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スミレが咲いたあとに  作者: うちの生活。


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5/5

5 そしてユリが咲き始めた

 事前に百合さんに確認していたから、断られる心配はないわけで。ただ、それを知らない陽茉は不安そうな表情をしていた。


「ほんとに?ほんとにあそんでくれるの?!やったぁ!!」


 百合さんからの返事によって、その表情は一変して弾けるような笑顔になった。陽茉に話しかける百合さんも笑顔だ。


「本当だよ。何して遊ぼうか?」

「なにがいいかな!たのしみ!」


 ⋯あれ?何して過ごせばいいんだろうか?まぁ、これから相談すればいいか。


「あ、そうだ。ひまがかいたおてがみあげるね!」

「お手紙?ありがとう。何が書いてあるのかなぁ」


 陽茉が書いたものに、こちらの連絡先を追加しておいた。周りから見られてたとして、子供が渡すものなら微笑ましい感じで見られるはず。


「仕事が終わってから読むね」

「うん!じゃあおしごとがんばってね!」

「ありがとう。じゃあまたね」

「ばいばーい!」


 陽茉はよほど嬉しいのか、力いっぱいに手をぶんぶんと振っている。うん、うちの子、かわいい。


「よかったねぇ、陽茉」

「うん!!ゆりちゃんとあそべるの、うれしい!たくさんおはなしもしたい!」


 スーパーからの帰り道、いつになったら遊べるのか、遊園地がいいとか、動物園がいいとか、ずっと遊ぶ事について話していた。


 その後、無事に連絡がきて、お互いの都合を確認して日程を決めた。決めてからは、あと何日待てばいいのか?どこに行くのか?というのを当日まで繰り返していた。



ー☆ー☆ー☆ー



 当日の朝。


 待ち合わせ場所である最寄り駅に着いたところで、既にきていた百合さんに声をかけた。


「あ、ゆりちゃん!こんにちは!」

「こんにちは。今日は陽茉にお付き合いいただき、本当にありがとうございます」

「こんにちは。こちらこそ、楽しみにしていましたから」


 挨拶しおわったところで、陽茉が百合さんの服装に言及した。


「ゆりちゃん、いつもとちがう!」

「今日はお仕事じゃないし、ひまちゃんと遊ぶからね。少しおしゃれしたんだよ?似合うかな?」

「すっごくにあってる!かわいい!」

「ありがとう。ひまちゃんもかわいいね」


 確かに似合ってるとは思ったが、服装の事はよくわからないから黙っていた。⋯菫にもボロクソに言われた記憶がある。あとは、この人キモいとか思われたくない。


 そんな事を考えている父親はおいといて、陽茉は今日の目的地が気になっているようだ。


「ねぇねぇ、ゆりちゃん。すいぞくかんにいったことある?」


 百合さんがしゃがんで、陽茉と目線をあわせて話し始める。


「んー、凄く前にあるよ」

「おさかないっぱいなの?」

「いっぱいだね。でも、それ以外にもクラゲとかペンギンとかもいたかなぁ」

「ペンギンさん!?みてみたい!」

「すっごくかわいいんだよ」

「はやくみたい!」

「じゃあ、まずは電車に乗らないとね。てつないでいこっか?」

「うん!」


 あれ、行っちゃったぞ。ってか俺は⋯?


 二人のあまりにも自然な様に反応できずにいた。そんな父に陽茉が気づいた。


「おとーさん??」

「ん、あぁ、ごめんごめん。すぐいくよ」


 電車の中はわりとすいていて、陽茉を中心に三人で座った。


 パッと見、普通の家族に見えるんじゃ⋯?いや、違うけど。なんだろ、これ?友達と遊ぶ子供の付き添い?いや、友達なのか?知人か?


 二人は保育園での話をしている。誰と遊んでるとか、本を読んでるとか。百合さんはしっかりと陽茉の話を聞いていて、質問もしている。


 今日のメインは二人だから、あまり主張せずに黙って会話を聞いている。というか、何を話せばいいのか⋯。


 十数分後、目的の駅に着いた。水族館は駅からでてすぐにある。


「ひまちゃん、あの水族館だよ。入ろっか?」

「うん!」


 初めての水族館。遊びたいと願っていた百合さんもいることだし、すごくはしゃぐだろうな。



ー☆ー☆ー☆ー



 水族館をあとにして。


 帰りの電車も行きと同じように座る事ができた。水族館での事を話していたが、途中で陽茉は寝てしまった。


「ひまちゃん、疲れちゃったんですかね」

「かなりはしゃいでましたから⋯」


 最寄り駅に着いても起きない為、ホームにあるベンチで少し話をする事にした。


「あの⋯今日は本当にありがとうございました。あんなに楽しそうな陽茉は久しぶりに見ることができましたよ」

「いえいえ、こちらこそ楽しかったですよ」

「⋯⋯でも、どうして?」


 会って遊んでくれたのか?そんな思いをこめて質問をした。


「⋯そうですね。あの東屋で初めて会った時、私にとって本当に悲しい事があって⋯どん底だったんです」

「⋯⋯⋯⋯⋯」

「これからどう生きていったらいいのかわからない。もう何もしたくないって」

「⋯それは⋯」


 何があったのか気になるけど、踏み込んでいい内容ではない気がする。


「そんな状態だったんですけど⋯あそこでひまちゃんと話してたら⋯」

「⋯⋯⋯⋯?」

「なんていうか、切り替えできたというか⋯」

「⋯⋯⋯??」

「救われたっていうか⋯。すいません。なんて言えばいいかよくわからないんですけど⋯」

「⋯⋯???⋯⋯えーと、なんだか陽茉がお役に立ったと」

「⋯いや!ほら、ひまちゃんかわいいですし!」


 なんだか百合さんが恥ずかしそうにしている。なんだかよくわからないが、


「まぁ、うちの陽茉が百合さんと遊びたい理由もわかんなかったんですけどね」


 ⋯⋯⋯でも、母親とは違うものの、そういうものを求めていたのかもしれない。今日の二人を見ていたら、なんとなくそう思った。


「えーと⋯お互い何かひかれるものがあった、という事ですかね」

「とりあえず、そういう事にしておきますか」

「⋯⋯また、ひまちゃんと遊ばせていただけますか?」

「それは⋯陽茉も多分同じ事を言うと思います。なのでぜひ」

「ありがとうございます!」



 こうして、友達といっていいのかよくわからない、少し不思議な関係が始まっていくことになった。


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