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BANDIT!  作者: 望田 壱
BANDIT!
1/28

001

世界を救う前に自分を救う

他人の心配は自分に余裕ができてから。


そんな主人公しかいませんが、よろしければどうぞ。


 001-1


 まだ冬の寒さが残る、星の綺麗な夜。


 盗賊ギルドから受けた仕事の帰り道で、俺は倒れ伏せてるソレを見つけた。


「ん~・・・ん?女、か?」


 被さってた布切れを指先でつまみ、めくり上げると出てきたのは

腰まで伸びるような銀髪に、整った顔立ち。

 その容姿と背丈から、十代後半から、二十代にいくかいかないかぐらいの歳だろうか。

 しゃがみこんで生きてるのか死んでるのかを確かめる。

 死んでるならお役所に行き倒れが一件あるとタレ込めば済む話だけれど・・・


「息はあるな・・・っち、めんどくせぇ」


 改めてその容姿を見直す。

 どこかいいとこの娘なのか、金糸で刺繍の入ったジャケットに

学のない俺でも違いがわかるような、値の張る布地で出来たフレアスカート。

 被さってた布切れも、よく見りゃ品の良さそうな肩掛けだ。


 ・・・?

 この布切れの端に入ってる刺繍、たんなる模様じゃないな。


「こりゃ・・・家紋、か?」


 俺が見たことあるような家紋、ってかこの家紋なら王都やその周辺都市に

住んでる奴なら誰もが知っているだろう。

 それは、この都市を含む近辺一体を治める公爵家のモノだった。



 001-2


「んう・・・ここ、は・・・?」


 寒空の中、あそこで放置したままなのも寝覚めが悪く

結局はいつも使っている宿の自室に、背負って連れ込んできた

拾いもののお嬢さんが目を覚ました。


「よぉ、お目覚めかよ。

 気分はどうだ?どこか調子悪いところはないか?」


 まだ半分寝てるのか、ぼぅっとしている相手に問いかける。


「あ、はい・・・大丈夫、です・・・

 あの、貴方は・・・?」


 いくぶんか意識がはっきりしたのか、こちらの質問に短く答えると

周囲を警戒するように伺い、そしてこちらに視線を合わせてくる。


「俺はクロスケ、たまたまアンタが倒れてるとこに出くわしてな。

 寒空の中で寝かせたまんまってのも不味い気がしたから、

 とりあえずここまで連れてきたんだ。

 ああ、安心していいぜ?胸元が緩んでるのは少しばかり

 苦しそうだったんでな、揉んだ以上のことはしてない。」


「そ、そうでしたか・・・あの、ありがとうございます。

 その、ちょっと慣れない土地でまよってしま・・・揉んだ?!」


 揉みました。

 放っとけばそこらへんのチンピラに連れて行かれて美味しくいただかれたかも

しれないことを考えると、少しばかり揉んでもバチは当たらないだろうと

5分ほど揉ませて頂きました。


「あ、あな、貴方は気を失っている女性に何をなさっているのですか?!

 その、出会って間もない相手にすることではないとか考えませんでしたのっ?!」


「あっはっはっは」


「はっはっはー、ではありませんっ!!」


 

 なんだ、元気じゃないか。

 目が覚めたら見知らぬ男の部屋で、しかも胸元緩んでる状況で

泣きだしたらちょっと逃げる覚悟をしてたんだけど、その必要は

なさそうだな。


「まぁ落ち着けよ。揉んだっつっても、こう、軽くタッチしたみたいな?」


「そ、それでも十分に悪質かと思いますが・・・」


「すまんすまん、いきなりこんな状況で混乱しやしないかと思って

 緊張をほぐすつもりだったんだ。

 その・・・綺麗なピンク色だったぜ?形もよかったし」


「あ、あらそうですか?ありが・・・見たのっ?!」


 

 揉んでるうちに、形や大きさが気になってつい見ました。

 その時の俺は、悪気はなかったと胸を張って言いたい。

 隠されてたら誰だって気になると思う。

 それが女性、それもあまり関わりのない美少女のおっぱいだったら

なおさら見たくなるだろう。


 気がついた時にはジャケットの前を、相手が起きないように

慎重にボタンを外していき、インナーをめくり上げ

下着がたまたまフロントホックだった事に感謝し

冒険者稼業で鍛え上げたスキルで一分の狂いもなく外し

対面した程よい形と頂の桜色に感謝しつつ揉んだ。



「しかも直で揉んだの?!どういうことよ?!」


「地が出てるぞ、あと揉んだだけだからそんな気にするなよ。

 服だって戻しといたろ?」


「気にするなっていう方が無理よ?!あと揉んだだけとか言うな!

