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8話 結論はだせない

「そうだね……全部とは言わないけど大体の事だけしかわからない、ルミの顔を見ても、ごめんね」


その言葉を聞いた瞬間、少女の目から涙がこぼれた

声は出なかった。ただぽたぽたと、磨きかけの部品の上に雫が落ちて、小さく丸い染みを作っていく。

大人になったルミが身につけたはずの取り繕う技術は、アイリスの「ごめんね」の前に何の役にも立たなかった。


袖で乱暴に目元を拭って、それでも止まらないので反対の腕も使って、ぐしゃぐしゃの顔のまま


「ずるい、謝んないでよ。

謝られたら、あたしだけが覚えてるみたいじゃん

あたしね、アイリスの家が壊されるまで毎朝家の前通る時、カーテン開いてないか確認してたの

帰ってきてないかなって、毎日、ずっと。」


しゃくり上げるように息が詰まって、言葉が途切れた

それから、何かを振り切るように首を横へ振って


「もういい、もう関係ないし、あたしにはユータさんがいるし」


フレイヤは黙ったまま、ルミとアイリスの間に流れる空気が壊れていくのを見ていた

手斧を持つ手の指が、きつく革紐を締め上げている


……はぁ

……思ってたより、疲れるかも

記憶がなくなっても、そのエピソードを聞くだけでら君がどれだけ私にとって重要な者だったのかがわかる

……仕方がない言い方だとは思う、けど

……思ったより、疲れるなぁ

……?ん……?おかしいね、いつもは地脈からマナをもらって、大地に話を聞いてもらってるような感覚になれたのに


……いや、地脈からマナが枯渇してるのか!


マナとは世界樹から発生、そこから経由して地脈にたまる、そこから細かく経由し大地から与えられるもの、魔法とはそのマナを使用することで発動できる


よくこの世界でマナが説明される時の文に

「世界樹が最初に道を用意する、そこから派生するように、地脈、大地、マナと生成されて行く。

それらは地脈が木、大地が木の枝、マナが実、と呼ばれ、そして木はもっと大いなる存在、神からエネルギーを与えられてその実を生成すると言われている」

このようなものが存在する、

だから「エネルギーが枯渇することはありえない」と言われている、が


実際は村含むこの森全体のマナが改めてよく見ると異常なくらい少ない!

