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新世界でも変わりなし

アレキサンドラさんが指定した場所は王都から遠くない小高い丘の上だった。

そこから王都が一望できる上、拠点の村からも近い所だそうだ。


集団転移を行い丘の上へ移動する。


「やはり三千年も経っていると廃墟でしかないな。」

プロメテの言う通り丘の上から見える王都は巨大な古代遺跡に見えた。

だが私にとって昨日の王都は煌びやかな都市である。

異世界に来たようで現実味が全くわかなかった。


そんな中、ティオスがプロメテに今後の方針を訊ねた。

「陛下、この後どの様になさるおつもりで?」


そう言って臣下のような素振りをしているが口元が笑っている。

プロメテがどの様な答えを出すのか判っているのだろう。

彼はそんな奴だ。

私達五人が臣下のような態度を取るのは他人がいる時だけで、六人だけの時はため口である。


「ちっ、白々しい。

どうせ答えは判っているだろう。

私は冒険者に戻ろうと思う。」

プロメテはそう宣言する。


「冒険者に戻る?どういう意味でしょうか、プロメテ様?」

アレキサンドラさんがプロメテに尋ねる。


「ん?

今じゃ伝わってないのか。

元々俺達は冒険者だぞ。」


「「「「「え、えええええええええ!!!」」」」」

五人の乙女たちの驚きの声が上がった。


――――――――――


「つまり、プロメテ様たちは元冒険者で、功績で領地をもらい魔道王国と言われるまでになったのですか・・・。」

私たちはプロメテ様たちと話をしながら村へ向かいます。

道中、伝説のアタノール魔道王国建国のお話を聞いていました。


「おおむねは、だが魔道王国と言われるまでになったのはヘルメスの功績が大きい。」

そう言ってプロメテ様は一番後ろを歩くヘルメスさんを指さしました。

当のヘルメスさんは何かを考えながら歩いている様です。


「ヘルメスは何と言うか、ある種の天才と言って良いのか。

彼の作る魔道具が俺達の力を何倍にもしたと言って良い。

それは王国でも発揮され・・・むしろ王国で開花したと言って過言ではない。」

変わった方だと思っていましたがプロメテ様が言われる通り天災級の方なのでしょう。


「それで、プロメテ様は再び冒険者になられて王国を再建なさるのでしょうか?」


「それはないな。

権力に阻害されない為に爵位は貰うかもしれないが王国を興すことは無い。

あれはめんどくさい。

色々な柵もあるし各種の調整も必要だ。

それに動機も薄い。

実際、エピメテは自由に魔術を研究する為に王国づくりに参加したし、

デュカリオは精霊の森を保護する為だ、

アトラスに至っては強い物と戦うことが目的だった。」


プロメテ様の話を聞くと五賢者の方はずいぶんと自由な方たちだったようです。

その方たちも私のチームメイトと仲良く会話なさっていますが・・・。


「そんな訳で王国を興す気は無いのだ。」


「でもプロメテ様の名前や実力を聞けば人が集まって来ます。」


「名前か・・・それは考えていなかったな。

よし、改名しよう。

そうだな、プロメテだから、プロメ、ロメ、ロメテ、メテ・・・|メテオ(流星)

よし、俺は今日からメテオだ!」


「メテオ(流星)様・・・。」


プロメテ様たちと改名の話をしている内に村が見えてきました。


「見てください、プロ・・いえメテオ様。

村人が出迎えてくれています。

あの先頭に立つ眼鏡の人が私たちの仲間です。」


一行は村へゆっくりと進んでいった。




そして、三年の歳月が過ぎた。


ここ王都トリスメギストでは盛大なパレードが催されていた。


「お!“夜明けの五星”がやって来たぞ!」

「あれが魔竜モータルを退治したという連中か!!」

「モータルと言えば辺境伯でさえ手を焼いたと言う怪物だろう?」

「ああ、・・・見ろよ。あの先頭に立つメテオの凛々しい事。

モータルを倒したと言うのも納得だぜ。」

「エルキュールだって負けてないぜ、あの大きな剣を見ろよ。」

「パトロスもアキレスも凄腕の魔法使いだと言うぞ。」

「おおテセウス司祭じゃ。ありがたや、ありがたや」

「三年前、“五色の薔薇”と共にやって来た時は碌でも無い奴に引っかかったと思たんだが・・・。」


五人の後には倒されたモータルが氷漬けになって運ばれてくる。

それを見て人々は驚愕と歓喜の声を上げるのだった。



そして、そのパレードから一夜明けた次の日。

メテオは商人通りのはずれにある比較的大きな工房、アルゴ魔術工房へやって来た。


「おいっす。ヒスイさんアルゴはいる?」

剣と盾を手に持ちメテオはカウンターの向かいにいる情勢に尋ねた。

黒く長い髪を三つ編みにして後ろで縛っている。

顔には赤い蔓の楕円状の眼鏡を掛けており、その奥から深緑の瞳が見える。


「メテオさんいらっしゃい。

武具の修理ですね。

すぐに主人を呼んできます。」


数分後、アルゴと名前を変えたヘルメスがやって来た。

「プロ・・・じゃなかったメテオ。帰って来たのか。」

「お主は相変わらずだな。

今回の依頼で武具がかなり痛んだので修理しようかと思ってね。」

「どれどれ、・・・かなり痛んでいるな。

これは作り直した方が早いかもしれないな。

新しいのを作るか?」

「そうか、それならそうしてくれ。

材料は倒した竜の皮がある。」

「モータルのか?

よし、採寸も兼ねてみてみるから奥へ来てくれ。」

そう言ってメテオとアルゴは工房の奥へ移動した。


「しかし、アルゴ。

お前が真っ先に嫁を貰うとは思わなかったぞ。」

「なに、経験上機会を逃すとまずいと言うことが判ったのでね。」

「そんなものか・・・」

その後、メテオとアルゴは採寸しながらたわいもない話をした。



「じゃあ出来上がるのは二週間後ってところだ。」

「判った。じゃあ二週間後来るよ。」

「アレキサンドラさんによろしくな。」

「はははは判った。」

そう言うとメテオは照れ笑いしながら帰っていった。


「さて、あいつの新しい武具を作り上げたら次は何を作るか・・・

今の世界は不便だから何か新しい魔道具が必要かな?

それこそ生活を変える様な・・・」

アルゴとなったヘルメスは凝りもせず新たな魔道具を開発しようとするのであった。


それにまつわる騒動は別の機会に・・・。


おしまい。

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