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BANDIT!  作者: 望田 壱
The blade for who?
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013


 013-1


「――わたしもいくよ、クロスケ。

 あの人には、色々と教えてもらったしクロスケの事でたくさん助けて

 もらったんだもの、わたしだってお礼がしたい……っ」


 糸目の男……フリオから話を聞き、俺を治療してくれた神森の民エルフの少女が

囚われているという、教会の総本山へ向かう事をアリスに話すと、

まぁ分かってはいた事だけれど、一緒に行くと言い出した。



「……そういや、俺はアリスにも助けられたんだよな。

 遅くなっちまったけど、礼を言わせてくれ……ありがとうな?」


「ううん、わたしは言うほど役には立てなかったから……

 ただ、出来そうなことを出来る範囲でしただけだもの」


「それでも、だ。

 アリスやあのゴスロリ、糸目が色々と動いてくれたからこうして俺は

 起き上がれて話すことが出来てるんだぜ?」


「うん……クロスケが、あの人達に連れて来られた時はほんとに

 びっくりしたんだから……腕がすごく大変なことになてったし……」


 そう言うとアリスは、包帯に包まれた俺の右手にそっと自身の

両手を添える……触れられた部分からアリスの温かさが伝わってきて、

先程からざわついていた気持ちが落ち着いてきた。


「アリスの魔力で、この右腕を形創ってるって聞いたよ。

 俺が寝てる間に、随分とできることが増えたんだな?」


 空いている左手で、アリスの銀髪をくしゃりと撫でる。

さらさらとした感触が心地よい。

 そのまま、俺はアリスに語りかける。


「……正直言うと、お前を連れて行きたくはないんだ。

 危険だってのもある……国と結びつきのある教会、それも総本山に

 乗り込んだ中に公爵令嬢が居たなんてことになったら公爵さんの立場がな」


「じゃあ、わたし……公爵家と、お父様達との縁を……っ!」


「バカ、それこそ止めるぞ俺は。

 ……あんなに良い人達と縁を切るだなんて言うな。

 明日には、公爵さん達も帰ってくるんだろ?

 そこで、ちゃんと話し合って決めてから来い……都市の、俺の部屋で

 待ってるよ」



 アリスを室内に残し、廊下に出ると扉の脇で糸目、フリオが待っていた。


「……悪趣味なやつだな、聞いてたのか?」


「いや、聞こえてへんで?ニイちゃんに挨拶しとこと思って来たら、

 中から話し声が聞こえてきたからな、待たせてもろとたんや」


「そうか、まぁどうでもいいけどな……んで、挨拶ってなんでまた?」


「上から帰投命令出されてなぁ、一度本部に戻らなあかん事になったんや。

 ……こういうのもなんなんやけど、姐サンの事……頼むで」


「あぁ、俺だって直接礼を言わなきゃ気がすまないんだ。

 意地でも囚われのオヒメサマ、連れ出してやらァ」


「期待してるで……オレも、用が済み次第合流するわ。

 サボってると、姐サンに再開した時が怖いからなぁ」


 しばらく二人で他愛もない話をしたが、やがてどちらからともなく

それじゃ、と一時の別れの挨拶を交わす。



「――クロスケ様、ここを発たれるのですかな?」


「ん?あぁ、シルバ爺さんか。

 ……公爵さんが帰ってきたら、伝えておいてくれないか?

 仕事しねぇ諜報員で悪かったな、って」


「おやおや、それではまるでお勤めをおやめになられるような挨拶では

 ございませんか?」


「そうか?……まぁ、場合によってはそうなるかもな。

 そういや、シルバ爺さんにも結構世話になったよな……アンタの紅茶と

 マフィン、ここに来る楽しみの一つだったんだぜ?」


「勿体なきお言葉でございます、クロスケ様。

 ……総本山に向かわれるのでしたら、西の王国を通るより

 一度北を経由した後に、本山へ向かって南下した方が妨害される確率は

 少ないでしょうな」


「……なんだ知ってたのかよ、ったく……人が悪いぜ?」


「悩んでいる若人にアドバイスを送るのもまた、年長者の役目と

 自負しております故、出すぎた真似とは思いましたが進言させていただきました。

 ……お気をつけて下さい、クロスケ様。

 教会、それも上層はこの世界のことわりの通じぬ者共が居るとか」


 いつも浮かべている柔和な表情を消し、歴戦の猛者の雰囲気を宿したシルバの

忠告を、ありがたく心に留める。

 そんな俺を見てシルバは、何かに納得したかのように頷くと少しお待ちくださいと

奥に消え、戻ってきた時には布で包まれた物を持ってくる。

 形状からして、剣……か?


