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第4話 ギャグ補正と痴女のおかわり

 今回は前回に比べると長くないですよ。


 ◆着いたどー!◆


 港に降りると遠くにでっかい土鍋が見えた。少し先には “あの世案内所はあちら” とか “土鍋に向かおう” とか書いた案内板がある。

 どうだったっけ……? アヒルの時は三途の川って……。

 あー、赤ちゃんとか小さい子を回収していたあの台車を興味本位で覗き込んで、そのまま台車の中でちびっこの相手をさせられてたんだった。船に乗った自覚がないわけだよ。

 そしてちびっこと一緒に案内所に運ばれて、子守り(という名の遊び相手)を頼まれて、器に興味が出て、そこから何か色々と職人に弟子入りしては技術を身に付けていく日々に突入したんだ。

 ……アヒルじゃねーな。

 当時散々言われた言葉を過去の自分に贈ろう。

 アヒルじゃねぇっ!


「さあ、真緑様。色々お買い物しましょーね」

「紅月さん、私をペット扱いしてませんか?」


 小型犬抱えてお出かけする人と同じ表情をしてますよ?


「いいですか。真緑様は狙われているのです。しかし敵は重要人物としか情報を仕入れていないようでした。ならばそのままペットのうさぎさんで通せば安全で安心! ペットならばキャリーバッグに入るとか、首輪もしくはハーネスを着けるとか……」


 うさぎに首輪を着けてはいけません。着けるならハーネスの方ね。紅月さんにはうさぎの飼育書を読んでもらわないといけんな。


「このまま案内所へ向かうです。寄り道はしません」


 ふむ、段々魔法うさぎとしてのキャラが固まってきたな。やはりこれで行くか。


「えー……」


 不満そうな紅月さんのほっぺに軽くうさパンチ。パフッとな。


「あうっ……」


 クックックッ、予想通り恍惚とした表情になりおったわ。


「案内所へ向かうです。寄り道は許しません。寄り道をしたら降りて振り切って自力で向かってやるですよ?」


 このまま前足をグリグリ押しつけてやる。ほれ、このモフモフを味わい続けたければ進むがよい。

 正直歩きたくても(精神的に)疲れてしまって歩きたくなくなってきたのだ。こうなったらとことん楽してやる。


「わかりまし……」

「紅月とはあなたねっ! さあ、キリキリ情報を吐いてもら ぶっ」


 十代と思われる女の子の声がしたので私と紅月さんがそちらを向くと、やはり十代半ばと思われる女の子がいた。そして目にした直後に背後に現れたゴツい兄ちゃんのチョップがその頭部にゴスッとズブッとめり込んだ。


 Q.あの世はどんな所?

 A.ギャグ補正がマジで有効に働いている世界です。


 女の子は頭を変形させたまま、前のめりに倒れた。


 ◇◇◇◇◇◇


「紅月さん、場所指定しといて忘れてんじゃねーよ」


 ゴツい兄ちゃんは紅月さんの知り合いらしい。二十代前半くらいか。顔立ちそのものは整っている方だけど、厳つさが前面に出ちゃってて美形カテゴリから外れている。残念。


「あら群青ぐんじょう。ごめんなさい忘れていたわ。……行きましょう」


 紅月さん、ちゃんと紹介してよ。そして色々誤魔化そうとしてないかい?


「まさかそのうさ公が真緑って奴?」


 群青さん、誤魔化されたの気にせずに質問に入った。どうでもいいのか、紅月さんのこういった態度に慣れているのか。……後者かな?


「そうです」


 紅月さんが肯定すると、群青さんがガン見してきた。

 それにしても一発でうさぎと見破るとは。おそらく垂れ耳のうさぎを知っているんだろうな。おお、その瞳にはうさぎLOVEの光が宿っていますね。かわいいモフモフちゃんがお好きと見た。

 ん! 何か飛んで来そうだ。えーとバリアー! (魔術防壁の事だよ)うし、これで張れたはず。


「伝説のアヒル様?」


 あ、当時を知ってる人なのか。そして今、網らしき物がポトリと地面に落ちた。

 ……カラス避けネット? こ、これで私たちを捕らえるつもりだったのか!? その思考、色々と残念です襲撃者さん……。


「そうですよ?」


 二人共気にしないで話進めるね。何かミサイルとかバンバン飛んで来るんだけど。案内所へ向かっている無関係の人とかいるんですけど?