 そんなホイホイ揉まれていいような胸はもってないわよっ!!」


 寝起きとは思えない言葉のキャッチボールだった。

 っていうかあまり大声を出さないでほしい。

 ただでさえ、この宿の親父からは色々と睨まれているんだ俺は。


「はぁ・・・なんでこんな変な人に助けられたんだろうわたしったら・・・」


「変な人って失礼だなアンタ。

 俺じゃなかったらもっとひどい目に合ってたと思うぞ?」


「へぇ・・・例えば?」


「うん、丁寧に介抱された上に起きたら温かいスープを用意されて

 身の上話を聞いてくれた挙句に、手厚く保護されてたんじゃないかな」


「それのどこをどう取ったらあんたがしたことよりひどい目なのよ?!」


「無償で保護されるとか、あとから何要求されるかわかったもんじゃないだろ?!

 それだったら多少変でも、おっぱい揉むくらいで済む相手に助けられろよ!」


「やだ逆ギレ?!ってかなんでわたしがキレられてるのよ?!

 そもそもなんでこんな目にあってるのよ・・・はぁ、お付きの子に身代わり頼んで

 屋敷抜けだすんじゃなかった・・・」


 なにか急に話し出した相手に俺は、そっと耳をふさいだ。


「ふさぐなよ!そこは聞いてしかるべきでしょ?!」


「なんかめんどくさくなりそうだからお断りだ」


「あんた主人公でしょ?!

 ちょっとシニカルでやる気無さそうだけどホントは裏世界で知らないものは居ない

 凄腕の盗賊で、偶然助けた美少女と始まる冒険の日々でしょ?!」


「正直、日銭さえ稼げれば冒険しなくてもいいかなーって」


「小さっ?!もっとやる気だそうよ?!

 ほら、今から話す内容聞いて義憤に駆られて

 『ちっ、めんどくせーな・・・

  ま、関わっちまったのはしょうがない・・・助けてやるよ』

 みたいな展開でしょ普通?!」


「いまどきそんなキャラ流行らないって。

 いいじゃないか、脱力系小者主人公。今までにないと思うぞ。

 探せば居るかもしれないけど」


「ほら、あんたそう見えて実は暗い過去背負ってるとか?!

 故郷が謎の組織に消されたとか、両親が魔物に、とかっ!」


「故郷は北の方の雪国で年に一回、祭りで賑わうとこだし

 両親は今も現役の冒険者で健在だけど」


「くっ・・・そ、それなら条件、条件を出すわ!!

 あんたがやる気出すならその条件どおりにしてもいいわよ!」


「条件もなにも、俺はめんどくさくなりそうな事が嫌なだけで・・・」


「も・・・揉んでいいから!!

 ここで話聞いてくれるなら、そのっ・・・わたしの胸、揉んでいいから!!」


「えっ・・・それは、なんていうか・・・引くわ・・・」


「どうしろっていうのよ!!!!!」



 001-3


 紆余曲折あって。


「っふぅ、取り乱したりしてすみません、その・・・騒がしくしてしまって・・・」


「今更取り繕っても遅いんじゃないか?

 アンタ、畏まった話し方よりさっきまでの砕けた方が地だろ?」


 火にかけておいたヤカンの水が、十分に熱くなっているのを確認し

俺と相手の二人分、紅茶の準備をする。


「ぐっ・・・誰のせいだとおもってんのよ・・・

 はぁ、とりあえずお礼を言うわ、ありがとう・・・助けてくれて」


「言ったと思うけど、あのまま放置したら寝覚めが悪かったってだけだ。

 見返りは十分だったしな?」


 ニヤニヤしながら、指をわさわさと動かす。


「それはもういいって・・・」


「ははっ、ほら、どうぞ。

 アンタみたいなお嬢さんに、俺の入れた紅茶が口にあうかわからないけど」


 カップに入れたばかりの紅茶を、相手の目の前に配り向きあうようにして座る。



「ありがとう・・・ん、美味しいじゃない」


「親が西方諸国に行った時の戦利品らしくてな。

 結構多いってことで送ってもらったんだ」


「ふーん・・・親と、仲がいいんだ?」


「上に兄弟がいて、そっちに厳しくした分甘やかされてるだけさ。

 兄貴達には悪いけど、自由にさせてもらってる。

 そういうアンタは、親となにかあったのか?」


 ズズ、と紅茶を含みながらそれとなく話を促す。


「・・・わたし、さ。

 この歳で、結婚させられる事になったんだよね。

 それも、数えるほどしかあったことのない相手と」


「ふ~ん・・・政略婚、ってやつか?」


「そそ、建前上は『両家の関係をより強固なものとするために』って事なんだけど

 実際は体の良い厄介払いよ」


「・・・その家紋、公爵家のだろ?

