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おっさん家!  作者: サン助 箱スキー
2章 隣人が出来ました。
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日本の米

お米って大事ですよね。


 座り込んで泣いているアオさんを、これまた涙を目にいっぱい溜めながらクロさんとアカさんが慰めている。男泣きしている所を他人に見られるのも嫌だろうなと思い、竈の方に移動した。


「お櫃に移して次を炊きましょうか?二升炊きの羽釜ですけど、この人数だと足りないですよね。」


そう言って女衆にしゃもじを渡す。


「普段だとご飯を食べる時ってどんな感じで食べてるんです?」


そう言いながら羽釜の蓋を取る。米なんて滅多に食べれるもんじゃない、普段は麦の飯をカッ食らってるよ、と答えが帰ってきた。

そっか……粉にするんじゃなくて炊いて食ってるのか、なら大丈夫だなと一安心である。


立ち登る湯気と立ち上がった白い米の飯に、後ろに居た女衆から。おおぉ、と声が漏れる。

ぐへへ、令和元年の新米に感動しやがれ。羽釜を使って直火で炊いたおこげ付きの炊きたてご飯の美味さを思い知れ!


熱々の羽釜を持ち上げて、お(ひつ)にひっくり返しながら1番偉そうな女衆にしゃもじで掻き出して貰った。


激熱だけど火傷をしない神の手って便利だよなぁ。鍋つかみ買わなくて済むし。


地味に鍋つかみってすぐ汚れるでしょ?でもどのタイミングで洗濯すれば良いのかとか迷わない?

おっと思考がそれた……


「なんだいこりゃ、これが米かね。見てみなよこの飯を。あたしゃこんなの見たの初めてだよ。いい匂いだねえ、こんなの握り飯にしたらいくらでも食べられそうじゃないの。」


ついさっきまで死ぬ覚悟云々言っていた女の鬼さんが他の女衆に向かって言うと、他の女衆もお櫃を覗き込んで唸っている。


お椀に水を用意して小皿に塩を入れておく。

自家製の高菜の漬け物と人参の漬け物を出してきて、まな板と包丁と一緒に女衆に渡しておく。


「とりあえず子供達から優先的に食べさせてあげて下さいね。私の事を攻撃してきた男衆は、最後に回しちゃってください。」


そう言ったら、男衆が残念そうな顔をしている。


「まぁ一応、聖域で殺傷行為を働いた罰なんで、それくらい甘んじて受けて下さいね。一応罰を与えないと周りに示しが付かないもんで。」


そう言ったら、子供達の中から1番大きい女の子(鬼です)が出てきて。


「大人の人達は、自分たちは水だけ飲んで、ずっと私達にご飯をくれてたの。お腹が空いてると思うから、私達我慢するから、先に大人の人達に食べさせてあげて下さい。」


そう言って深々と頭を下げている。

あちゃーこれじゃ俺が悪者だな……

身長140cmくらいの女の子の目線の高さに合わせるために地面に降りて少し膝と腰を屈めて。


「決まり事は、守らなくちゃいけないでしょ?わかる?

君達は、紡ぐ民ニカラの氏族でしょ?この世界の決まり事を外界で1番理解しているって矜恃(プライド)を持って暮らしてるんでしょ?それならちゃんとしないといけないのは分かる?」


既に鑑定で全員を確認済である。

そして全員がニカラの氏族となっていた。


ニカラの氏族って言うのは、まだパンツァー様が世界を細かく統治していた時(約6000年前)から歴史の紡ぎ手、仕来(しきた)りを伝える民って呼ばれている程に神の言葉をきちんと認識して、それを後世に伝える役目を負った一族なんだよな。そうなる前に色々あったんだけどね。その役目の恩恵がニカラチャの使ったギフトなんだよ。


そんな事を考えながら女の子を見ていると。

ちゃんと頷いてくれた。


「一年ちょい前だと、連帯責任で全員消滅させられてたんだけどね。今だとそんなに厳しくないから安心して。それにちゃんと全員お腹いっぱいになるまで食べても大丈夫なくらいにお米なんかあるから。ほら、お握り貰っておいで。」


そう言って女の子を女衆が握り飯を用意している方に行ってと差し向ける。

そしたら、他の子供達を引き連れて、小さく一礼してから向かって行った。ええ子や。


受け取った握り飯を1口頬張った時に、それまで強ばっていた顔が満面の笑みになったから。

日本のお米の凄さ>怪しい神様の笑顔

なんだなぁと少し悲しくなった。



 受け取った握り飯に口を付ける。塩が効いているから塩っぱいのか、涙で塩っぱいのか分からない。しかし美味い米の飯だ。


アイツは、自分を神だと言った。ここが中央大陸で聖なる大地だと言っていた。

そのどちらもが間違いでは、無いのだろう。

ならば侵入者であり、神に牙を向いた我々は、罰せられても仕方がないはずなのだ。しかし受けた罰なんて罰でもない。

美味い飯を食わせてくれる。破けた服の代わりにと、上等な布を渡してくれる。


今日の所は、天候操作しますから野宿してください、でも一応と言って少し小さいが上等な毛布まで渡してくれた。子供達には、2枚ずつだ。


六つの月が順番に登ってくる。古い伝承通りだ。

この光景が見れるのは、聖なる大地のみらしいからな。

四大陸であれば何かしらの月が欠けているはずだ。


顔を合わせれば殺し合う魔物の組み合わせも、夜になって凶暴になるのではなく、寝静まっている。


ピアスバードの群れに出会った時点で全員が骨も残らず食い尽くされてしまうだろう。だが、そんな事すらない。

自分の事を神と言った男は、今も我々の事を見守るように少し離れた場所で椅子に座りながら何かをしている。


時折子供達が呻き声を上げると心配そうにこちらを見て来る。

つい半日前まで戦って死ぬ事しか考えていなかったが、もはや戦う気力さえ残っていない。


やはり疲れていたのだろう、張り詰めていた物が無くなったら突然眠くなってきた。


夢じゃない事を……いや全てが夢だといい、そう思いながら重たくなった瞼を閉じた。



パンや麺ばかり食べていると、突然お握り食べたくなりません?

夜中にコンビニの鮭お握りに塩昆布乗せてお茶漬けにして食べるのとか美味いですよね。


ここまで読んで貰えて感謝です。



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