「うさぎになっちゃったの? 何で?」


 周囲の人に被害出ないように細工しようか。ひとまず分解する魔術をこねこね……。


「うさぎに未練があったようです」


 プシュとかポシュとか気の抜ける音が響く。何か数が増えてきた。けどおかげで次の魔術を発動する機会が出来たよ。

 今度の魔術は撃ってきた相手にそっくりお返しするのさ。でもただ返すだけでは芸がないし周囲の無関係の人々に悪い。対象のみダメージを受け、周囲には一切被害が出ない人畜無害仕様にしてやったぞ。

 あっちこっちで爆音と絶叫が上がる。よしよし全てお返し出来てるな。


 そして何も飛んで来なくなった。


 ……昔使った時、えげつないとか無情とか言われたなぁ。何でだろう? 第三者に被害出さないんだから人畜無害でいいよね?

 あれ、違うかも? まぁいいや。細かい事は放置して忘れてしまおう。


「楽だなぁ。後は回収班が犯人確保してくれるだろ」

「楽ですねぇ。狙撃ですから私達が動いてもねぇ?」


 待てこら。そうツッコミを入れようとしたら……。


「よくも仲間を!」

「これ以上は許さない!」


 女の子のおかわり来た。来たと思ったらいきなり変身シーンに入りおった。

 突然の事に対応できん。TVのヒーロー物で散々突っ込みを入れられてきた変身シーンだが、唐突過ぎて何も出来ないのが真相ではなかろうか。実際にやられるとポカーンとするしかないぞ。

 そして変身後の姿がアレだった。


「マジか」


 私と紅月さんの声がハモった。

 上空には船で遭遇した痴女と同じように羽を生やし、同じように破廉恥な格好をした女の子が五人いた。

 今回は少し若い。前のは二十歳に届くかどうかくらいの外見年齢だったけど、今いるのは十五歳前後くらいに見える。けどおっぱいやお尻は立派な山脈を形成してるし、行き過ぎた腰のくびれも健在。

 まぁ、感想は前と同じだけど。 


「腰って、くびれ過ぎてると気持ち悪いんだな」


 群青さんもそう思うか。紅月さん、表情に出てますよ。


「本当にキモいですよね」


 うんキモい。だからさっさと葬る。

 いざ、必殺うさビーム!


「みんな!アレを呼ぶわよっ」←リーダー?

「ええ!」←その他四人


 ちゅどんっ


 彼女たちは一体何を呼ぼうとしていたのだろう。せめて呼び出された何かが出現してくれればそれを見る事が出来たのだろうが、生憎呼び出す前にやっちゃったらしい。

 だいたい仲良く固まってるんじゃないよ。散開しろよ。実は戦闘ど素人だろ。ただの露出狂のコスプレ集団だろ。

 はー、ふー、心の中で突っ込み完了!

 撃墜され、地面で伸びているのを紅月さんが頭部がへこんだままの子と一緒にまとめて縛る。

 うーん、年齢的なものがあるとはいえ、やっぱり色気ないわ。ひたすらに見苦しくて恥ずかしいだけの塊だ。男視点だと感想違うかな?

 チラリとすぐ側の男を見る。今、私は群青さんに抱っこされているんだけど、彼は女の子に見向きもせずモフモフの毛皮を堪能中だった。


「男として、あの光景は嬉しくないのですか?」

「俺の好みは成熟した大人の女だ。三十歳前後あたりからが対象だな。だから小娘共がどんなに際どい服着ても何とも思わねー。あ、ちゃんと服着ろって突っ込みは入れるか」


 なるほど熟女好みなのですね。


「そうですか。ところで群青さんは護衛その二といったところなのですか?」


 とても重要だと思うのだけどね。聞こうとしても邪魔が入ってばかりだった。ようやく聞けたよ。


「その通りよ。しかしやっぱり俺と紅月さんは面が割れてんな。あの女の子、紅月さんを目にするや真っ直ぐに突撃しやがった」


 そうみたいだねー。でも重要人物イコール私とは考えられないみたい。……考えにくいか。うん、うさぎになって良かった。


「さっさと案内所へ行きたいです」


 さっき魔術を使って思い知った。やっぱり器に入っていないと制御が不安定だ。どうにかなったけど、あれ以上複雑な魔術はかなり不安だよ。早く器に入りたい。


「そうです。さぁ群青、真緑様をこちらへ」


 両腕を群青さんに向けて伸ばし、私を寄越せとアピールする紅月さん。……その塊は群青さんが引き摺って行けと?

 しかし断固拒否すると言わんばかりに群青さんは買い物かご(布ではなく編み籠だ!)を出して、私をその中へ入れた!

 おぉ、今、おそらく、私すごく可愛い。

 ほら紅月さんがカメラ取り出した。


「しかも野菜付きだなんて! 真緑様、次は野菜にお顔を近づけちゃって下さい!」


 紅月さんの食い付きが凄い。そして恥ずかしい塊は放置された。

 あれ放っといちゃいけんって。ほら、男共がカメラ構えて塊に近寄って来たよ。え、性器見えていればどんなポーズでもいいの? 萎えたりしないの?

