6 多彩な色に目を奪われて
陽茉と百合さんは、月に一回程度で会っていたのが、次第に二回三回と回数が増えていき、二人の仲はとても親しくなっていった。それなりに自分も親しくなったけど二人ほどではない、といったところだ。
最近なんか、
「その日は用事があるから、お父さんは無理だなぁ」
「じゃあ、ひまだけでもあそびにいくね!」
と、なるくらいだし。二人で会っている回数の方が多いんじゃないか。こっちとしても最近はもう親戚に預けているような感覚になってくるし。それなりに信用しているという事でもあるのだけど。
陽茉が小学生になってから、「ゆりちゃんのうちに、おとまりしたい」って言い出した。友達の家に泊まりに行きたいって事だから、
「百合さんがいいって言うならいいけど」
「おとうさんがいいっていえば、いいっていってたよ!」
「⋯あ、そうかい。じゃあいいんじゃないの」
と、サクッと泊まりに行くのが確定する。普段の遊びに行くのと違ってさすがに一緒にいけないけど。
本当に大丈夫なのか百合さんに確認したところ、大丈夫だというからお任せする。それならば、
「ちゃんと、自分の事は自分でやらないとね?」
「やれるよー!!」
「じゃあ、お父さんがチェックします」
「はーい!!」
自分でやれることは、普段からやる子だから大丈夫だろう。
「おとまり、おとまり〜♪」
楽しそうな陽茉を見ていて、気になることもある。今後、百合さんは結婚したりしないんだろうか?陽茉と遊んでいることが、邪魔というか、悪い影響を及ぼしてないだろうか?⋯仮に邪魔になってはいなくて、そうなったとしたら、その時の陽茉はどんな反応をするだろう。
⋯まぁ、そんなの考えたところでわかるわけないわな。
ー☆ー☆ー☆ー
「今日はありがとうございました」
「おじゃましました!」
「じゃあまたね」
「うん!またね!」
ゆりちゃんのうち、たのしかった!⋯もっといっしょにいたかったなぁ。あ、おとうさんもきたらよかったのに。
「ねぇねぇ、おとうさんはおとまりしなくてよかったの?」
「ふぇっ?!⋯⋯お父さんはね。ベッドが変わると眠れなくなるんだよ」
「そうなの?おとうさんもいっしょならいいのにっておもったの」
「そ、そっか⋯。ごめんね」
「ねむれないのはこまるもんね!」
「そ、そうなんだよ⋯」
そっかぁ。⋯⋯んー。あっ!
「じゃあ、ひまのうちにゆりちゃんがきたらいいのかな?」
「⋯⋯ほら、お家そんなに広くないから、難しいんじゃないかな」
「えー、そうかなぁ?」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
こんど、ゆりちゃんにきいてみようっと!
ー☆ー☆ー☆ー
「うん、またね!」
二人と別れてから家に戻ってみると、
⋯⋯⋯⋯⋯
⋯⋯⋯⋯⋯
ここはこんなに静かだったのかと戸惑ってしまった。
いつもの状態に戻っただけ、なんだけどね⋯。
数年前には、そうではない時があった。でも、残念ながらそれはなくなってしまって、もう無理なんだと諦めて⋯この静かな状態に慣れたつもりだった。それがたった一日にも満たない時間で、この静かさに戸惑いを感じるようになるなんて。
⋯やっぱり、一人は寂しかったんだな⋯。でも、また誰かと一緒になるなんてあるのかな⋯。
何かを見るつもりはなかったけど、静かな空間に耐えかねてテレビをつけた。
『⋯政府は⋯』
ニュースを読むアナウンサーの声が聞こえる。
⋯うーん、これは違うなぁ。
人の声ではあるけど、これでは満たされそうにない。それでもつけたままにして、陽茉と一緒にいた時の事を思い出した。
『ゆりちゃん!』
『これ、おいしい!』
『まだねたくないよー』
『⋯⋯おはよう⋯』
「⋯ふふふっ」
自然に笑いがでてしまった。でも、それくらい楽しい時間だった。また、あんなふうに過ごしたい。
⋯でも、あちらにはあちらの家庭があるし、生活もあるんだよね。
「あー、ひまちゃんに会いたいなぁ⋯」
どうしたらいいんだろうなぁ⋯。




