少年、魔法の授業でも無双する③
「さ、じゃあ次の人」
気を取り直して、と言う風にシュバルツが言うと、ライラが前に出た。心なしか機嫌が悪そうた。
「あ、ライラだ。がんばってー」
(何が頑張ってだ。今度はまた違う女とイチャイチャしやがって)
ライラがいらだちをぶつけるようにダミーへ手を向ける。
――――雷よ、魔弾となり災いを払え
「雷撃」
ライラの手から強烈な光が放たれ、ダミーから外れて右の壁に命中した。轟音が鳴り響き、大きな穴が開いている。
「ーちっ」
軽く舌打ちする。ライラはこの魔法を何度も練習しているが、どうしても命中精度が上がらない。今回も本人の納得いく結果ではなかった。しかし周りの生徒は驚きで声も出ないようだ。
(無理もない。私でさえいまだに信じられないのだからな)
雷魔法の使い手と言うのはそれほどまで少ないのだ。また威力は初級魔法でも他の属性の中級魔法に匹敵する。さらに地属性以外のほぼすべての魔物に有効で、発動してしまえば避けることは不可能なほどの速さだ。
(だがやはり制御は難しいようだな)
先ほどライラが明けた穴を見た。ライラのマナの制御が下手というわけではなく、ほかの生徒よりむしろ遥かに上である。にもかかわらず命中した場所は標的より大幅にずれている。
「わあ、ライラも雷魔法使うんだ。僕と同じだね」
「なにっ!?」
今度はライラが驚いた。今まで母と自分以外に雷魔法の使い手に会ったことはなかった。それがライラの個性であり、誇りでもあった。
「お前も、雷魔法を使えるのか」
「うん、じゃあ次は僕の番だね」
ラルカが歩を進めると、慌ててシュバルツが止める。
「ま、待った待った。ラルカ君はいったん魔法訓練はしなくていいよ」
「えー」
明らかに不満そうな声を出す。
「でも、僕も練習したいよー」
「うーん、でもまたダミーを壊されたら困るし・・・」
シュバルツが困ったように言うと、ラルカも腕組をして一時考えたが、思い出したように、
「あ、じゃあ、こうすればいいよね」
ラルカがトコトコとダミーに近づくと、呪文を唱え始めた。
――――我らは神の子、いざ約束の地へと赴かん
「楽園への扉」
突然空間に巨大な穴が現れた。穴の中には明らかに学校とは異なる空間が広がっている。
「な、ななななな・・・・」
転移魔法の楽園への扉は今まで行ったことのある場所へと空間をつなげることができる。童子の宝物庫と同じ空間上級魔法である。
「ここは巨大な崖が広がっているだけで、無人の荒野だよ。この中に魔法を放つから、それでいい?」
シュバルツは何も言わず、頭を何度も上げ下げした。ラルカに会ってから何度も頭がパニックになっているが、慣れそうにもない。
「よーし!」
ラルカは張り切って構える。数多くの魔法を詠唱破棄で放つことが可能なラルカだったが、神気の雷霆を詠唱破棄すると威力や精度がどうしても安定しないため、それを試そうと思っていた。ラルカは右手を前に突き出し、マナを集中させる。体内をめぐるマナがとてつもなく複雑な軌道で右手に、光速に近い速さで集まり、直後右手から神気の雷霆が放たれた。雷の柱は楽園への扉を抜け、その先の崖に命中し、爆発音とともに崖が崩れおちた。
(うーん、精度はともかく威力は半減、いや四割ぐらいか。やっぱり詠唱破棄は難しいな)
一人不満そうなラルカをしり目に、ライラたちはその威力に腰を抜かした。アウグストは気絶し、また失禁してしまうのだった。
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