そのような例外ができるのはできるのは──


いや、十分な証拠がない状態で推理するのは絶対にダメだね、まずは話を聞こうかな


「フレイヤ、ルミ、唐突たけどここら一帯のマナがありえないくらいないんだけど、何か知ってる?」


フレイヤは涙を流すルミから視線を外し、怪訝な顔で周囲を見回した


「マナ? あたしは魔法使いじゃないからそういうのは分からないけど……ありえないって、どのくらい?」


フレイヤは考える

草木は青々と茂り、川は清く流れ、一見すればここは豊かな土地に見える、だがその豊かさの源が何であるかを考えれば、答えは自ずと浮かぶ──


泣き腫らした目のまま、それでもシスターとしての好奇心が顔を出した、鼻をすすり上げながら


「そういえば、最近この辺りの木が妙に育ちがいいってユータさんも言ってた。切っても切っても生えてくるって

木こりのフレ姉が一番分かるんじゃないの?」


フレイヤは顎に手を当てて、少し考え込むようにして


「確かに、ここ数ヶ月で森の回復が早すぎるとは思ってた。間伐しても一月で元通りになるし、切り株から新芽が出るなんて普通じゃない。

でもそれって、ユータの豊穣スキルのおかげだって皆……


そこで言葉が止まり、アイリスの顔を見た

点と点が繋がりかけたような表情


「ちょっと待って、マナがなくて、代わりに土地が肥えてる

それがマナが土地から吸い上げられてるのが理由なら、それ誰が使ってんの」


当然の帰結だね、でもね


「まだ結論は出せないよ、勇者として、証拠がない時人は疑わない」


これは……私が調査しに行くしかないかな


「フレイヤ、1日くらい山に篭るね、マナの大元、地脈を調べてくる」


「地脈って……山の、奥にあるっていう、伝説の?」


目が赤いまま、けれどシスター顔に切り替わって


「1日も? アイリス、食料とか寝具とか、何も持ってないでしょ。

教会の道具の倉庫に非常用の干し肉あるけど……」


ルミは言いかけた言葉の先を飲み込んだ

かつてなら「あたしも一緒に行く」と叫んでアイリスの裾を掴んでいただろう少女は、今は唇を噛んでその衝動を殺している

ユータに惚れた自分、アイリスを忘れていた自分、そして今また昔のように縋ろうとしている自分

その全部がルミの中でぐちゃぐちゃに絡まって、足元に根を張っていた


フレイヤは一歩前に出て、腰の革袋から小ぶりのナイフと、油紙に包まれた堅焼きのパンを取り出し、無造作にアイリスへ押し付けた


「山に入るなら持っときな

奥地の沢水は腹壊すから煮沸してから飲むこと

あと、熊が最近やたら里に降りてきてるから気をつけなよ

……で、何か分かったら教えて。あたしにだけでいいから」


熊って……流石に熊には負けないよ、それにこっちは冒険してたんだぞって話で……。

ナイフか、ありがたいなぁ、でもちょっと刃物なら常に持ってる……

あ、フレイヤの家に冒険の荷物と一緒に置いてるんだった……

まぁめんどくさいし取りに行かなくていいか


村の中を朝風が抜けていく

二人がアイリスを見送ろうとしている光景を、通りがかった村人がちらりと見て、興味なさげに目を逸らした

この村の命運を左右するかもしれない調査が、

この村ではただの気まぐれな山籠もりとして処理されようとしていた


拠点は……作らなくてもいっか、スキルっていう神様から貰ったもので食糧と水さえ摂ってれば野生でもしなないからね

便利だな〜「自動調節」でもスキルって一個しかもらえないんだよね、よくこれで勇者なれたよね、まぁ強いけどね「自動調節」地味だよね

昔の私すごいなぁ


「よし、行こうか」


地脈は伝説上のものではない、実際行き方を知らない人の方が多数なので伝説になるのもわかる


地脈への行き方は国くらい大きい迷路を一回も間違わずに出口までいくくらい難しいけど、

どの地脈も一部を除いて同じ迷路構造をしているから、暗記してれば実は簡単なんだよね


記憶を失ったあとのここに戻るまでの3年間で5回くらい地脈の調査依頼受けて覚えちゃったよ……

今となっては覚えてて良かったけどね


「よし、到着」


その場所は地脈への迷路の入り口から時間感覚が崩壊しており

実際さっきまで2時間かけて出口に辿りついたと思ってたのに、出口を出た今はたった一瞬でここについたように思える


「時差感覚が意味わからないことになるから出来れば入りたくはないんだけど、この景色を見ると入って良かったなって、毎回思うね」


地脈の出口を出るとそこはとても大きな洞窟のようなとこで、

そこには大きな世界樹のほんの小さな根っこ、されど人には大きすぎる根っこがある。


その根の周りにはそれぞれの地域の花が目の届く範囲全てに生えている。

そして根の頭上、洞窟の一番上には小さい光ながらも包み込むような、証明らしきものが存在する

それを人類と魔族は敬意を込めて神工太陽と呼んでいる


「燦々光る神工太陽、大きい根、その周りに咲く花

いつも通り、綺麗な場所だな、ここは──」


……?あれはなんだろう、神工太陽の真下、根の窪みにいるあれは


「望遠の魔法」


これに限るね、やっぱ万能だ、覚えて良かった

……さて、そこにいるのは誰なんだ?


「ぐっ……!」


指が焼けた!?魔法の阻害かな……珍しい、あんな相手と同じ法式作ってぶつけるなんてめんどくさいことするやつなんて居ないのに……


なら、相手はそんなめんどくさい事を好んでやるもの好きか、もしくはそんな事をめんどくさいとも思わない真の強者か……

なんにせよ、見ないことには始まらないね


闘気、解放!


闘気とは通常、色や特徴を持たないものであり、闘気を使ったからといって何か特殊能力が使えるわけでもない

だが、一部の武の真髄、その頂に登った者たちには固有の特性が付与される


アイリスの闘気は7つの宝石の特性が付与されている

それぞれの宝石に固有の力があり、それを選択することで使用することができる


「3の宝石・青玉サファイア!」


7つの宝石が一つ青玉サファイア

その意味は空の宝石、これを使うとアイリスは空を飛ぶことができるようになる


「空を駆ける!」

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