 ……一応お触り出来ないようにバリア張っといてやろう。あ、引っ張れるように地面に伸びている縄は外そうね。

 む、近づいて来る男共の中にお子様発見。これはまずい。


「あの、さすがにこれ以上はまずいので、あの塊どうにかしませんか?」

「大丈夫だよ。あいつ子供の姿してっけど中身は幼児プレイを好むエロオヤジだから」


 何だ。全身整形年齢詐称のクソヤローか。なら配慮はいらんな。

 しかし群青さん、あなたその情報を知っているという事は……。


「……知ってる人でしたか」

「うむ、知ってるだけの人だ。仲良くはねぇ。紅月さん、そろそろ行くぞ」


 サクッと私の懸念を否定しました。んー、あなたの性癖等に関してはノーマル(仮)にしておきますか。

 群青さんは塊を放って、私が入った籠を持ったまま歩き出す。紅月さんはカメラを仕舞い、塊に繋がっている縄を引いて後を付いて来た。男共もぞろぞろ付いて来る。

 これいいの?

 視線で問うと、利用出来るから良いとのこと。何に利用するんだか。



 ◆取調室の様子◆


 若い女たちの悲鳴が響き渡るが、尋問係は涼しい顔で受け流す。


「何撮ってんのよ!」

「いやーっ!」

「やだーっ! ユニコーン様助けてぇーっ」


 今、重要な単語が出たので尋問係はそれを記録する。

 港で紅月が作った痴女の塊にくっついて来たグズヤロー共に、撮影の許可を与えて放置。もちろん船で捕まえた連中もここにいる。

 なお、彼女らの変身は解けていない。あの恥ずかしい格好のままである。


 ユニコーン様、聖なる乙女、清らかなる乙女、厳しい訓練を受けた私たちが負けるなんて、おのれカーバンクルのくせに、等々……。


「ふむ……これ以上目的無しに喚かせても意味がないわね」


 尋問係はこちらから質問する事にした。幸い、真緑が張ったバリアは引き渡しの時に解除してもらったので、もうお触りは自由だ。


「お気に入りを一人だけ選んで良いですよ。いいですか、お一人につき女の子一人です」


 男たちは喜んで指名していく。男の数に対して女の数の方が多いが、それも考慮の内である。


「ひどいっ! 人権を無視してるわ!」

「弁護士を呼びなさいよっ!」


 女たちから抗議の声が上がるが、尋問係は冷たく言い放った。


「ここはあの世よ。基本的人権なんて幻なの。勿論弁護士も存在しないわ。そもそもあの世とは地獄であって、酷い目に遭うのは当たり前でしょう?」


 男たちは尋問係の顔色を伺いながら選んだ女を好きにしていく。性的行為も止められないのだと理解すると、後は遠慮がない。

 子供の姿をしたエロオヤジの気持ち悪い言葉遣いは無視はして、尋問係は残った女たちに問う。


「さっき厳しい訓練と言っていたけど、どんな内容なの?」


 彼女たちから返ってきた内容に、思わず現在犯されている女たち(どこのおバカ系のエロマンガ? な内容)を見る。

 アレと大して変わらんじゃんけ、と心の中でツッコミを入れるが口には出さない。向き直り、次の質問をする。


「最高レベルが10と言ったけど、レベル一つにつき各パラメータはいくつくらい上昇するの?」


 1~10と返ってきた。HPとMPの上昇値も30~50とのことだった。

 実際に戦闘能力を分析してみると、本当にその通りと思われる数値で、なおかつレベル10でMAX表記だった。

 何でも他とは単位が違うのだとか。その違いは1㎜と1㎝のようなものだと説明を受けたそうだ。

 絶対に色々とたくさん騙されている……。

 尋問係はそう思ったものの、今ここで言う事じゃないなと思い直し、口にはしなかった。

 まあ戦闘能力が皆無と云うわけではなく、ただの一般人よりは多少強いだろう。ゲームだったら序盤の雑魚には楽々勝てても、中盤に入ったとたん苦戦の末に全滅しそうだが。

 結論、こいつら弱いが自分たちは強いと思い込んでいる。

 こんな奴らが役に立つと本当に信じているのか? アホなの?

 ツッコミは尽きないが、これ以上考えても進展は無さそうだ。

 この項目はもういい。本命はこいつらのボスだ。さて、どうやって誘導しよう。

 何か出たらいいなーって程度だが、だからと言って手を抜く気は一切ない尋問係だった。 


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