 そんな良家の子女を厄介払いとか、卑屈過ぎないか」


 

「・・・妾腹なのよ、わたし・・・」


 そんな言葉とともに、その両膝に置いた拳を握り締める相手に俺は


「・・・話してみな?」


 なんとなく、話を聞いてみる気になった。



「わたしのお母様は、公爵家の屋敷で奉公していてね?

 今の奥方様が、公爵家に嫁いでくる前からお父様・・・公爵様と関係を持ってたの。

 わたしが生まれた時も、追い出されたりせずに良くしてもらったんだけどね・・・

 問題は、奥方様との間に出来たお子様・・・わたしの妹になるのかな?

 あの子が生まれてからが問題だったの」


「問題・・・?

 話を聞く限りだと、アンタの親父もその正妻も良い人っぽそうだけど

 態度が急に変わったとか?」


「ううん、お父様も奥方様もわたしやお母様にはすごく優しくしてくれたわ。

 ・・・問題はわたしと、生まれた妹にあるのよ。

 見たんでしょ?わたしの胸・・・左胸、ちょうど乳房に隠れるようにアザがなかった?」


 アザ・・・そういえば、汗を拭っている時に見えたな。

 アザというよりも、抽象的な模様といったほうがいいかもしれない見た目だったけど。


「そのアザがちょっとばかり問題があってね・・・

 普通は、公爵家の・・・それも王家にちかい血統の子供にしか現れないアザなの」


「・・・そのアザが、アンタにしか出なかった?」


「ううん、あの子、妹にもアザはあったんだ。

 公爵家に、二人もアザを持った子供が出たことが問題になったの」


「・・・王家に伝わる、双子星の伝承か」


「あ、知ってるんだ・・・そう、その伝承によると

 "王家に星ひとつ輝くとき、絶えなき栄光が約束されるであろう"

 "王家に星ふたつ輝くとき、栄光は輝きを失い地に堕ちるだろう"

