過ごしていたか、あらためて思い知らされた心地であった。
(私は、いつになったら……父上の仇を討てるのであろうな)
そんな思いが頭をよぎったのも、風呂の心地好さに心を解きほぐされた証なのかもしれなかった。
葵の父親は月蓮の八葉でありながら、あえなく生命を散らすことになった。ならば葵は、それ以上の力を身につけなければならないということである。父親が一介の降魔師から月蓮の八葉にまで成り上がるのに費やされた時間は、二年――すでに同じだけの時間を降魔師として生きながら、葵はいまだ父親の足もとにも及ばない力量であった。
葵はふっと、湯の中でゆらぐ己の裸身へと目を落とす。
醜い姿だ――と、葵はさしたる感慨もなく、そんな風に考えた。
葵は長身の部類であったが、骨のつくりなどは町の娘と大差はない。その細い手足に無理な筋肉が乗せられて、あちこちに古傷が残されている。嵬空山における修行と妖異との戦いによって刻みつけられた、数々の傷痕だ。
また、胴体のほうも限界いっぱいまで研ぎ澄まされている。尻のあたりは骨が張っているためか、いっそ不自然なほど腰がくびれており、腹にはくっきりと筋肉の線が浮かんでいた。まるで、研ぎ過ぎて身幅の狭くなった刀のような体躯である。
それでいて、胸もとには白い乳房が大きく垂れている。
普段はさらしでぎゅうぎゅうに押し潰している、何かの果実のように丸々とした乳房だ。
それが葵には、滑稽に思えてならなかった。
(女人の分際で、何が降魔師だ! 女人は女人らしく、飯でも盛っているがいい!)
(その細腕で、妖異を斬れるのか? 妖異に色仕掛けなどは通用せんのだぞ)
(お前はどうやって、伏士の座をかすめ取ったのだ? まさか、大僧正の閨に潜り込んだのではなかろうな?)
心ない言葉が、葵の頭の中に反響する。
嵬空山には、偏屈な人間が多かった。その多くは妖異に家族を殺められた孤児などであったためか、常に憤懣をたぎらせて、人間らしい心緒を失ってしまっていたのである。
そしてそれは、葵も同じことであった。だから葵はそういった者たちと手を取り合おうというゆとりもなく、ひたすら修練に打ち込んでいたのだ。八年もの歳月を嵬空山の修行場で過ごし、二年もの歳月を降魔師として生きながら、葵は友人と呼べるような人間のひとりも見出すことができなかったのだった。
(私は嵬空山の掟を破り、貴重な降魔刀を我が物としてしまっている。この罪を贖うには……月蓮の八葉よりも多くの妖異を討滅する他あるまい)
葵がそのように考えたとき――
しゃりんッ、と錫杖の遊環が鳴った。
葵は弾かれたように跳ね起きて、風呂桶の湯を白い花弁のように散らしながら、左手の降魔刀を振りかざした。
白い湯気のこもった風呂場に、白銀の光が走り抜ける。
米粒のようにちっぽけな妖異が、その輝きに触れて消滅した。
風呂桶から飛び出した葵は、燃える眼光で頭上を振り仰ぐ。
湯気の向こうに、青白き輝きがいくつも灯されていた。先日の毒蜂よりもさらに矮小な妖異の群れが、天井にわさわさと蠢いていたのだった。
錫杖は、しゃくしゃくと鳴り続けている。
葵が再び降魔刀を振るい、その斬撃で妖異どもを殲滅しても、錫杖が鳴りやむことはなかった。
(やはり、この夜の内に攻め込んできたか)
葵は心を乱すことなく、表の小部屋へと移動した。
すると、そちらの戸板がどんどんと打ち鳴らされている。
「おい、葵! 妖異だぞ! このたびは、おれの心臓もしっかり暴れている! この家に、妖異が現れたのだ!」
