超と超々
確かにわかりやすいけど、もう少しなんかあったんじゃ?と思わされます。
あれから丸一日。買い出しを頼んだチャさんとアイさんは、何故かチャさんがヘルポートの緑鬼通りの顔役に気に入られてしまったり、アイさんが顔役の手下達に兄貴!って呼ばれて困惑したりしたらしいが、無事に俺の爪と交換で鉄鉱石じゃなくて鉄を手に入れて来てくれた。
「とりあえず皆さん、今回手に入った鉄ですけど、これはこの世界だと純度の高い鉄ですが、不純物がそこそこ含まれてます私から見ると。」
相変わらず鬼さん達とカンタ君を交えて勉強会である。
因みにダブレットを使って調べた訳じゃない。
日本に住んでたら聞いた事くらい無いだろうか?炭素鋼ってのやクロモリとか青紙とかさ?
「このまま鉄の棒にしても柔らかいのですぐに曲がってしまうんですよね、このまま使うなら竹の方が軽くて、しなって優秀な材料なんです。」
この話を詳しくすると、滅茶苦茶時間が掛かるけど良いかい?
何処ぞの週刊誌で炭素鋼を作って日本刀と同じ強度の何かをってのがあるのを知ってるかい?作れるわけ無いだろう簡単に!炭と砂鉄を使ったとしても試行錯誤を繰り返さないと。
そんなに簡単に作れる訳が無いだろう。大事だから2回言った。
「鉄だけだと柔らかいのですが、鉄に何かを加えると錆びない、曲がらない、硬い、色んな特性を持った合金を作る事が出来ます。」
日本刀ってのは、鉄鉱床の殆ど無い日本で長い時間を掛けて、砂鉄を使って試行錯誤を繰り返して何度も何度も失敗して、何度も何度も命を込めて、何度も何度も人を切って、現代日本で再現不可能な技術なんだからな古刀ってのは。人を切ったら数人で切れなくなるから突き主体だったとか、色んな逸話ってあるだろ?
昔の技術に追い付いてないって言われてる、現代刀ですらライフル弾を当てても数発は折れずに弾を切るとか知らないかい?
「ただ、硬さと粘りの絶妙なバランスを保って作るなら、鉄鉱石や砂鉄のまんまが良かったんですけどね。」
戦艦大和や戦艦武蔵に使われた鉄ってのも、既に平成・令和の日本だと作れないんだよ……材料が手に入らないし、そんな物無くても新技術がある。
「せっかく純度85%以上の鉄を手に入れてくれたので、ちょっとずるしちゃいますね。」
鉄の融解温度1538度を超えて加熱する、これはハクさんとパンさんにお願いした。
さすが世代が離れてても伝統を大切にしてきたニカラの鬼さん達だ。血の繋がりが関係あるのか分からないが息がピッタリ。
「この溶けて融解してる赤い鉄を分離させるのに更に温度を上げます。そして不純物が浮いて来たら全部出しちゃいます。」
この時に出来るだけ上に浮いたウロだけを掬うと良い感じ。
「この間皆さんから鉄がどうこう言われてたから密かに作って手に入れていたクロムとモリブデンを、加えます。」
クロムは地球だと産出量のほぼ半分は南アフリカ、モリブデンだと中国が40%くらいの産出量を誇る。どうやって手に入れたのか?って
先日神界通販で取り寄せて、金鬼になって中国の土と南アフリカの土を食ったよ。そんで出した。どちらも10kg10円で買えたぜ。色々混ざってて、他にも色々手に入ったけどね。
加える量はテキトーだ、クロムが多すぎると加工しずらいし少なめ、モリブデンもそこそこ少なめ。
「しばらくグツグツ煮込んで下さいね。沸騰してきたら十分です。そのまま火力調整お願いしますね。」
因みに、煮込む鍋だけど日本だとタングステン鋼、こっちだとアダマンタイン。あれだね鉄の融解温度のはるか上を行く凄い鉱物で融点が3300度くらい沸点は5500度を超えてくる、鉄より重いタングステンって日本に住んでいた頃の知り合いが良く言っていたそれを使った坩堝と言うか鍋と言うか、そんなのを神界通販ショップで買った物だ。チャーハンがパラパラ良い感じにほぐれるらしい。
因みになんの効力も付いてないから4980円に消費税10%で買えた。
でも天女の羽衣より高いんだな……
「そろそろ加熱するのも終わりにしましょうか?急冷却しちゃいけないので、じっくり冷やしましょう。」
熱いけど温度が上がるにつれて火の色が変わる不思議な光景に皆して目が釘付けになってた、もちろん全員サングラス着用さ。これは1個110円税込、俺の自腹。
添加したクロムは鉄の0.9%程度、モリブデンは0.1%くらいかな。日本で一般的にクロモリって言われるクロームモリブデン鋼を参考にしたよ。
なんでそんな事知ってるかって?オートバイをいじる時に使う工具を買うならクロモリの工具を買うと長持ちするんだよ。どんな鉄が工具に向いてるか調べた事があって、何故かすんなり覚えられた。
「ホントは、ここにニッケルを追加してニッケルクロームモリブデン鋼に出来れば良かったんですけど、自転車モドキに使うのはどうか?と思ったので、これくらいで良いと思いますよ。」
冷やしてる最中に鬼さん達がなんで何かを加えると鉄が強くなるのですか?粘るようになるのですか?って色々聞いてくる。
「惑星パンツだと土精人さん達が独占して、親方から弟子へ受け継ぐ技術なんですけどね。私やカンタ君の住んでた世界だと結構簡単に知る事が出来るんですよ。」
失われた技術だってあるだろうよ、古刀の作り方とかさダマスカス鋼の作り方とかさ……
でも令和の技術も捨てたもんじゃないと言うか、日本って意外とファンタジーなんだよ異世界から見ると。
さすが変態日本人と言いたくなるくらい金属の種類ってあるんだよ。
今思えば……違う名前にすれば良いのに、アルミ合金の中のジュラルミンなんか、超やら超々なんて付いてて、調べたら楽しい……俺だけかな?
「細かく話し出すと、それこそカンタ君が鼻くそほじり始めるくらいウンチクを語れるんですど、既に飽きて来ちゃってるんで、この辺で止めときます。」
「細かく教えて欲しいです。」
なんて言ってきたのはモモちゃんだったりする。
凄いなこの年齢で……
身長150cmの8歳……
俺の最後の人生の8歳って何してたっけ?
確かキン消し集めてたな。あれ何処にやったんだろう?
アルミ合金のジュラルミン、超ジュラルミン、超々ジュラルミンの事です。
ニッケルクロームモリブデン鋼とかあれですバールのようなものに使われてるアレです。硬いです
こんな勉強回を読んで貰えて感謝です。