「これを……"深淵の魔女"よりクロスケ様に、と預かっておりました」


「"深淵の魔女"?」


「クロスケ様をここまで運んでいただいた、神森の民(エルフ)の彼女の事ですが

 ご存知ではなかったので?」


「あぁ、向こうは俺を知ってたみたいなんだけど、こっちは何も知らなくてな。

 ……ここで開けていいか?」


 シルバが首肯したのを確認すると、俺はソレを包んでいる布をはがしていく。

出てきたもの、その姿は――


「……"黒の剣リベリオン"、にしては形状が違うな。

 それに、アレよりも一回りデカイ」


 刀身の色自体は黒の剣と同じ光を反射しない黒塗りだが、そのサイズが

以前と比べデカイ。

 それまで使っていたのは長さで言えばブロードソードを少しだけ長くしたぐらいの

サイズだったが、いま目にしているそれはバスタードソードをさらに伸ばした長さを持ち、

刀身の幅にいたっては一般家庭に在るまな板と同じ幅と言えばいいのだろうか。


 そしてありえないのだが、それだけの刀身を持ちながら片手で扱える

ぐらい、軽い。


「色々とツッコミたいんだけど……まずこれ、盗賊が扱うような得物じゃないよな」


「作成者曰く、『これ以上の小型化は無理』とのことです。

 なんでも、クロスケ様の右手と同化していたモノを移すと考えた場合

 これ以上サイズを抑えると、制御が出来ないとか」


「そうか……そういうことなら、文句は言えないわな。

 んで、コレに銘ってあんの?」


「……あの方の意図はわかりませんが、"反逆者リベリオン"、

 仕上がったその刃を、魔女はそう呼んでいましたな」


 反逆者、ね……まぁこれから、世界を牛耳ってるような連中に喧嘩売ろうと

してんだ、らしいっちゃあらしいな。


「よし!なんかこんなすげぇモン貰ったんだ、また礼を言う理由も増えたし

 そろそろ行くよ……アリスには3日後の昼までは待つって伝えといてくれ」


「3日後、ですね……畏まりました。

 クロスケ様、道中お気をつけてください」



 シルバに見送られ、月夜の下俺は公爵家の屋敷を後にする。

 歩きながら、自分の今の身体の状況を整理する。

 死ににくい、死ねない不死の呪い。

 本来の右手を失った代わりに、エルフの術式と魔神の血筋であるアリスの

魔力で出来た偽の腕。

 ……そういや、黒の剣の残骸を核にしたっつってたな。

 なら、魔力の収束なんて芸当もできんのかこの腕。


 なんにせよ、これから先の事を考えると手にした力は使いドコロさえ

間違えなきゃ俺自身にとって助けになる。

 あとは、その力に溺れないように気をつけりゃあいい。


 ふと立ち止まり、夜道を照らす月を見上げる。

 ……形こそ変えるものの、月は月としてずっとそこにある。

 自身はどうだろうか?人の形をしていて、人間だと自負しているが

不死の呪いといい、この右腕といい……本当に人間だといえるだろうか?



「――ハッ、馬鹿馬鹿しい。俺は人間だ」


 そう一人呟き、再度歩き出す。



 月は、そんな青年を何も言わず、ただ優しく照らし続けた。


 


ひとまずは、これで区切りです。

これまでプロット無しで書いていたので何度も書きなおしたり、キャラクターの口調や性格がブレたりと散々でしたがそれでも楽しんで書くことができました。

これも、拙い文章を読んでいただけたおかげと思いこの場を借りて読者の方にお礼を述べさせて頂きます、ありがとうございました。


次章は、主人公が寝ている間に起きた出来事を外伝的な話として書くか、本編の続きからとなるか思案中ですがどちらにせよ今度はじっくりと

プロットを練りきちんとしたものを書こうと思います。

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