「承知している! その場で、しばし待て!」
葵は一瞬だけ悩み、濡れそぼった身に小袖だけを纏いつけた。あとは乱雑に帯を巻いて、戸板を引き開ける。
「こちらには、蚤の如き姿をした妖異が現れた。お前も妖異を目にしたのか?」
葵が鋭く問い質すと、赤い瞳をした楓丸は一瞬ぽかんとしてから「いや!」と声を張り上げた。
「おれはまだ、妖異を見ていない。ただ、家の中はこの騒ぎだ」
屋敷のあちこちから、悲鳴が響きわたっている。どうやら妖異は、屋敷中に分かれ身を放ったようだった。
「手近な妖異どもを討滅しつつ、主が現れるのを待つしかあるまい。いざとなれば降魔刀を受け渡すので、決して私のそばから離れるのではないぞ」
楓丸の返事も待たず、葵は板張りの廊下を駆け出した。
それに追いすがりながら、楓丸が「おい」と声をあげる。
「葵は何だか、身体の形が変わってしまったようだぞ。胸もとに何か隠しているのか?」
「捨て置け。さらしを巻く手間を惜しんだだけのことだ」
「そうなのか。おれの母よりも乳が張っているように見えたので、ずいぶん吃驚させられたぞ。それに真っ黒の衣を纏っていないせいか、最初は別人のように見えてしまったのだ」
「……この危急の際に、何を抜かしておるのだ、お前は」
「うむ。自分でもそう思う。だが、どうにも黙っていられなかったのだ」
そのように語る二人の目の前に、若い男が飛び出してきた。
顔面に、蚤のようにちっぽけな妖異がびっしりとたかっている。男はあわれげな悲鳴をあげながら、何かに追われるようにして玄関口へと突進していった。
「待て! 外にも妖異が待ち受けているやもしれんぞ!」
葵と楓丸も、すぐさま男を追いかけた。
しかし男は半狂乱で、玄関口の外にまろび出てしまう。
瞬間――青白い閃光が、夜気を引き裂いた。
男は濁ったわめき声をあげながら、地面にくずおれる。
ただし、右の足首から先だけが、もとの場所にちょんと残されていた。
何かが、男の足首を寸断したのだ。
男は甲高い悲鳴をあげて、どぼどぼと鮮血の噴きこぼれる右足を抱え込む。
すると再び稲光の如き閃光が瞬き、男の左耳を弾き飛ばした。
「おのれ――ッ!」と、葵がそちらに駆け寄ろうとしたとき、背後から新たな悲鳴が轟いた。
振り返ると、主人の喜兵衛が死人の如き顔色で立ちすくんでいる。葵たちの肩越しに、男の無惨な姿を見届けてしまったのだ。
「喜兵衛よ! 決して外に出てはならぬと、家人らに伝えるのだ! 蚤の如き妖異などは、恐るるに足らん! 行燈の火で炙れば、すぐさま塵と化すであろう! そうして、自らの身を守らせるのだ!」
喜兵衛は見えざる革鞭に顔でも叩かれたかのように、無言でその場を駆け去っていった。
そうして正面に目を戻した葵は、ぎりっと奥歯を噛み鳴らす。
男はすでになます斬りにされて、血の海に沈んでしまっていた。
「これは恐ろしく、すばしっこい妖異であるようだぞ。人間の骨をも断ち斬れるならば、おれの木剣など役立たずだろうな」
真紅の妖気をめらめらとたちのぼらせながら、楓丸はそのようにつぶやいた。
葵はすぐさま覚悟を固めて、その手の降魔刀を楓丸のほうに突きつける。
「この屋敷に満ちた恐怖の念が、妖異の糧となっているはずだ。決して油断するのではないぞ」
「相分かった」と、楓丸は降魔刀を受け取った。
同時に、漆黒の炎じみた刀身が顕現する。
楓丸は真紅の妖気を尾に引いて、恐るべき妖異の待つ闇の中へと飛び出していった。