 ・・・あたしと妹、二人に王家の血筋特有のアザが出たことで大騒ぎになってね・・・」


「・・・嫁ぎ先は、王家と関係の薄い地方の領主あたりか」


「そのとおりよ・・・少しでも王家で話に上がらないように、って。

 ちなみに、その地方領主なんだけど・・・」


 嫁ぎ先の地方領主の名を聞いた俺は、疑問に思う。


「なぁ、俺の記憶に間違いがないならその領主・・・

 1週間前に領地没収、取り潰しにあったんじゃなかったか?」


「・・・うん、そうなの。

 それもはっきりしない理由で取り潰されたって。

 おかげで、わたしはこの都市に2週間も足止めされてる状態」


「で、暇になりすぎて逗留してる屋敷を抜けだしたって事か?」


「え?あぁ、うん・・・お屋敷付きの執事さんにね

 『お暇でしたら、この都市でも観光されてみては』って勧められてね。

 妾腹とはいってもまだ公爵家の一員だし、監視も厳しかったけど

 少し抜け出すぐらいならいいかなって・・・」


 話を聞いていると、偶然が重なっての現状とも言える。

 だが、伝承の話を考えるとどうもキナ臭い。


「・・・んで、あの路地裏に倒れてた理由は?」

「ん・・・それが、さ。

 覚えてないんだよね・・・なんで倒れたかも、あんたがいう路地裏に来た理由も」




 001-4



 話をまとめると、屋敷を抜けだした後最初は初めて訪れた都市の珍しさに

色々と歩きまわり、日が傾きかけた頃にそろそろ帰ろうとして人に道を

尋ねながら屋敷へ帰ろうとした。


 その後から記憶がない、というよりなにかぼやけたように思い出せないという。


「・・・街中を歩いている時に、何か口にしたか?」


「あ、うん。

 お昼ぐらいに立ち寄ったカフェでお昼したぐらいだけれど・・・」


「道を尋ねた相手は?」


「街角に立ってる、民間の守衛さんと・・・あとは店先にいたおじさんかな?」


「路地裏に来た理由は?」

「だからそこはわから・・・あれ?そういえば、誰かに近道がある、って聞いた、かも?」


 うーん、と悩み始めた相手を横目に俺は、今聞いた話を整理する。

 ・・・このお嬢様が嘘をついていないとして考えると、今回のことは

王家に伝わる伝承を鵜呑みにしたバカが、コイツを始末するために仕組んだか。


 ・・・にしては詰めが甘い気がする。

 というより、俺という第三者にこいつを保護させた時点でその計画は破綻している。

 こういった事は、第三者でなくそれとなく当事者や、その関係者にこいつの死体

を発見させるのが最良だ。


 その筋の人間なら、さっさと始末して適当に人の目につきやすそうな場所に放置すれば

それでおしまい。


 それをしなかったということは、それ以外の思惑があったと見るべきか。

 或いは、俺というイレギュラーが間に入ったことで計画を変更、中止

せざるを得なくなったか。


 考えていると、不意に扉の外・・・何やら人の気配。


「なぁ、アンタ・・・足に自信はあるか?」


「はっ?何よ急に・・・あぁ、ひょっとして・・・はぁ、いいわよ。

 胸まで揉まれたんだし、もう足見せるくらいならおまけってことにしとくから」


「ちげぇよ。ってかそういうキャラだったのかアンタ。

 むしろどういう目で見られてるんだよ俺は。

 逃げ足に自信はあるかって聞いてんだよ」


「へっ?・・・あぁ!!なんだ、そういうこと?!

 わ、わかってたわよ?ちょっとしたジョークじゃない?!

 ほら、少しばかり重くなった雰囲気を和らげるための!!」


「慣れねぇこと済んなよ、ってか今の素で言ったろうが。

 ってか顔赤いぞアンタ大丈夫か?よし、担ぐぞ」


 言うやいなや俺は相手を担ぎ上げ、換気のため開放していた窓に向かい駆け出す。


「きゃーっ?!あ、あんたって見かけによらず力持ちねーって?!

 っていうか何っ?!なんなの?!なんでわたし担がれてるのってあぁんっ・・

 っちょ、ちょっとどこさわったっていうか揉むな!揉みしだくなぁ!!」


「おっぱいだけの存在じゃなかったんだなアンタ!!

 尻も意外といいものをお持ちでっ!っし、飛ぶぞ、口とじてろぉ!!」


 飛ぶと聞いて本能的に、来る衝撃に備えたのだろうか喧しかった口を閉じ

振り落とされないように俺の肩にしがみつき身を丸くする。

 俺も相手を振り落とさないよう、しっかりと尻の肉を鷲掴みながらがっちりとホールドし

大きめの窓のヘリに足をかけ、一気にジャンプする。


 誤解される前に言っておくが、この部屋は1階にある。

 いくら冒険者として鍛えられているからといって人一人

担いだ状態で2階から飛び降りれるような身体機能は今のところは持っていない。


 「ぐえぇっ?!ちょ、あんた、これ、きついっ?!うをぉぉ・・・」


 肩の上でなんかヒロインとしてダメな声が聞こえたが気にしない。

 まぁ、段差のあるとこで担がれた状態で衝撃がきたら誰だってそうなるよね。

 謝罪の代わりにそっと尻を撫で回しといた。



 着地しても足を止めず、多少無理な体勢ではあったけど、直前までいた部屋を

振り返る。


 そこにいたのは、俺らが飛び出した部屋の入り口から

扉を開けたままの姿勢でこちらをじっと見る、ローブ姿の誰かだった。

 


初めまして、望田 壱といいます。

TRPGのシナリオを考えたり、キャラメイクであれこれと設定を

考えるのが好きです。


自分の中だけでの物語、楽しいですよね。

寝る前の僅かな時間だったり、ゲームしてる時のIFを考えたり。


こうしたい、こう話が進めば。

こんな主人公がいい。

誰もが考えて、そのうち誰もが忘れちゃう。


なんとなく、思いついた話を形にしたくて

流されるがままに文章にしました。

細かい設定なんてなにもない、漠然とした世界で

自由に動き回れるキャラクターたちが表現できたらなと思います。

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