10 でも⋯
この部屋とは⋯⋯もう少しでお別れだね。
貴方を亡くして⋯一人になってここにきた。貴方との思い出がたくさんだった、あの場所で過ごしていくのは辛かったから。
⋯それでもやっぱり忘れたくなくて、あのひまわりのとこに行った。そうしたら、貴方のせいで泣いてたのに⋯⋯貴方のおかげで陽茉ちゃんと出会えたんだよね。
元気な子。
その時はそれくらいの印象だった。でも、なぜだか不思議な感じがしたんだ。貴方の代わりなんかじゃないのはわかってる。でも、この子とはつながっていたいって思ったんだ。それに気づいたのはだいぶあとになってからだけどね。
だから、再会できた時は本当に驚いた。そして、本当に嬉しかったんだ。ただの偶然かもしれない。この気持ちがなんなのかもうまく説明できない。でも、貴方がいなくなってしまったこれからの人生でも、やっていけるんじゃないかって思ったんだ。
「⋯かといって、よくわからない状態だよね」
だから、いずれは結婚しますっていう形にはしている。実際にするかどうかわからない。そうしてもいいって思えるようになれば⋯⋯するかもしれない。あの頃思い描いていた貴方との未来とは違うけど、それもいいのかもしれない。
⋯ピンポーン⋯
「あ、引越し業者の人きたかな?」
事前にまとめていた荷物を運び出していってもらう。業者の人はとても手際がよくて、数十分後には部屋の中が空っぽになった。後日、解約の立ち会いがあるけど、一応は今日でこの部屋とは終わり。
「⋯じゃあね」
そう言って、部屋を出て鍵を閉めた。
「よし⋯行こっか」
二人が待っている新居に向かうべく、歩いていた数分後。
プァッ!!プァーッッ!!
「え⋯?」
視界が何かでいっぱいになったと思った瞬間、何かの激しい衝撃を感じた。そして、今までに感じた事のない痛みが襲ってくる。
「⋯え⋯⋯」
徐々に視界が暗くなっていき、ほんの少し前に感じたはずの激しい痛みすらわからなくなってきた。
⋯⋯⋯これ、陽茉ちゃんに⋯⋯心配⋯⋯⋯かけちゃうかな⋯⋯。⋯⋯⋯⋯待っ⋯⋯て⋯⋯⋯て⋯⋯⋯⋯ね⋯⋯⋯⋯⋯。




